マユたんゴーゴー
使用お題ひとつ
イッセイくんは物静かで優しい男の子。
意地悪なことも言わないし、乱暴なこともしない。
運動だって得意。
イッセイくんはシンリくんとマコトくんの三人でいつも遊んでいる。
クラスが違っても仲のいい三人。
時々、そこに他の子も混じる。
どちらかというとリーダー気質なのはシンリくん。イッセイくんは静かなブレインな感じ。
そう、ヒーローモノで言うならレッドがシンリくんで頭脳派グリーンがイッセイくん、いっぴきオオカミ風味なブルーがマコトくん!
かわいいピンクがマユで、あと一人はどうしようかしら?
中学三年生になってイッセイくんと同じクラス。
ママの弟のタマちゃんが近所に越してきた。
でもアレルギーがあるから遊びには来ないんだって。
おばあちゃんちはお隣なのに不思議。
イッセイくんはシンリくんと一緒に吹奏楽部所属。
二人一緒に練習してる姿が見れたら素敵。
マコトはバスケ部で女の子にカッコいいと声をあげられてた。
運動出来る子の方が目を惹くせい。
でも、イッセイくん狙ってる子は他にもいそう。
クリスマス前に告白したら、『君、だぁれ?』って、顔を覚えてもらえてなかった。
お姉ちゃんが「これから知ってもらえばいいじゃない?」と提案してきたから採用したら、タマちゃんに「受験終わったらにしろ」と注意された。タカノブ兄さんもそれには賛成らしい。
タマちゃんがイッセイくんが好きだというバンドのCDをくれた。イヤホンなしで聞いてるとお姉ちゃんが『うるさい』って言ってくる。意地悪だ。
高校では同じクラス。
マコも同じクラスだけど、なによりもイッセイくんがいる。
高校ではイッセイくんがどんな部活に入っても追いかける心づもりだ。
女子同士の会話で「イッセイくんが好き」と主張してクラスの注目を集めちゃったけど、まずは周囲牽制!
それで家庭科部というマイナー部に入部。部員は三年生二人だけという廃部寸前な部だった。
料理部と手芸部が部員不足で合同になって今に至るらしい。
学祭の出店に不都合がない実力を求められると聞いておののいた。
先輩達は卵料理一品と袋が作れれば問題ないって言うけど、家の手伝いとかあんまりやってないよ。自信ない。
一年生は私とイッセイくん、やっぱりシンリくん、ナゼかマコも一緒だった。ついでにクラスの地味少女カレン。うつむき気味でうっとおしい。
……一応の実力検定。
女子力の低さにマユはカレンの手を取って「ホモってサイテー」と男子陣に向けた。イッセイくんはともかく、なんでか三人とも怒ったけどね。
だって、だって!
マユとカレンが茹で卵作ってる横でささっとオムレツ作るし、四角い袋縫ってる横で巾着袋完成させてるし、当たり前って顔してるのがムカつく!
「慣れだから」とかフォロー入れんなマコ!
イッセイくんとシンリくんがこの部を選んだのは自由度の高さが理由だったらしい。
二人の目的は個人活動であるバンド練習のしやすい環境。軽音部とかは先輩もいて合いそうになかったというワガママ理由。ちょっぴりカワイイ。
「部活は入ってた方が進学時有利かもでしょ」と笑うのはシンリくんだった。黒い!
気がついたらクッキーや煮物が普通に作れるようになってボタン付けも自然にできるようになった。カレンとだってうまくやってる。ちゃんと目を合わせてくれるようになったしね。
「マユ女子力の向上を感じるっ」
「イッセイの方が上だけどな」
そんなことを言うのは部内で一番女子力の高いマコだった。
赤と緑のクリスマスカラーのリボンにレースを縫いつけ中の男に言われたくない。
「イッセイはスカート丈は規定ぐらいが好み。で、ちょっと足首フェチなとこがある。でも、アンクレットとかはエヌジーな。露出はチラ見え萌え派。髪は自然色で指先でもて遊べるくらいが好み」
「マユはイッセイくんを狙うライバルが男なのがツライ!」
「イッセイとシンリはそーいうんじゃねぇよ」
アンタだ。アンタ。
マコが一番、疑わしい。
好きな外見タイプから味覚色彩まで把握しているのは好意があるからだろ!
ホモめっ!
まぁ、恋の橋渡しが趣味なだけらしいけど。
「ただの幼馴染みだっつってんだろうが」
いや、だから、イッセイくんとシンリくんの組み合わせは考えてないから。
レース飾りのついたリボンが髪にあてられる。
ん?
「よし。ライブでチェック系衣装に合わせるリボン、コレでいいだろ」
鼻歌まじりにマユ用のリボンの仕上げしてるらしいマコって、よくわからない。
「マコトさん、シンリさんは?」
イッセイくんだ!
「今日は来てねぇ。カフェでバイトじゃね?」
カフェって言うのはタマちゃんのバイト先の建物の地下にあるライブカフェ。ステージがあってたまに演奏会付きの食事が楽しめる。店長さんの料理が美味しいんだ。
「じゃあ、僕も行きますね」
「おー、……マユは行かねぇの?」
え?
行ってもいいの?
「行く! 待って。イッセイくん!」
こういう応援もちょっとしてくれるんだ。
タカノブ兄さんがいたからおやつをオゴってもらった。
年のはなれた妹はかわいいでしょ。
ふと視線を感じるとそちらを見れば、タカノブ兄さんを見てちょっぴり私をうろんな眼差しで見てるオネーサン。タカノブ兄さんにロリコン疑惑!?
