こだま
使用お題ふたつ
森の中で空を見上げる。
青い空は嫌いだった。垣間見える青を自由と望んだあの頃を思い出して好きじゃない。
灰色と黒と赤の世界。
それは過ぎ去ったありふれた過去で。確かに私を構築してる要因。
どうしたら俺のものになる?
それは幼いころに抱いた独占欲。
わかっている。
そこにあったのは信じたい、でも、信じられないという私自身の心の葛藤、矛盾。
そんなものは無意味だったのに。
心を分けてもらっていても足りない。不足だとせがんだ貪欲さ。
青い空の自由を恐れていたのは私自身だったのに。
受け入れることも受け入れられることも恐れてしがみついた。
「私は変わっていきたいの」
青い空を持つ君が笑う。
「あなたが好きよ」
「好きだよ。大事な友人だから」
君とうまく付き合っていけば喜んでもらえるし。それはとても利用価値が高いんだ。
あの頃の私の考えはそんな感じ。
君は笑っていた。
純粋な好意?
信じたい、でも、信じられない。
そう、誰も信じないし、必要じゃなかった。
欲しいものはひとつだけだったから。
君じゃなかった。
それでも君が好きではあった。
「緑は嫉妬の色。赤は罪の色。仮面のむこう側は空っぽ。私はそんなあなたが好きよ」
制服の白が揺れる。
凍り付き怒りの熱に支配される。
自由の空の青は笑う。視線を逸らすことなく私を映す。
「そんなあなただから好きよ」
なぜと問う言葉はほぼ無意識にこぼれたんだろう。
彼女は私の理解の外にいる。
「きれいだから」
手を広げて告げることが嬉しいという満面の笑みで君は言い放つ。あの時も今も。
「いつか、思えなくなるかもしれない」
「もちろん、変わっていくのだもの。そのままの君でいてなんて言わないわ」
いつまでも君は不可解。
だからこそ気になり、惹かれたのだとも思う。
「セス!」
君の声はよく通る。
「セス?」
森の中反響を交えて君の声を味わう。
「ここに」
「ああ! とてもきれいだわ!」
絡みつく青。揺らめく金。
本当に、アンジェリーナ。君は不可解。
とにあさんの本日の単語は「こだま」です。
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とにあへの3つの恋のお題:どうしたら俺のものになる?/そのままの君でいて/信じたい、でも、信じられない
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