番外編2-4. 北の大陸生活。【黒ネメ視点】
すみません、激務が続いていて書く余裕が全くなかった為、投稿がかなり遅れてしまいました。
──リラを救う為に、私とミノリがトーイラ達と別れてからいつの間にか2年近くが経っていた。今私たちは北の大陸へと渡り、イオトルハとイムサエゲスの中間にあった洞窟を拠点としてリラの救出を目指す日々を送っている。
「ねぇネメ、そろそろ食材無くなってきた事だし狩りに行こうかと思うんだけどどうかしら? 今日のネメは人間状態みたいだから全てネメに任せっぱなしになっちゃうけど……」
「ええ。ミノリの提案なら私は喜んで狩りにお供するわ。というかそんな事で申し訳なさそうな顔しないでミノリ。だって私、ミノリと恋人よ?」
……リラの救出を目的としていることが全く伺えない会話だけれど、私たちの目的は本当にそれよ。
さて、北の大陸まで渡ってきた私たちだけど、これまでの経緯と今の状況を簡単に整理するわね。
まず私は闇の巫女にさせられる為に別の場所で幽閉されてから、ミノリに救出されるまでの間ずっと他のモンスターや魔物に囲まれていたせいなのか、日によって人間である時とモンスター化した状態である時があるという不安定な状態がずっと続いてしまっていたりする。
だけど私たちはそれを逆に利用して、町で情報を集めたい時や船みたいな乗り合いの物を利用する時は私が人間状態の時、ダンジョンを経由して移動する時は私がモンスター状態の時にして戦闘を避けるようにしてきたおかげでかなりスムーズに旅をする事ができ、結果的に旅立ってから1年後には既に北の大陸まで辿り着いていた。
……でも、それしか言わないとモンスターであるミノリが一緒なのにスムーズというのはおかしいと思われそうだけれど、実は旅の道中でそれを解決する策を私たちはたまたま見つけていてそのおかげでスムーズに旅をすることが出来た。そしてその方法というのが……人間状態の時の私がミノリにするキス。
どうやら私がミノリにキスをすると、キスの時間や濃密さに応じた量の私の魔力がミノリの体内に流れているらしく、特に私が人間状態の時にするキスはミノリの体を私の魔力でコーティングしているのか、一時的にミノリを人間側の存在として認識させているみたい。
そのおかげでどこかの町で私がミノリと探索していた時に、突然吹いてきた強風でミノリの被っていたフードが外れてしまって、周りにミノリがモンスターだと気づかれるんじゃないかと二人して一瞬で顔を蒼くさせちゃったんだけど……町に入る直前にミノリとキスをしていたおかげでその最悪の事態を免れることができた。
それどころかミノリの顔が露わになった瞬間、周りの人間がミノリに見とれていたぐらい。わかるわよ、だってミノリって小柄で童顔だけど美人だもの。だけどおあいにく様、ミノリは私の恋人で誰にも渡す気は無いの。
……まぁ、それはともかく、北の大陸まで辿り着けた以上、あとはリラを救出するだけになったんだけど、前にも言ったように、今の時点でリラを探し出すのはほぼ不可能なので、私達はリラが北の城に連れてこられるのを待つ日々が続いていて……言ってしまえば時間を持て余していた。
そんな私たちにできることはほとんど無くて、拠点である洞窟の中でミノリとまったり……いや、イチャイチャ過ごすか、狩猟生活を満喫するかの二択のみ。まぁこれはこれで楽しいんだけどね。それにこのあたりのモンスターはかなり強い部類だから倒す度に人間側の私の能力向上にもつながっているし。
と、色々考えている内によく来る狩り場へとやってきた。他のモンスターに気づかれないようにミノリの陰に隠れながら辺りを見回してみると、食用に向いてそうな全身が白い鹿型のモンスターを見つけた。
「ミノリ、今日狩るモンスターはあの鹿モンスターでいいの?」
「あら、マッシロシロシカね。ええ、それでお願い。それと倒すときは全体攻撃魔法は無しでお願いね」
「もちろんわかっているわ。ミノリまで巻き込んじゃったら大変だもの。それじゃサクッとやってきちゃうからミノリはここに隠れていてね」
「そうするわね。……ごめんね、本当は私も手伝いたいんだけど」
「気にしないで、私はミノリがそばにいてくれるだけでうれしいんだから」
今の会話でわかるように狩りを担当するのは私の役目で、ミノリは同行するのみで何もしない。だけどそれにもちゃんと理由があって、ミノリはモンスターだからなのか、いくらモンスターを倒しても強さや生命力といった力が成長する兆しが全くなかった上、この辺りに棲息するモンスターはミノリよりも遥かに強い。
