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人型モンスター転生少女『ミノリさん』の義娘子育て記録【本編完結済】  作者: OPK
番外編2 もう一人のミノリの家族計画。
200/251

番外編2-6. リラ救出作戦決行。【黒ネメ視点】

本日2回投稿です。前回未読の方は先に前回分からお読みください。

 リラを助けるついでに、リラをここまで連れて来た動物顔と魔女型、2体のモンスターをどうやって始末するかを様子見して決めることにした私とミノリ。


そして、先程までのそいつらの行動から私はどう処分するかも決めた事をミノリにも伝える。


(あ、そうなのね。ちなみにどうやって殺すの?)


 誰かを殺す事について全く厭わないミノリが、淡々と尋ね返してきたので私もそれに応じるように言葉を続けた。


(動物顔の方はリラを殴ったクズ。あいつは絶対に苦しませて苦しませて苦しませてから殺す、魔女の方は私ですら同情的な気持ちになったから苦しませないようにひと思いに殺す)

(……わかったわ。それで私はどうすれば良いの?)


 私の言葉を聞いたミノリはほんの少しの間をおいてから頷き、その作戦の為に何をすればいいのか私に再び尋ねる。


(ミノリの役目は矢をあいつらに当てないぐらいの位置に射ってリラから気を反らして。あいつらの気が反れたら私は急いでリラの救出に向かうわ。魔女の方は多分何もできないはずだから動物顔に気をつければ良さそうだからそこまで難しくないと思う。……ミノリなら問題ないだろうけど矢をリラに当てないように気を付けてね)

(了解、私の弓さばき、見てなさいよ。リラに当てたりなんていうヘマ、絶対にするはずないから)


 ミノリは自信たっぷりに私にそう小声で告げると早速とばかりに弓を構え、いつでも矢を放てる体制を取った。あぁ……ここ1年ぐらい、結構な頻度でミノリが弓を構える姿勢を見ているけど、やっぱりいつ見ても素敵……っていけないいけない! 今は見惚みとれている時間は無いんだったわ!


 私はなんとか落ち着きを取り戻してからミノリへ言葉を続ける。


(ミノリ、いつでもいいわ。ミノリのタイミングで射って)

(オッケー…………今だ!)


 集中するように呼吸を整えてから真剣に位置を定め、矢を放つミノリ。


「な、なんだ!?………ㇷぬんぐっ!?」


 ミノリの放った矢は見事に動物顔モンスターにあたるかあたらないかの位置に刺さった。突然降ってきた矢に動物顔は思わず飛び退……くどころかさらに好都合な事に変な声をあげながらそのまま後ろへひっくり返った。


 その絶好のタイミングを逃すわけにはいかないと、私は勢いよく飛び出してリラの元へ駆け出してリラを抱きかかえ、すぐにミノリの元へと戻ろうとしたその時……。


「あ……」


 私は魔女と目が合ってしまった。


「……いいからあなたも来て!」

「え? え!?」


 ……なんでこの時私がそうしたのか自分でもわからないけど……私は始末対象であるはずの魔女の手を空いている手でつかむとその場から急いで走り出した。どうせすぐに殺すはずなのに……。


 そんな突然の出来事に驚いたのはにっくき動物顔モンスター。体を起こすとリラはおろか魔女までもが近くにいないという事態に顔を真っ赤にしながら激高している。


「?! な、なんだお前! 突然どこからやってきた! ガキを返せ! おい魔女!! お前も何でそっち側にいるんだ! さては裏切る気だな!?」


 ……ああもう。あの動物顔の何から何まで不快だ。とっととこの世界から消し去りたい。だけどそれはダメ、ひと思いに死なせて欲しいと思ってしまうぐらいの苦しみをお前に与えてやる。ひとまずあいつが下手な真似しないように動かないようにしなくちゃ。急がないとあいつ、隷属魔法を発動させかねないし。


「そっちがその手に出るなら隷属魔法を発動させて……」


 ほらやっぱり。ふところから契約書を取り出そうとしてる……させてたまるか。


「動くんじゃない」

「あがっぎぎぎ!? か、体が……!」


 私は詠唱なしで麻痺魔法を唱えると、魔法特化型の魔女の事を馬鹿にしているのをかんがみるに魔法耐性が逆に無いのではという私の予想が当たり、あっさりと動物顔の動きを封じる事に成功した。


