54. 8年と6ヶ月目 みんなでお風呂。
R15要素強めです。
苦手な方はご注意ください。
「ねぇママ、今日はみんなでお風呂に入りたいなぁ……、ダメ?」
「久しぶりに一緒に入りたい」
この家に3人で暮らし始めた当初は一緒にお風呂に入ったりしていたのだが、ネメとトーイラが成長してからは浴室の大きさもあって段々と3人別々に入るようになっていたのだ。
「えぇと、別にいいけど……お風呂狭くない?」
「大丈夫だよー」
「一緒に入る事が楽しい」
あの事件以来ミノリに対する保護意識が高まってきているのか、二人のスキンシップの度合いが徐々に増してきており、ネメかトーイラのどちらかが一緒にいることが多くなってきているのをミノリも感じていた。おそらくこれもその一環だろう。
「まぁ……、あれだけの事があったらわからなくもないけど……、ちょっと過剰なような……」
しかし、二人にそこまでせがまれたら断れないなぁ、とミノリは一緒にお風呂に入ることにして脱衣場に向かうのだった。
衣服を脱ぐ時の衣擦れの音だけが聞こえる脱衣場、しかしミノリの耳にはその音以外にも別の音が聞こえていた。
(なんだか心臓の音も聞こえるような?)
ミノリのエルフ耳は通常の人よりも聞こえがよく、ネメとトーイラの方から聞こえてくるドキドキという心臓の音までも拾っていた。
(ふふ、二人とも久しぶりに私と入るから嬉しくて緊張してるのかな?)
なお、顔を向けていないのでミノリは気づいてないが、ネメもトーイラも、チラチラとミノリが脱衣する姿を横目で見ており、そのミノリの姿を見ることによって鼓動が早くなっていることなどミノリは気づくはずもなかった。
脱衣を終えて浴室へ……しかしここでミノリはしょうもないやらかしに気づいてしまう。
「あ……、着替え持ってくるの忘れた……」
二人からのお願いに流されてそのまま脱衣場に着てしまったため、着替えを部屋から持ってくるのを忘れてしまったのだ。
「まぁ、家には他に誰かいるわけじゃないからいいか……。お風呂から出たら直接部屋まで行って着替えよう……」
脱いでしまったし別にいいかと、そのまま浴室へと向かうミノリだった。
一糸もまとわない姿で先に浴室で待っていたネメとトーイラ。久々に二人の全裸姿を見たミノリだったが、出会ったばかりの6歳の頃とは違い、すっかり女性らしい体つきになってきている事に、二人とも本当に成長したなぁ……、と思わず嬉しくなるのであった。
……ちなみに身長に関しては二人ともミノリより高く、胸囲に関してはトーイラが一番大きくてネメとミノリはほぼ同じぐらいの大きさだ。多分ネメにも近いうちに抜かれるだろうと確信しており、少し悲しくなるミノリ。
「それじゃ、私先にお湯漬けにされてくる」
お湯漬けという謎の言葉をネメが口にすると、桶でお湯をすくって体を流し、そのまま浴槽へと入っていった。一方、トーイラは……。
「ママ、背中流してあげるねー」
「ありがとうトーイラ」
そうミノリに言いながら背中を流し始めるトーイラだったが……何故か立ち位置がおかしい。背中を流す場合、普通なら背中に回り込むはずなのだがトーイラは右側の真横に陣取った。
(……なんで、真横から背中を流しているんですか? ……そして何か当ててませんかトーイラさん?)
二つの謎の柔らかい感触がミノリの横から当たっているのだが、ミノリは気づかないふりをした。そして、トーイラが背中を流し終えると、その手が前の方へと……。
「ちょ、トーイラ!?前はいいから!」
「ちぇー」
流石に慌てたミノリがそれを拒否すると、何故か残念がるトーイラであった。
「次は私。頭洗ってあげる」
背中を流し終えたトーイラに代わって、今度はネメがミノリの髪を洗いたいとやってきた。
トーイラにはさせてネメにはさせないとなると、ネメが不満そうにするだろうなぁとわかっているミノリは、先程と同じくネメにもお願いすることに。
「うん、お願いね、ネメ」
すると、どういうわけだろう。後ろに回ればいいはずなのに何故かミノリの前に立って、ミノリの頭を洗い出すネメ。
(えーとネメさん、あの、眼前に立たれるとその、丁度正面にですね……。……その、もう少し女の子として恥じらいをですね……。)
わざとかと疑いたくなるほどにミノリの眼前に立つネメ、そんなネメに対してミノリが出来るのは目をつぶってなんとか見ないようにする事だけであった。
その頑なに目をつぶっているミノリを見て、ネメの口から、「むー……」と不満そうな声が聞こえたが……ミノリは聞こえないふりをした。
その後、全員の洗いっこが終わると、3人全員で浴槽に入ることに。サイズとしてはきつめだったが、なんとか3人で入る事が出来た。
「あはは、二人とも大きくなっちゃったから流石にもう3人で入るのはきついね……」
「でもこれがいい」
「一緒に入るのも楽しいから気にしないよー」
「そっか。……それじゃ、これからも時々は3人で一緒に入ろっか?」
「恐悦至極」
「やったー!」
すごく嬉しそうな二人、これなら、これからも偶になら一緒に入るのも悪くないよね、と思うミノリなのであった。
それから暫くして、段々と体が温まってきたミノリは先にお風呂から上がることにした。そして着替えを脱衣場に持ってくるのを忘れてしまったため、ミノリは体を拭いたら急いで部屋まで行かなくてはならない。
「それじゃ、私は先に上がるから、二人ものぼせないぐらいで上がってね」
「「はーい」」
そうミノリは言うと、先に浴室を出て行き、体を拭き終わると急いで着替えをしに部屋へと向かって行った。暫くすると二人が何か話し始めた……。
「……ママのあの張りのある肌素敵……」
「褐色肌をしたたる雫一滴一滴がおかあさんの魅力を引き立てている……」
「そして小ぶりながらもあの形の整った……」
「体つきの割に大人の女性とわかるあの腰のくびれ……」
これらの二人による妖しげな会話は当然の事ながら、先に上がってしまった上に、着替えを忘れて、脱衣場から部屋へと戻ってしまったミノリの耳には全く入らなかった。