狩り対象のモンスターは同じモンスターであるミノリが近づいたからといって襲ってくることはないのだけれど、ミノリが攻撃を仕掛ければ当然向こうは怒って反撃してくる。
そんなモンスターの反撃をもろに受けてしまえばミノリは当然ひとたまりもなくて、良くて致命傷、下手すると一発でミノリは即死という状況になりかねないので、必然的に狩りをするのは私の役目になっている。
……実は私の魔力が付与されて人間側状態になったミノリって私以上に強くなるのだけれど効果が余り持続しないのでこの技はあまり使えなくて使うのは私がピンチになった時だけと決めている。
と言ってもここで狩りをしている内は私がピンチになることはめったにない。だって今まさにこのことを考えている間に狩り対象のモンスターの首をさくっと落としたぐらいにこの辺りのモンスターは私にとってはもう弱い存在だから。
「ミノリー、無事に倒す事できたよー」
「やったねネメ、それじゃ軽く処理してから急いで洞窟に戻りましょ」
そんなわけで、目的だった獲物を難なく狩る事に成功した私達はその場で獲物を解体して洞窟にすぐ引き返すことにした。本当はもう少し狩りで時間をつぶしたかったけど、変に出歩いてこのあたりの人間に見つかったらちょっと面倒な事になりそうだし。距離は少し離れているとはいえ、ここは一応村と村の間の街道だしね。
……ちなみに私達が拠点としている洞窟は、以前に誰かが住んでいた形跡があって、隠蔽魔法がかけられた洞窟の奥には魔導書の置かれた本棚やベッド、それに女性が身につけるようなアクセサリーが置きっぱなしになっていた。
人間棲むには明らかに不便な場所だったことと、魔導書の内容が人間向きではなかった事、それと床に落ちていた先住者のものと思しきピンク色の髪の毛から、ここに棲んでいたのは人間ではなく、魔女みたいな魔法を使うタイプのピンク色の髪をした女性型モンスターだろうと私たちは推測している。
……その条件に合致するのが一人、真っ先に私たちの頭に思い浮かんだのだけれど……まさかね?
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「♪~」
狩ったマッシロシロシカをその場でかっさばいてから洞窟に持ち帰ると、ミノリは早速とばかりにご飯を作り始めた。正直なところ私はろくにご飯を作ったことがないので、こうしてミノリが作ってくれるというのは本当にありがたい。
「……ミノリって私の恋人だけれど……それと同時に姉のようにも思えちゃうのよね」
いつの間にか14歳になった私は、あっという間にミノリの背丈を追い抜き、見た目だけは私の方が年上に見える。だけれど、それでも私の中にはミノリの事を恋人として以外にも、頼れる姉みたいに思っている気持ちがずっとあった。
多分、6年も掛かって私のことを助けに来てくれたほどに私への強い想いをミノリは持っていたのを私も感じて、ミノリに頼りたいと無意識のうちに思っていたからかも。
「……口調や性格は違っていても根底は同じ私だからきっとあっちのネメも同じようにミノリのことを頼れる姉と思っていたのかもしれないわね」
まぁ助けに来てくれたことは別として料理とかについては『あっちの世界のミノリ』の記憶を頼りにミノリは作っているだけらしいけど、それでも私が作るよりは断然良いと思う。そして今ご機嫌そうに鼻歌も歌っているけれど、その曲もどうやら『あっちの世界のミノリ』の記憶にあった歌みたいで、その歌声もまた私の耳にとても心地よく響く。
(今の生活が成り立っているのって『あっちの世界のミノリ』のおかげなのよね。……そう考えると私、会った事無いけれど『あっちの世界のミノリ』には本当に頭が上がらないわね)
なんて事を最初ぼんやりと考えていた私だったけれど……いつしかその考えていた事が徐々に薄れ始めていつしか別の事を考え始めていた。それは今目の前に見るミノリの姿。
「私のためにごはんをつくってくれるミノリの後ろ姿……いいわね」
ミノリは足首に掛かるほどもある長さの髪に加えて普段からマントを着けている。だけど、料理をする時は邪魔だったのか今日は珍しく髪を束ね、さらにはマントも外している。
……そうするとね、ミノリのきれいな背中が丸見えなのよ。そして視線を下に向けると…前垂れで前面を…マントと長い髪が背面の鉄壁ガードの役割を果たしていたんだとわかるほどの高い露出度。
ミノリの倫理観が変に高いせいで私も我慢せざるを得ないけれど……こんなの見せられたら悶々としてしまうわよ。だって誘ってるとしか思えないじゃないのそんな格好! 生殺し過ぎるわよ!!