タカノブ兄さんの紹介によると職場の先輩なんだって。
出来る女性カッコいい。
タマちゃんの彼女なのかなって店長さんに聞いたら、タカノブ兄さんの恋のお相手だって。学生時代の幼馴染みでも、おばーちゃんの紹介したお見合い相手でもなく、出来る女を選ぶ兄が良いと思う!
姉さんは「おばさんじゃないの?」とか言うけどさ、二十歳越えたらおじさんおばさんじゃないって思う。つまり、タカノブ兄さんも姉さんもおじさんおばさんじゃない。
それにお父さんとお母さんだって十年以上歳の差があるんだし。
別に誤差範疇だと思うんだよねー。
「兄の恋人ですか?」
って聞いた時の照れっぷりは歳上なのにカワイイって思ったし。
適度に兄をけしかけようと思う!
タマちゃん情報によると両想い。やったね。と思うけど、タマちゃんはお相手いないの?
ナツキおねえさん(タカノブ兄さんの恋人候補)はニヤニヤしてはいた。
普通ならタカノブ兄さんよりタマちゃんの方が歳も近く対象ぽいなと思うんだよね。
ウチに昔から出入りしてるおねえさんが水族館のチケットをくれた。
「彼氏とおいで」って。
コレはイッセイくんを誘うしかない!
どうやって誘うか悩んでいたらナツキおねえさんがキューピッド役を演じないかとふってきた。イッセイくんにだ。
「タマキさんにはいつもよくしていただいてますからね。マユさん、どこか、送ってもらって遊びましょうか?」
「あのね! 水族館のチケットがあるの!」
嬉しい。
イッセイくんに誘ってもらったよ!
「それは楽しそうですね。あとでチケット確認させてくださいね」
「今、持ってる! これ!」
イッセイくんはチケットを確認してる。
かっこいいよぉ。
「良かったな」
ナツキおねえさんが撫でてくれる。
「きっかけをありがとう! ナツキおねえさんは兄さんと?」
「私たちは仕事だ」
クリスマスや祝日だからってみんながお休みなわけじゃないのは知ってる。
そんなお仕事だ。
「そっかぁ」
「一緒にお仕事なんですね」
イッセイくんが小さく笑って呟いた。
でも、お仕事だよ?
「一緒に過ごせるのには変わりませんよ。マユさん」
イッセイくんの柔らかな笑顔。
マユもイッセイくんと過ごせるクリスマスは幸せだよぉ。
「あまり、遅くなりすぎないようにな」
ナツキおねえさんが言う。
「はい。わかってます」
あ、そうだよね。タマちゃんのタメだもんね。デートってわけじゃなかったっけ。
それでもね、にっこり笑って「楽しみだね」って言われるとドキドキするの。
ライブ用の衣装はミニだけど、デート用には膝下丈のアシンメトリー。伸ばした髪はポニーテール。
タマちゃんに送ってもらって、ついでにタマちゃんはお迎えに行く。
そんなマユのデートメインじゃないってわかってても、デートなんだ。
「人、多いですね」
うん。特にカップル。
「……マユさん、はぐれるとなんですから」
差し出される手。
え?
「行きましょうか」
イッセイくんと手を繋いでる。
なんとなくエスカレーターより階段を選ぶ。
「……イッセイくん」
心臓バクバク。死にそうなほど恥ずかしい。今、死んでも後悔しない。いや、後悔するからダメだ!
「……マユさん、あの、ごめんなさい。イヤでしたか?」
え?
「あの、離しますから、泣かないでください」
え?
困った表情のイッセイくんがキラキラしてる。
マユはギュッとイッセイくんの手を握りしめる。離してなんかあげない。
「ごめん。ドキドキし過ぎちゃった」
ぐいぐいとあいてる片手の袖口で顔をこする。
「行こ!」
カップル多くて二人の世界なんて普通。
それでもやっぱり恥ずかしい。
ショーではチケットをくれたオネーサンが手を振ってくれた。
楽しい時間。
「今日の思い出に、どうぞ」
イッセイくんから渡されたのはおみやげコーナーのロゴ入りの小さな紙袋。
小さなガラス玉の中で泳ぐイルカ。そんなキーホルダー。
チャリって音が聞こえて顔を上げると色違いのガラス玉のキーホルダーをイッセイくんが携帯カバーに取り付けているところだった。
それって、え?
オソロイ!?
「クリスマスプレゼントにはちょっとちゃちいけど、普段使いできると思って」
ちゃちくない!
「嬉しい。ありがとう!」
普段使い? お揃いで使う?
わかった! しまいこまない!
「……マユさん、泣かれるの、ちょっと、困る」
「だって、イッセイくんが嬉しいことするからだもん」
手を引かれて人波から少し離れる。
恥ずかしい。
嬉しい。
恥ずかしい。
ああ、でもやっぱり。
「マユ、イッセイくんが大好き」
「僕もマユさんが」
え?
イッセイくん……?
「おー、イッセイ、マユちゃん、もうじき上がりだから送ってやるし、その辺で待ってろよー」
………くっ。
雰囲気を返せぇえええ!
「ありがとうございます。ミコトさん」
にこりとイッセイくんが感謝を伝えている。
「雰囲気ぉ……」
「マユさん、きっと、これでいいんですよ。そう、ですね。また一緒に出かけましょう」
思案するようなイッセイくんの言葉。
「ほんと?」
イッセイくんがゆっくりと頷く。
「次は初詣、でしょうか?」
「行くーー!」
次のデートだぁあああ!
同級生の男性とがんばる女子のカップルで、階段のシーンを入れたハピエン小説を書いて下さい。
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