 ……こうも無様に動けなくなっては高貴だか重要な地位だかなんだか知らないけど、私にとってはただの狙いやすいまと以外の何物でもないわね。


 さあてと、思う存分甚振(いたぶ)ってから殺さなくっちゃ。……まずはその前にミノリとリラ、ついでに魔女も一緒に急いでこの場から離れてもらわないと……。


「ミノリ。大丈夫だとは思うけど万が一ミノリたちに魔法が向かってしまうと危ないから急いでリラとその魔女を連れて離れて」

「え!? ちょ、ネメ!? わ、わかったわ!!? ほら、あなたも急いでこっち来て!」

「へ!? え、ええ……」


 ……ミノリたちがその場から離れるのを確認してから私は改めて動物顔の方へむき直した。


 ようやくこいつを殺せる、そう思った嬉しさなのか私は無意識のうちに口角をつり上げていて、この場に似つかわしくない不気味なわらい顔になっていたみたいで……そんな私の顔を見た途端、動物顔が『ひっ』と小さく叫んだような気がした。


「な、な、なんなんだお前……あ! というかお前、前に闇の巫女になる為に連れてこられたあとで逃げ出した人間じゃねぇか!! 俺たちを裏切る意味がわかっているのか!?」


おっと、一方的に私が知っているだけだと思っていたようだけれど、どうやら今世でも私の顔はこいつに知られていたみたい……これはもう完全に始末するしかないわ。


「私はお前たちの味方になったことなんて一度たりともないし、そんな風に思われるのがすごく不快だわ。……業火で焼かれてしまえ」

「!! おい! ちょっと待て!! 一体俺に何をする気d……ぁぁぁあがぎがががいぎぎぎがあああああああ!!!!!!!」


 私は自分が使える限り最大級の火属性の魔法をあいつに向けて放つと動物顔モンスターはその業火によってあぶられ始めた。ついでにこの魔法にとって契約書も燃え尽きるはずなのでそうしたら魔女にかけられた隷属契約の魔法も無効になるはず。


「ぎゃあああ!!!あついあついあ゛ぁぁあああ゛つ゛いいいい゛ぃ゛い゛ぃ!!!!!! ぃぎゃああぁぁぎっぎぐぐがあああげげあごああっっ!!!」


 悲鳴を上げる動物顔。あぁ、苦しむ顔がとても愉快。体が燃え尽きてその命が尽きる瞬間までひたすら苦しめばいい。お前なんか。


 というわけでこいつについては後はもう放置でいいわね。


「ひぃぎぎぎぎぎぎぃぃいいいい! あげがあああぁっぁぁあああっ!!」


……いや、流石にずっと悲鳴上げっぱなしにされるのもちょっとうるさい。


「うるさいわね、だまりなさい」

「ぐげああぁぎぎぎg…………!!!! …………!!!!!」


……うん、本当は断末魔を最期まで聞き続けるのもいいかもとちょっと思ったりしていたんだけど……流石にうるさすぎたわ。


 だから私は防音魔法を唱えて音を遮断し、動物顔の命が勝手に燃え尽きるまで放置する事にした上で、待避していたミノリたちの元まで歩み寄った駆け寄った。


「ミノリ、そっちに被害はいかなかった?」

「ええ、こっちは大丈夫。……すごいわねネメの魔法。惚れ惚れしちゃう」


 やだもうミノリってば、嬉しい事言ってくれるじゃないの、流石私の恋人……っていけない、隙あらばついつい惚気のろけてしまいそうになるけど、まだやらなきゃいけない事があるんだったわ。


「さて、そこの魔女さん」

「は、はい!!!?」


 とりあえず動物顔モンスターについては物理的に絶賛処分中なので、今度はこっちの魔女。

 そんな魔女は一緒にいた動物顔が今も悲鳴を上げながら燃えているさまをまじまじと見せつけられているせいで、私たちにはどう足掻あがいても敵わないと判断したのか、私たちに対してかなり怯えた様子を見せているのが一目でわかる。そしてどうやら腰も抜かしているみたい。


 この魔女はリラに対してかなり同情的な態度で殴られて失神したリラに駆け寄ってくるぐらいに、モンスターにしては良心もちゃんと兼ね備えた存在で、境遇も考えればかわいそうな立場だけれど……口封じ以外の選択肢が私たちには無い。


 誰かほかの魔物やモンスターにリラを連れ去った事を告げられたら面倒な事になるし。


 ならば苦しまないように殺してあげるのが私なりの情け。私は魔女に近寄ると彼女の眉間に指を当てながら告げた。


「なりゆきであなたもついでに助けちゃったんけど……悪いわね、私たちはあなたの事を見逃してあげる気なんてさらさら無いのよ。ただ、あいつみたいに地獄の苦しみを味わわせながら始末するんじゃなく、苦しまないようにひと思いに殺してあげたかっただけ」


