224. 17年と11ヶ月目 こっそりお出かけ。【挿絵あり】
後書きにて描いていただいたシャルのイラストを紹介しています。
舞台はミノリたちが暮らす家ではなく、ミノリが前世過ごした世界の隠塚家。
秋穂の結婚式から半年近く経ち、すっかり日常に戻ったミノリの前世での母親であるタカネが椅子に腰掛けてテレビを眺めていると……。
「タカネおばーちゃーん!! ノゾ遊びに来たよー!!」
「あらノゾミちゃんこんにちは、また遊びに来てくれたのね、嬉しいわ」
玄関が開く音と同時に現れたのはノゾミ。
ドミノリたちが住む世界とミノリの前世の世界へ自由に行き来できるドロンの術を使う事ができるものの、ミノリにその術はもう使ってはダメと言われていたにもかかわらず、ノゾミは曾祖母タカネの元へ遊びにやってきたのだ。
ちなみにこれが一度や二度ではなく、幾度となくノゾミはタカネの元へ出かけている。悪童である。
しかしそんなノゾミの事情を知ってか知らずか曾祖母タカネはひ孫がやってきて嬉しいとこれまた甘やかすのでノゾミはまた甘えにやってくるため、抜け出せないスパイラルに絶賛突入中なのであった。
「あら、今日もノゾミちゃん一人でやってきたの?」
「うん。おばーちゃんに内緒で来ちゃった!」
「こーら。ちゃんと穂里には遊びに来るって話してから来なさいっていつも言ってるでしょ?」
「えへへー、ごめんなさーいタカネおばーちゃん」
なお、うっかりミノリに話したら二度と行っちゃだめって言われるのは間違いないと思っているノゾミは適当に相槌を打ってごまかす。とても悪童である。
それはともかくとして、ノゾミがタカネに抱っこしてもらいながら甘えていると二階から誰かが降りてくる音がノゾミの耳に入った。てっきりノゾミは曾祖父の核熙かと思ったのだが……。
「あ、ノゾミちゃん来てたんだ。久しぶりー」
「あ!! アキホおばちゃんだ!!」
ミノリの前世での妹である秋穂が姿を現した。昨年の結婚式以来となる秋穂の姿を見たノゾミはタカネから降りるやいなや、秋穂に駆け寄って飛びつこうとしたのだが、すんでの所で秋穂に飛びつくのをやめた。というのも……。
「わっ! アキホおばちゃんお腹おっきい!!」
「えへへ、そうなんだ。出産予定が来月なんだけど今暮らしてる家だと私しかいないからそれまではこっちに戻ってきてるんだよ。あ、ちなみに女の子だよ」
「そうなんだ! わぁ……えへへ、元気に生まれてきてね」
まだおなかにいる秋穂の子供たちとも仲良くできるかなぁと嬉しそうに思いながらノゾミが秋穂のおなかを優しくなでているとさらなるサプライズが秋穂の口から飛び出た。
「そしてね、ノゾミちゃん。実は私の娘はね……なんと双子なの! お姉ちゃん……えっと、ミノリおばあちゃんと一緒なんだよ」
「わぁ! おそろい!! おばーちゃんとおそろい!!!」
義理ではあるがミノリの娘であるトーイラとネメは双子、そして秋穂の娘となるお腹の中にいる子たちも双子。
一度に二人の育児となるため大変さは倍増するのだが、秋穂は姉と同じ双子を娘に持つことがとても嬉しいようだ。
「あ、でもシャルママともアキホおばちゃんはおそろいになるね!」
「へ? シャルさん……って確かノゾミちゃんのもう一人のお母さんだよね? ピンク髪で胸の大きな……」
「うん!」
ミノリならともかくシャルもおそろいになる、その言葉の意味がわからず秋穂とタカネが頭に疑問符を浮かべていると、その答えをすぐノゾミは教えてくれた。
「えっとね、ノゾもね、おねえちゃんになるの!! シャルママのおなかの中にも女の子がいるの!」
「まぁ!!」
「そうなの!?」
実はノゾミがこちらにやってくる数日前、シャルの妊娠が発覚したのだ。
同性でも相手の魔力を体内にため込むことで妊娠が可能な種族であるシャルはその方法で伴侶であるネメの魔力を体内にため込んでノゾミを妊娠し、出産した。
そして今回もまた同様の方法でシャルは新たな命をおなかに宿すことができたのだが、ノゾミの際には中々シャルの体内に魔力が蓄積しなかったのに対して今回はシャルの体がネメの魔力に馴染んできたのか以前よりも早い妊娠となったのである。
「そうなのね、ノゾミちゃんももうすぐお姉ちゃんなのね。生まれたら妹ちゃんの顔を見せに一緒に遊びに来てね」
