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自縄遊戯  作者: とにあ
179/419

告白

使用お題ひとつ

「君が好きです」

 告白を試みたのは中学だったか。相手はクラスの女子だった。

 静かに友人の話を聞いて笑っている少女だった。答えは「ごめんなさい」で。学年が変わるまでぎこちない時間が続いた。

 そこから何度か女の子を好きにはなったと思う。

 だけど、伝えることができたのは中学の時にふられた彼女だけだった。

 あのぎこちない時間、空間が辛すぎた。

 答えはもう出てる。

 告白をして傷つくのは怖いんだ。


「いいかい。後輩」

 やたら近距離で先輩が指を立てている。それは今にも目潰しされそうな恐怖感がそこにある。

「秘密の恋をしよう」

 息を飲む。先輩は何を言ってるんだ?

「職場でもそれ以外でも誰にもバレちゃいけない。そんな秘密の恋をしよう」

 ふふっと先輩は笑っている。

「先輩に対してですか?」

 パチリと先輩は長いまつげを上下させる。

「私?」

 その声は心底不思議そうでカッと熱が頭に上る。

「それは光栄だが、後輩にも好みがあるだろう。だが、恋はすべきだ。それが私である必要はないさ」

 意味が、必要性がわからない。

 先輩は笑っていた。

 人を思えば、良い仕事ができると。

 結局、先輩に恋心を抱いたのかもしれない。

 でもコレは秘密の恋。

 誰に告げることもない。

 先輩の役に立つように。仕事に打ち込む。先輩が気にかけるのは僕だけじゃない。

 きっと、大丈夫。

 そう。

 答えはもう出てる。

「好きな人がいるんです」

 先輩にそっと告げる。

「きっと大丈夫だよ。応えてもらえるさ」

 鮮やかな笑顔で声援をくれる先輩の手をそっと握る。

「後輩?」



「先輩が好きです」


 秘密の恋を終わらせよう。

3つの恋のお題:答えはもう出てる/きっと大丈夫だよ/秘密の恋をしよう

shindanmaker.com/125562


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