213. 17年と4ヶ月目④ ノゾミとリラの晴れ舞台。
「みんな戻ったよー。なんともなかった?」
リラとノゾミを秋穂に任せてからロビーで待つトーイラ達の元へ急いで戻ってきたミノリ。幸いにもネメ達が荒事を起こした様子は無かったため安堵したミノリではあったが、それでも一応トーイラに確認の為何も無かったか尋ねてみた。
「おかえりママー。うん、何にも起きなかったから安心していいよー。リラとノゾミちゃんは別行動?」
「うん、2人には今回の結婚式でお願いしたいことがあるということで秋穂に任せてきたんだよ。何をするかは式が始まってからのお楽しみということで」
「そうなんだねママ。何するんだろう……楽しみだなぁ」
戻ってこない2人を気にかけるトーイラにミノリがそう伝えると、こちらの世界での結婚式について何をするのか具体的には良く知らないトーイラは当然、2人が何をするのかも知らないため、何をするのか想像を膨らませ始めたようだ。
そんなトーイラの次にミノリは本日一番の核弾頭状態であるネメの様子を見てみると……先ほどまであんなに殺気を放っていたのが嘘のように勝ち誇ったように余裕の表情をしている。まぁ、ネメは基本的に表情の変化が乏しいのでわかる人にしかわからない程度の変化ではあるが。
「ネメもただいま。私のお願いを守ってくれてありがとうね。それにしてもさっきと比べてずいぶん機嫌が良さそうだけど……何かあったの?」
ちゃんと場を弁えて殺気を抑え、トラブルも起こさなかった事にミノリはお礼を伝えたが、どうやらネメが殺気を放出せず、勝ち誇ったような表情をしているのにはちゃんとした理由があったようだ。
「お母さんの帰還を歓迎。ちなみにシャルに不埒な視線を投げかける輩の一人が声かけ未遂事案を起こす気配を察知したので、ありったけの殺意を込めてその輩を一睨みしたら怖じ気ついてどこかへ消えていった。
たかが私の一瞥程度で遁走するあたりこの世界の人間は脆く、弱い。歯牙にかける必要すらない取るに足らない矮小な存在」
「……えっと、そういう風に間接的な暴力を振るうのもやめてね? ……多分この世界の誰もネメには勝てないから……」
ミノリさん残念! 見てわかるような問題を起こしていなかっただけで実際は精神的暴行を加えていた!シャルの事となると人が変わったようになるネメだからこそ仕方ないとはいえ軽くネメを窘めるミノリ。
(多分その時のネメ、相当怖かっただろうなぁ……誰だか知らないけどうちの娘がごめん……恐怖のあまり漏らしたりしてなければいいけど……)
ミノリが顔も名前も知らないその精神的被害者へ心の中で詫びていると……周辺にいた結婚式の参加者たちが徐に移動を始めた。
「あれ、お姉様。周りの皆さんがどこかへ移動するみたいですよ?」
「あ、どうやら式が始まる時間みたいだね。それじゃみんなも移動しようか」
シャルに話しかけられてから秋穂から借り受けた時計をミノリが見てみるとまもなく式の開始時間。
というわけでミノリたちもほかの参加者に混じって式場へ向かうのであった。
******
「ママ……リラとノゾミちゃんはこれから大勢の前で何かをするんだよね……ノゾミちゃんはきっと大丈夫だろうけど人見知りのリラが大勢の前に立つのって本当に大丈夫かな……?」
式場に入ってから新婦の友人枠という事で後ろの席に座って新郎新婦がやってくるのをミノリたちが待っていると、ミノリの隣にいたトーイラがこの後何かをするために秋穂の元にいった為この場にいないリラたちを気にしてミノリに尋ねた。良き姉である。
「大丈夫だよ。リラは確かに生まれのせいもあって臆病な所はあるけれど、もう13歳で心も体も立派に成長していて、わからない事があっても周りの様子を見て慎重に行動する子だし、ノゾミもノゾミで知らないことがあったらすべて理解するまで訊き尽くすような子だから2人とも大きな失敗はしないと思うよ。……まぁ万が一があるから私もちょっとは心配だけどね」
「……そっか、ママもやっぱり心配してるんだね。だけどママがそう言うのなら私も2人がちゃんとできることを信じるよ」