「うん! 生まれたらホノカちゃん連れてくるね! ……あ、ホノカが妹の名前なの! おばーちゃんがつけてくれたんだよ!」
ノゾミからのサプライズ発言に驚いた後、嬉しそうにタカネがノゾミの頭をなでていると妹の名前もノゾミはタカネたちに話した。
その発言に内心、安堵したのは秋穂。というのも……。
「ノゾミちゃんの妹はホノカちゃんって名前なんだね。……名前かぶりしたらちょっと困った事になるかもしれなかったから聞けて良かったかも。」
同名になるのを避けたかったらしい。
「あ、そっか。ノゾの妹とアキホおばちゃんの子供でオンヅカホノカが二人いたらどっちがどっちがわかんなくなっちゃうもんね」
「あ、違うよノゾミちゃん、かぶるのはホノカの部分だけだよ」
「へ、そうなの?」
「うん、私はもう名字が変わってるからね」
てっきり同姓同名になるから避けたいのかとノゾミは勘違いした思ったが、秋穂は結婚した事で名字が変わっている為、被るのは名前だけになるというわけだが…どちらにしろ近い者の間で名前がかぶる事を避けたいのには変わらないのである。
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「───あら、ノゾミちゃん、そろそろいつも帰る時間になるけど大丈夫?」
「あ、いけない!! ノゾ帰らないと」
その後、徹底的にタカネと秋穂に甘えて、お菓子などを色々食べさせてもらい、おもちゃで遊ぶなどしたノゾミだったが、タカネに帰り時間が近い事を言われるといそいそと帰り支度を始めた。
「はい、タカネおばーちゃん! こっちのおばーちゃん人形は持って帰るから今度はこっちのおばーちゃん人形を置いててね!」
「わかったわノゾミちゃん」
そう言いながらノゾミがタカネに渡したのはミノリの形を模したぬいぐるみ。このぬいぐるみには魔力が込められていてノゾミはその魔力を目印にタカネの元へやってきているため、これが無かったら来ることが非常に困難になってしまうのだ。
「それじゃタカネおばーちゃん、秋穂おばちゃん、またねー!」
「またいつでも遊びに来てねノゾミちゃん」
「今度来たときは私の娘たちが生まれているかも。そしたら私の家にも遊びに来てね」
「うん! ……あ、でもノゾの妹の方が先に生まれてくるかも……ノゾたちは普通の生まれ方だとおなかの中からいつ出るかは気分次第なとこあるから……」
「あ、そうなんだ。でもまぁその時はホノカちゃんと一緒に遊びに来てね」
「はーい! それじゃタカネおばーちゃん、秋穂おばーちゃんバイバーイ! ドロン!!」
そうつぶやいてからドロンする術を使って、こちらとあちらの世界を繋ぐ真っ暗な空間を駆け抜けて無事元の世界の家近くに帰ることのできたノゾミは、あちらの世界に行っていたことがばれないように、ちょっと遊びに出ていましたよという体で家に入った。
「ただいまー!」
「あ、お帰りノゾミ。もうすぐご飯だから手洗いとうがいしてきてね」
「はーい、おばーちゃん」
そして幸いにも今回もあちらの世界に行っていたことを悟られずに済んだノゾミなのであった。
「───あ、ノンちゃんの気配が戻ってきた。それならよし……もしこのままこの世界からノンちゃんの気配が消えてしまったら世界を滅ぼすところだった……」
「ホプちゃん、どうしたんですの?」
「なんでもないよークロママー」
……ただ一人、ノゾミに対して重い愛を持ち続けている隣家に住まうノゾミの婚約者幼女を除いて。
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───その後、お風呂に入るように言われたノゾミがネメと一緒に脱衣場へ向かい、先に脱衣を終えたネメが先に浴室へ行った後で今日の出来事で秋穂に聞き忘れていたことがあったことをふと思い出した。
「あれ、そういえばアキホおばちゃんはもう名字がオンヅカじゃないっていってたけど、今はなんて名字なのか聞くのノゾ忘れちゃった」
それはアキホの名字についてなのだが、でもまぁ今度聞けばいいかとすぐに頭を切り替えるとノゾミはすぐに脱衣を終え、ネメが待っている浴室へと向かったのであった。
……ちなみに、以前はカラスの行水レベルだったノゾミの入浴時間だが、今では1分ぐらいならちゃんと入ってくれるようにはなった。ノゾミだって成長しているのだ。




