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64. 10年と7ヶ月目 2人の将来。

 ザコモンスターとしての制約から外れ、身体的な能力はネメとトーイラにも劣らなくなったミノリ。しかし相変わらず身長も体重も皺も増えない極上レベルの卵肌の持ち主で、すっかり否定のしようがない程にロリババア街道まっしぐらである。


 ちなみに、実際の年齢は設定すらされてないため不明で、言うなれば(x+10)歳である。記憶が残っている前世から通算で計算すると(x+10+17)歳の為、気持ち的には27歳以上だと思っているらしい。


 そんなミノリに対して、スレンダーながらもスタイルの良いネメ、そして女性らしいプロポーションが美しいトーイラ。どちらもすっかり見た目は大人の女性で。あと半年もすれば2人とも17歳になる。


(いつか2人とも自分の元を離れていって、誰かと身を固めたりするのかなぁ……、その点を考えるとネメの方が先かな、シャルとすっかりいい雰囲気になってきてるし……)


 親としてその事を少し寂しく感じるようになってきたミノリ。

 ただまぁ、ネメもトーイラも家から一向に出て行こうとする気配はないのだが……。


「2人に愛されてるのはわかるけど……これはこれで大丈夫なのかなぁ」


 娘たちの将来が不安になったミノリは、家事のお手伝いをしていた2人に尋ねた。


「そういえば、2人は誰かと結婚したい、みたいな願望は無いの?」

「お母さんとなら」

「ママとなら」


 即答である。


「いや、私と結婚したい、というのは嬉しいけど、私以外とかでは考えたりはしないの? 男の人とか……」

「あり得ぬ」

「ない」


 これもまた即答である。


「野郎は好かぬ。おかあさん以外なら百歩譲ってシャル」

「ママを襲うから無理かなー」


 どうやら、ミノリが男たちに襲われて殺されそうになったあの日のことがすっかり2人のトラウマになってしまっているようだ。流石にそれが尾を引いているならこれ以上聞くことは出来ない。


「……そっか。まぁあんな事があったんじゃ仕方ないよね。……孫が生まれたらどんな子になるのかな、なんてちょっと思ったりもしたけど……」


 転生以前から子供好きだったミノリ。ネメとトーイラは勿論大好きだが、2人の子供、つまり孫が出来たら同じようにかわいがってあげたいという思いもあったのだ。


 そのつぶやきを聞くと、ネメはハッとした表情をすると即座に立ち上がり……。


「わかった、おかあさんのためにシャルをちょっとシュバババッと改造してくる」


 ミノリの言葉に応じるようにネメは玄関へと駆け出していった。ミノリの言葉は絶対だ、という使命感すら帯びてしまっているようである。


「待ってネメ! 一体シャルに何するつもりなの!?」


 しまった、なんだかこの間も似たような事をやらかしたばかりだと、ネメを必死に止めようとしているミノリ。

 そんなミノリとネメの横をトーイラが通り過ぎていき、振り向きざまに親指を立ててミノリに答えた。


「ママの希望なら叶えてあげるよ! かわいらしい子、さらってくるから!!!」


 残念ミノリさん! 前回はトーイラも引き留め役だったが今回は味方ではなかった。

 ミノリは孤軍奮闘で2人を止めるしかないのであった。


「だからそういう不穏な事は言わないで2人とも!? ごめんなさい私が悪かったからやめて!! あとネメはシャルをもっと大事にしてあげて!!」



 ……今日もこの親子は平常運転だ。

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