治療師

唇をあてる。

あたたかなそこから感じるのは少し乱れる脈動。

唇をあてる。

やわらかであたたかいのにごつりと硬い。

ふさがった傷口に舌をちろりとあててみる。

くすぐったいとばかりに笑い声がふってくる。

微細な揺れがあなたの笑いで生まれる。

唇をあてる。

硬い節をなぞるように。

これが最後のくちづけ。

貴方の腕に抱かれることは思わなくとも、ただ貴方の背にすがりたい。

はしたない娘だと思われますね。

「痛みは、とれましたか？」

貴方は静かに頷き立ち上がる。

どうか、どうか帰ってきてください。

私は頭を下げ見送ることしかできません。