22. 181日目 秋の味覚探し。
シャルから宅配を受け取ったミノリたちが、家に戻ろうとしていた時の事だった。
「すっかり秋になったなぁ……。雲もあんなに高く……」
ミノリは森の木々の隙間から見える空を眺めながらつぶやいた。
「それに秋の味覚も色々と……。食欲の秋だものねぇ」
数多くある秋の中で食欲の秋が真っ先に出てくるあたりミノリらしいと言えばミノリらしい。
「おね……おかあさん、秋の味覚って?」
ミノリの言葉を聞いて、ネメが尋ねた。
「季節によって、森の中に食べられる木の実が生ってたり、キノコが生えてたりするんだよ。秋はそれが特に多い季節なんだ。なので秋の味覚と言ったりするの」
それを聞いた2人は、興味津々のようだ。
「私たちも秋の味覚探してみたーい」
「秋、ふるえる秋」
……ネメが何を言ってるのかよくわからないけれど、どうやらトーイラと同じく秋の味覚を探してみたいらしい。
そんなわけで、シャルから受け取った宅配を家に置くと、すぐさま3人は秋の味覚を探しに森の中を探索し始めるのであった。
そして歩き始めておよそ10分……。
「あ、おね……おかあさん。木の実見つけた」
ネメが指さした方向をミノリが見ると、そこには、いがぐりに似た木の実が生っていた。少しばかり高い位置に生っていたので、ミノリは矢を使って木の実を落とすことに。
「二人とも、危ないから少し離れててね」
その言葉を聞いた二人がミノリのそばから離れるのを確認してから、ミノリは木の実に向かって矢を放つと、矢が強すぎたのか、枝ごと落としてしまった。
「ま、まぁ……よし」
落とすには落とせたので、結果オーライとすることにしたミノリだった。
落とした木の実から、いがの部分だけを取り去ると、中から出てきたのは饅頭に似た白い何か。当然、転生前には見たことのない木の実なので、これが一体何の実か、そもそも食べられるものなのかさっぱりミノリにはわからないのだった。
「ただ、採っても食べられるのか私にはサッパリ分からないのが悩みだなぁ……」
ミノリの小声を聞いたトーイラが反応した。
「そこは、採り終わった後で最後にまとめて鑑定魔法を使って、毒があるかとか、食べられるかとかを調べることにすればいいと思うよママ」
そうだった。トーイラは鑑定魔法が使えるのだった。なので、まずは採れるだけ採って後からまとめてトーイラの鑑定魔法で調べることにした3人は、黙々と木の実とキノコ集めを開始したのだった。
「それじゃ、みんなで分かれて探しに行こっか。でも探すのは日が暮れるまでにして、日が暮れたら家まで戻ってきてね」
「「はーい」」
そのミノリの言葉を皮切りに、ネメとトーイラもそれぞれ好きな方向へ秋の味覚を探しに駆けていった。
*****
「よし、2人に負けないぐらいたくさん採ろうっと」
2人と別れてからミノリ1人で探し始めてからおよそ5分……。
「あ、キノコがある。……うん、鑑定魔法あるから気にせず採っちゃおう」
転生前であれば、毒があるリスクを考慮してよくわからないキノコは採らない方針であるミノリだったが、今はありとあらゆる木の実もキノコも未知の存在な上、トーイラの鑑定魔法があるからと、毒があろうと全て採る方向にしたミノリ。
中には触っただけでかぶれるほどの危険な毒キノコが混ざる可能性もあるはずなのだが、まるで今の自分は無敵だと言わんばかりに、籠へ採りたての木の実やキノコを次々に入れていくのであった。
その後、そのまま秋の味覚探しをしていたミノリは、没頭しすぎたあまりに日が暮れ始めているのも気づかず、日が完全に落ちた頃になってようやく3人で約束した時間を過ぎている事に気づき、慌てて家まで駆け出すのであった。
「わぁ、しまった!急いで戻らないと!」
ミノリが家の玄関まで辿り着くと、ネメもトーイラも夢中になって探していたのだろうか、3人とも玄関で丁度鉢合わせ。
そんな状況に、顔を見合わせるなり思わず吹き出してしまった3人なのだった……段々と性格も似始めてきた親子である。
「さて、今日はいっぱい秋の味覚が手に入ったから、腕によりを掛けてご飯作るからね」
「「わーい!」」
そして夕飯時、食卓にたくさん並べられた秋の味覚をふんだんに使った料理に、思わずほっぺが落ちそうになるほど堪能した3人なのであった。
ちなみに、ミノリが採ってきたキノコだが……トーイラの鑑定魔法の結果全て毒キノコだと判明した。
「ママが採ってきたキノコ……、全部毒……。ある意味すごい……」
「毒キノコ狩りの達人……」
二人に逆の意味で感心され『うぬぬ……』と少し情けない表情になるミノリだった。
活動報告にシャルのキャラデザをあげています。