ミノリの言葉を聞いてから、暫し逡巡してから納得したように頷くトーイラ。今日までの2人の行動を思い返してミノリの言葉通りだと思ってくれたようだ。
「そして結婚式って新郎新婦の為のなのは当然だけど、ある意味リラとノゾミにとっても晴れ舞台だから……暖かく見守ってあげてね」
「うん、わかったよママ」
リラとノゾミが何をするのか、この目でしっかりと2人の頑張りを見届けようと決めたのかトーイラから先程まで渗み出ていた心配の気配は形を潜め、心から応援しようと決めたらしくミノリに笑いかけた。
そんなトーイラの笑みを見てからふとミノリが周りを見回した時、ミノリはあることに気がついた。
(あれ、そういえばお母さんの姿が見えないや……お父さんは秋穂と一緒に入場してくるだろうからここにいないのはわかるけど……)
結婚式といえばまず新郎が一人で入場し、その次に新婦が父親に連れられて入場するのが定番だ。定番通りに今日の挙式が進むのであればミノリの母親であるタカネは入場する必要がないため既に式場内にいるはずである。
しかし、いくら探してみてもタカネの姿がない。先程秋穂に会った時に聞いた話を踏まえると会場には既に来ているはずなのだが……ミノリは首を傾げる。
(お母さん、何かあったのかな……? 突然お腹壊したりとか……)
一生に一度しかない、折角の秋穂の結婚式だというのにタカネがこの場にいない理由についてミノリが探しながら考えようとしたのだが、牧師が会式を宣言するとどこからともなく厳かな音楽が流れだした。
(あ、結婚式始まっちゃった……)
何故タカネがいないのか気にはなるが始まってしまったものは仕方ないと、ミノリはタカネの姿を探すのをやめて起立すると新郎が入場してくる扉の方を見やった。
『新郎の入場です』
牧師のその言葉ともに開かれた扉から現れたのはミノリには見覚えのない男性。受付にいた女性たちと同様に新郎もまた穂里が死んだ後に出会った人なのであろう。
(あれが秋穂の旦那さんかぁ……優しそうな人だなぁ……ってあれ!? ノゾミも一緒に新郎と入場だったの!?)
式場の中へと歩みを始めた新郎の左隣に誰かがいるのを見えたミノリが新郎の顔からそちらの方へ視線を向けてみると、そこには緊張した面持ちで新郎と同じペースで歩くノゾミの姿があり、てっきり秋穂と入場してくるものだとばかり思っていたミノリが思わず驚いた表情でノゾミを見つめた。
(な、なんでノゾミがもう入場してきているの!?……えーっと……あ、そっか! 元々出る子の代役だって言っていたから秋穂と一緒じゃないのか、なるほど……だけど大丈夫かなノゾミ……)
いくらノゾミでも初対面の男性と歩く事に対して不安を抱いたりするかもしれないと心配しだしてしまうミノリであったが、そんなミノリの心配とは無縁であるかのようにノゾミは堂々と新郎と歩幅を合わせて歩いている。
(うん、大丈夫そう……)
しっかりと前を見て歩くノゾミの姿にミノリは心配しなくても良さそうだとホッと安堵のため息をつきながらノゾミの晴れ舞台を眺めていると……。
「お母さん。ノゾミが早速お出まし。堂々と歩いて役目をしっかりとこなすあの姿は親として誇れる」
「ノゾミちゃん立派です! 枚数に限りがあるから撮り過ぎちゃだめなんですけどつい撮っちゃう……!」
「シャルってばしっかり写真器を持ってきていたの!?」
「はい! 何があるかわかりませんから! だからノゾミちゃんにこんな素敵な役どころかあったから持ってきて正解でしたよ!」
意外と抜け目のないシャルである。
そしてミノリが周りの声に耳を傾けてみると立派に歩くノゾミに『かわいい』『がんばってる』という賞賛の声が聞こえてきたことからノゾミの両親であるネメとシャルの喜びが増幅され声にこそ出してはないが大いにはしゃいでいる様子が見えた。
「ねぇママ、そういえばノゾミちゃんは何で新郎と歩いてるの?」
一方、同じように嬉しそうにノゾミの歩く姿を見ていたトーイラはこの役割がそもそも何なのかを知りたいらしく、ミノリに尋ねた。
「えっとね、ノゾミの手を見てごらん。小さな箱を持っているでしょ?