……あぁ早く16歳になりたい、そして16歳になったらすぐにミノリのことを……。
っていけないいけない……本来の目的はリラを助ける事だって言うのにすっかりこの洞窟での生活を満喫しだしていて……大丈夫、目的は忘れたわけじゃないからね、本当だからね? だって私は索敵魔法で光属性の魔物やモンスターが掛からないか常時探っているもの。
最初はその洞窟から北の城の近くまで数時間かけて歩いてから索敵魔法を唱えて光属性のモンスターや魔物がいないかを探るようにしていたんだけど、索敵魔法を使いすぎたのが功を奏したのか、徐々に索敵可能な範囲が広がり、今では洞窟周辺にいながらかなり離れた場所にある北の城近くまでのモンスターを一日中感知することが出来るようになっていた。だからこそこうして比較的自由な生活を送っている。でなければずっと北の城周辺で張り込みよ。
ちなみに、どうして光属性のモンスターや魔物だけに焦点を絞っているかというと、基本的にモンスターや魔物には基本的に光属性が存在しないし、いるとすれば突然変異や特異体質だけ。
それはつまり、逆に言えば光属性のモンスターや魔物を感知したらそれがリラである可能性が非常に高く、それを感知するまではこうしてミノリと悠々とした日々を送れるわけ……だけれどちょっと不安に思うこともある。
私の運命が『あっちの世界のネメやミノリ』のおかげで変わってしまったように、リラも実は既に運命が変わってしまったのではないかと。
私とリラの接点は『闇の巫女となった私』が『闇の祝福を与える』事で、現時点で『闇の巫女』になっていない以上、リラは北の城に連れてこられても意味が無いから。
北の城のモンスターや魔物が『将来的に闇の巫女となる物を擁立する』事を見据え、リラをあらかじめ捕獲しておこうと考えていればきっとリラは連れてこられるけどその保証も全くなく……というわけで私に今できるのは、せいぜいリラが連れてこられるのを祈る事だけ……リラを助けたい一心なのに連行されるのを期待するというのはちょっと変な話だけどね。
とりあえず、そんなわけで索敵魔法の範囲が広くなりすぎてからはこんな風にモンスターを狩っては食べ、洞窟内ではミノリとイチャイチャするだけという悠々自適生活を送っている。
今頃トーイラは光の巫女になって光の祝福を使えるようになるためにいっぱい努力しているはずなのに……なんだかとても申し訳ない気分にもなってくる。
……そう思ったまさに瞬間だった。私の索敵魔法がついにその存在を感知したの。
「……!! ミノリ!!」
「? どうしたのネメ」
「索敵魔法が感知したのよ! 光属性の気配!」
「!! それってつまり……リラ?」
「そうに違いないわ! 早く行きましょう!!」
「ええ! ちょっと待って火を止めるから!」
……ついに、その日がやってきた。待っててねリラ! 絶対に私があなたを助けてみせるから!!
私は、料理を中断して火を消したミノリと共に索敵魔法が感知した場所へと急いで駆け出した。
安定して書くのが厳しい状態が続いているため、投稿時間も含め、不定期更新になってしまいますが残るは番外編と最終章だけなので最後までお付き合いいただけると幸いです。