 一瞬だけ『自分は助かったのかも』という表情を見せた魔女だったけど、私の言葉を聞いた途端、一瞬だけショックを受けたような表情を見せた後、全てを諦めたように微笑ほほえんでから言葉を発し始めた。


「……そう……ということは私もあいつと同じようにここで死ぬのね。やっぱりそう都合がいいことなんて起こるはずないわよね。わかったわ……」


 もしかしたら魔女が命乞いをしたりするのかもと思ったけれど、抵抗する気すら起きないのか意外にも魔女の方は私たちの言葉に素直に応じたかと思うと、そのまま手をだらりと脱力させた。


「……多分、あの子を連れてくるって約束をした時点で私は終わっていたのかもね。いいわ、好きに殺しても……。所詮、私みたいなモンスターはあなたたちのような人間に倒される運命に……ってあれ、ちょっと待って。ふと思ったのだけど……あなたたち、人間とモンスターのコンビ……なの?」


「そう。私はれっきとしたモンスターよ。そして私たちは恋人同士。ね、ネメ?」


 今になって私とミノリが人間とモンスターのコンビである事に気がついたらしい魔女がそう尋ねてくると、その問いを聞いたミノリはなんとも嬉しそうな顔で私に抱きつきながら魔女にその答えを告げた。

 ……待ってミノリ、今はちょっと私に抱きつくタイミングではないと思うのよ。いや嬉しいけど。ミノリに抱きつかれるの、すごく嬉しいけども! 


「ちょ、ちょっとミノリ! ……ええ、まぁまだキス以上のことはしてないけどね」


「……」


本当は魔女を殺すまでは真剣な表情のままでいたかったんだけど……まぁ……ミノリに抱きつかれるのは嬉しいわけだから、少し照れながら私もそう答えた。 そんな私とミノリの言葉を黙って聞いていた魔女は暫く黙りこんだのち……、


「……うらやましいなぁ」


と、そうつぶやいた。


「うらやましい?私とネメの関係が?」


羨ましがられるとは思っていなかったらしいミノリが、魔女の言葉の真意を尋ねるかのように聞き返すと、魔女はその理由をゆっくりと話し始めた。


「ええ。だって、私たちみたいないつ死ぬかもわからないモンスターにとっては憧れなのよ? 誰かと結ばれるのなんて。その上恋人との間に自分の子供が生まれたなんて事があったらそれはもう奇跡と言いたくなるぐらいに嬉しいことで……まぁ、これから死ぬ私にはもう叶わない夢だけど。

 ……ミノリと言ったわね。きっと私も素敵な巡り合わせがあったのなら、あなたたちみたいに人間とモンスターで恋人のように仲良くすることが出来たのかもね」


 所在なげに笑いながらそう話しきった魔女は暫しの静寂せいじゃくの後、覚悟を決めたみたいで……。


「……もういいわ、ひと思いに殺して。心残りはいっぱいだけれど所詮私は野良モンスター。こうして倒されるのが運命だったに違いないから……。ミノリ、ちなみにあなたも私と同じように女同士でも子供が作れる体質よ。せいぜいそっちの人間の女の子との間に……」

「いいこと聞いたわミノリ。方針を転換してこの子は見逃すことにするわ。有益すぎる情報をくれたこの子は殺すには惜しい存在だもの」

「え……え!? 私のこと見逃してくれるの!? いいの!?」


 有益な情報が出てきた途端に方針を変えて見逃すことにした私の切り替えの早さに魔女まで驚いている。そしてミノリはというと……。


「それで良いのネメ? まぁ私はネメがそれでいいというのならそれで構わないけど」


 やっぱりあっさりした反応で、私に最終確認をするかのようにそう尋ねてきたけど、その答えは当然『はい』一択。


「もちろんよ、だって人間とモンスターさらには女同士で恋人であるという私たちの関係をおかしいと思うんじゃなくうらやましがったわこの子。それだけでもう見逃すに値するし、見る目がありすぎるもの。その上私とミノリで子供が作れるなんて情報をもたらされたら見逃さないはずがないじゃない!」



──というわけで私は、口封じの為に魔女も殺すという当初の計画をあっさり破棄して魔女の事は見逃すことに決める私なのであった。


 ……なによ……いいのよ私はこれぐらいに単純で。まぁ、リラのことをかばおうとしていたこの魔女の事を、口封じのためだけに殺すのは……やっぱり忍びなかったしね。

ネメとミノリの関係を羨ましがったために、運よく九死に一生を得た緑髪魔女さんでした。


そして次回が番外編ネメ・ミノリルートの最後の話になり、次々回から番外編トーイラ・シャルルートの話になります。

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