あの中には指輪が入っていて、新郎はあの指輪を花嫁さんにつけるんだけど、新郎に指輪を取ってもらうためにあの箱を持つのがノゾミの役目でリングガールっていうんだよ」
「そうなんだー。だから新郎と歩いているんだね」
「うん。……まぁ、私も新郎と一緒に入場する事になるって思ってなかったけどね」
ミノリの説明を聞いて頷くトーイラ。そしてその説明をネメも聞いていたようで……。
「なるほど、お母さんの話を聞くに確かにそれは大役。まぁ我が愛娘であり神童と言っても過言でないノゾミなら心配をする必要など皆無だから安心して見られる」
親バカ目線でそう語るネメではあったが、確かにノゾミは2歳という年のわりにしっかりと役をこなし、リングガールあるあるの緊張のあまり新郎を置いてけぼりにして先に歩いたりするようなこともなく常に適切なペースを常に取りながら聖壇の前へ歩みを進めていく。。
その途中、ミノリたちの姿を見つけたようで嬉しそうにミノリたちに向けて微笑んでいたが、今の自分の役目をしっかりとわきまえているようで、変に騒いだりすることもなく、微笑むだけに留めてそのまままっすぐ前へ歩いて行った。
そして新郎が聖壇前まで来ると、今度は秋穂の入場となる。新郎が入場したと同時に再び閉められた扉の向こうではまさに今リラと秋穂が緊張しながらスタンバイしているはずだ。
(リラ、ノゾミ以上に難しい役どころだけどがんばって……!)
『続きまして、新婦の入場です』
ミノリが扉の向こうにいるリラに向けて胸中で応援をしていると、牧師による新婦入場の案内と共に再びゆっくりと扉が開かれ、扉の向こうに立つ秋穂とリラ、そして秋穂と手を繋ぐ男性の姿がミノリの視界に入ってきた。
この男性こそ穂里の前世での父親であり、秋穂の父親でもある核熙なのであるが……核熙はミノリの生前の記憶では使った事のない車椅子に座り、さらによく見てみると核熙の乗る車椅子の後ろに立っていたのはミノリの母親であるタカネだった。
(あ、お父さん車椅子に乗ってる……私が死んじゃった後で何かあったのかな。それにお父さんの後ろにいるのはお母さんだ。
そっか、ここにいなかったのはお父さんの車椅子を押すためだったんだね……。それに……2人とも、やっぱりだけど年取っちゃったな……)
式場内にタカネの姿が見えなかった理由をここでようやくミノリは知ることができたのだが、それと同時に記憶にあった両親の姿よりも年をとった姿を目にし、17年という時の流れにほんの少しだけ置いていかれたような寂しい気持ちがほんの少しだけミノリの胸の中に湧きあがってきてしまった。
その感情に揺さぶられてミノリがつい感傷に浸りそうになっていると周囲がほんの少しだけ戸惑ったように何かをささやいている声がミノリの耳に聞こえてくる。
「あれ、あの子ちょっと大きい……? あれぐらいの子がやるなんて珍しいわね……」
「羽……? 何かの演出なのかな?」
「でもすっごいきれいな子……片方の目を怪我してるのかな、眼帯してるけど……」
その内容はリラについてだったが、吸血鬼である事がバレたというわけではなく……このタイミングで出てきたリラの役割についての疑問の声だった。
ちなみにだが今のリラの姿は角を花のアクセサリーで隠してこうもり羽を天使のような白い羽カバーで覆い、白いワンピースを身に纏い、そして腕には花びらがたくさん入った籠を抱えている。その姿から他の列席者たちが戸惑った理由もまたミノリはなんとなく察する。
「ママ……なんでリラを見た途端、会場が戸惑ったような雰囲気になっているの……?」
何故式場内がそのような戸惑いの空気に包まれてしまったのかわからないトーイラがミノリに尋ねてきた。トーイラは当然こちらの世界の結婚式についてそんなに知識があるため理由を知らないのであろう。だからミノリはトーイラの疑問に小声で答えた。
「えっと……リラの役目ってフラワーガールって言って大体小さな子がやるものなんだ。それこそさっきノゾミがやっていたリングガールみたいに。でもリラは確かに年のわりには小さいけどフラワーガールをやるような子よりも大きいから、それでそんな雰囲気になったんだと思う」
リラの役目、それはフラワーガール。しかしフラワーガールというのは幼児から大きくてもせいぜい小学校低学年ぐらいまでの少女が行うもので、今のリラは確かに13歳に見えないほどに小柄ではあったがそれでも中学年から高学年程度の大きさに見える。会場内がざわつくのも仕方ない。
「それって、リラは大丈夫なの……?」
「大丈夫、リラならちゃんとやってくれるよ」
心配したようにミノリに再び問いかけるトーイラだったが、ミノリはリラならできると信じた。
そして、一方のリラはというと……それを裏付けるようにリラは目線を下げることなくまっすぐ前を見つめていた。
(たくさんの人がこっちを見てる……戸惑ってるのもなんとなくわかる……あたし、本当は怖い、だけど……がんばるよ。アキホさんのために……!)
自分に対しての困惑の声が聞こえてくる場に一歩踏み出すのは勇気がいることで、普段のリラならそういう視線を怖がりうつむいてしまったり、最初の一歩を踏み出せずにその場に留まってしまったりするのだが、今日のリラは自分の役目をしっかり果たそうと考えて、堂々とした佇まいを見せている。
式場内がまだ少しざわつく中、リラは意を決したようでカーテシーをしながら一礼すると自身の羽を動かして己の体を宙へ浮かび上がらせはじめた。
その途端、会場から驚きの声が上がる。
「え、飛んだ!?」
「どうやって浮かんでるの!?」
「すごい、天使みたい……」
そしてリラは空中に浮かんだ状態で秋穂たちが通るバージンロードへ花を蒔きはじめていく。式場内から『天使』という言葉がチラホラ聞こえてきたが、確かにその姿は今日の結婚式を祝福する天使そのもので会場中が称賛の声を上げるのも当然であった。
(……まぁあの子、一応光属性だけど種族的には神聖なものとは正反対の位置にいる吸血鬼なんだけどね)
そのことだけがちょっとおかしくてミノリがクスっと軽く笑ってしまっていると、周りの列席者と同じようにリラの大舞台を感激したように見ていたネメがミノリに尋ねてきた。
「お母さん、リラすごい……あれがリラの役目?」
「うん、そうだよ、リラの役目はフラワーガールといって、花嫁が通るバージンロードを清めるという意味があるんだよ。だけど今のリラはフラワーガールというより天使……フラワーエンジェルかな?」
「なるほど、天使……すごいしっくりきますね、お姉様。本当に素敵ですものリラちゃん」
そしてこの演出には列席している全ての人が驚いたようで上空からバージンロードに花を巻くリラの姿に歓喜の声を続々と上げている。
「すごいマジックね! 羽もちゃんと動いて本当に天使みたい……!」
「素敵……!! なにこの演出すごい……こんなの初めて見た」
やがて聖壇の近くまで花を巻き終えたリラが地上に降り立ち、カーテシーをしながら一礼をすると再び大きな拍手があがった。会場中の温かい拍手を一斉に浴びたリラはその意味を理解したのかやりきった顔を見せてから会場中にいる参加者たちに向けて笑顔で応える。
ちなみに一礼をした後、透明なワイヤーがあるかのように背中あたりの虚空から何かを外す動きをしていた。きっと秋穂のアドバイスなのであろう。
(リラ、すごくよかったよ)
そしていよいよ秋穂の入場の番。タカネが後ろから押す車椅子に乗った核熙の手を取りながらバージンロードを歩いてくる秋穂がミノリたちの姿を見つけるとミノリに向けて満面の笑顔を見せてきた。
それは先程のノゾミとリラの役目が成功したからというだけでなく……ミノリが結婚式に来てくれたことを改めて喜んでいるようにもミノリには見えて、そのまままっすぐ新郎が待つ牧師の前に向かっていく秋穂の背中を見ていた途端、ミノリは何故か無意識の内に涙がその眼に溢れてきてしまった。
(あれ、なんでか涙が……あ、そっか、本当は秋穂の花嫁姿、見られるはずなかったんだよね、だって私、こっちだともう死んじゃっているから……)
本来なら叶うはずのなかった秋穂の結婚式への出席。それを迎える事が出来たという喜びに次々に溢れてくる涙を拭うミノリは持ってきていたハンカチで目頭を押さえてしまったのだが……そのせいでミノリは気づかなかった。
秋穂たちがミノリの横を通り過ぎていく時、秋穂と一緒に前へ進んでいた核熙とタカネが一瞬、何かを見定めるかのようにミノリに視線を向けていたことを。
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その後、讃美歌斉唱では讃美歌を知らないミノリ以外のオンヅカ家の面々が口パクでやり過ごすという他の結婚式参加者でもよくあるミスはしてしまったが、牧師による聖書の朗読や牧師の新郎へ問いかけにも問題なく新郎が誓いの言葉を口にするとノゾミの最後の役割である新郎へ指輪の受け渡しの時がやってきた。
(さぁ、最後にノゾミの大事な役割だよ。指輪を落とさないように気を付けてね、ノゾミ)
最後の最後で失敗という可能性も僅かにあったがノゾミは指輪を難なく新郎に取らせることができ、愛の証である指輪はしっかりと秋穂の指に収まった。
その後も式は順調に進み、誓いのキスなどや結婚の宣言なども無事に終えると秋穂と新郎が会場中の拍手と共に式場をあとにする姿を見送って無事に式が終わってから暫くすると、大役を無事勤めあげて秋穂たちと共に退場したリラとノゾミがミノリたちの元へ戻ってきた。
「ネメママ、シャルママ、ただいま! ノゾがんばったよ!」
「よくやったノゾミ、今日のノゾミは最高の輝きを放つ私たちの誇り」
「ホントですねネメお嬢様。流石私たち自慢の娘ですねノゾミちゃんは」
「えへへー!!」
ノゾミは真っ先に両親であるネメとシャルに報告。ちゃんとできたことを嬉しそうに話すノゾミに対して当然であるがネメもシャルもべた褒めだ。
「かーさま、あたし、うまくできてたかな……?」
「うん、リラも立派に大役を務めることができていたよ! すっごく綺麗で私も感激しちゃった! 本当にお疲れさま、リラ! トーイラも今日のリラの晴れ舞台、素敵だと思ったでしょ?」
「え、あ、う、うん……すごく……すごく綺麗だったよ、リラ……」
ミノリの隣にいたトーイラは何故かボーッとしていたようだったが、ミノリに言葉を投げられるとちょっと慌てたような仕種を見せてからミノリの言葉に頷いたが、その頬は何故か紅潮していた。
まるであまりにも美しいと思うモノを目撃してしまったかのように。




