184. 17年目② リラ、13歳。
「ねえリラ、私からのプレゼントって私とお風呂に入ることで本当によかったの? もっと色々な事をしてあげられると思うんだけど……」
「うん、あたし、トーイラおねーちゃんとお風呂入るの好きだからこれでよかったの」
誕生日パーティを祝った日の夜にネメとシャルのふうふが娘のノゾミとあれこれと話をしたりプレゼントをあげたりしている頃、トーイラとリラは仲良くお風呂に入ろうと脱衣所で服を脱ぐところであった。
といっても、リラとトーイラは基本的に一緒にお風呂に入る事が多いので誕生日にしてほしい事を尋ねたトーイラとしては若干拍子抜けしたが、リラのお願いとあればと喜んでそれを引き受けた。
「それにね、トーイラおねーちゃんはあたしの羽を洗う時、とても優しく洗ってくれて……それがとても気持ちよくて、あたし大好きなの」
「! ……あはは、リラの羽は一人だと洗うの大変そうだもんね。一緒に入る時は私が洗ってあげるからね」
リラが、トーイラに笑みを浮かべながら『大好き』という言葉を口にした途端、思わずドキッとしてしまったトーイラであったが、それを誤魔化すように少しだけ笑ってごまかしながら言葉を返した。
(それにしてもリラはこの4年の間に本当に大きくなったなぁ……。私たちがリラと同じ年だった時よりはまだちっちゃいけどあと1,2年もすればママよりも大きくなりそう。
それと、リラの髪は透き通っているようで綺麗だし、雪のように白い肌や長く白いまつげも綺麗で……ママとは違う感じで神秘的。
そんなリラに私は恋されてるんだよねー……髪型も私のを真似ちゃっているし、本当に私の事が好きなんだ……あー、本当に体が2つほしい……)
「? どうしたの、トーイラおねーちゃん?」
「あ! な、なんでもないよ! さあお風呂入ろうか。お湯も冷めちゃうし!!」
「??? う、うん…」
ミノリとは違う魅力のある妹。そんな少女から恋慕を抱かれると気づいたトーイラは急に胸の内に沸きだしてきた邪念を振り払うように急いで服を脱ぐと、リラを連れて浴室へと入っていった。
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「それじゃリラ、髪と背中と羽を洗ってあげるから座ってー。まずは羽からでいいのかな?」
「うん、それでお願い」
トーイラはリラの背中に生えたこうもりのような羽を優しく洗い始めた。ちなみにリラの羽には角のような尖った部分があるのだが、リラなりに危ないと考えていたらしく、ミノリにお願いしてヤスリで頭の角と一緒に先端を丸くしてもらっている。
世間に多種多様ある物語の中にはそういった角のような部分はそこを触られることが禁忌だったり、性感帯だったり、一度折れたら二度と生えてこない等様々あるが、この世界では爪や同じ扱いで体の硬い部分という意味でしか無く、折れてもまた暫くすると元に戻る為、こうして先端を削る事についてはファッションの一部のようなものとして扱われている。
「ふわぁ……やっぱり誰かに洗ってもらうととっても気持ちいい……一人で洗うとちゃんと洗えたかわからないときもあるから……」
「うん、一緒に入る時は私が洗ってあげるよ。次は背中でいいのかな?」
「えへへ、うん、背中をお願い。ありがとうトーイラおねーちゃん」
その後、リラの髪と背中を洗い終えると今度はリラがトーイラの髪と体を洗い、最後にそれぞれまだ洗っていなかった体の部分を洗い終えると2人は仲良く湯船に入った。
「ふぅ……あったかくて気持ちいい……」
「そうだねリラ……」
2人はそうつぶやいたきり、何も言葉を発しない。
しかしそれは気まずいムードから来るものではなく、お互いが一緒にいることが心地よいと思うからこそのもので、とてもまったりとした雰囲気が浴室に溢れている。
そのような静寂が流れる浴室であったが、それを破るかのようにトーイラは言葉を発した。
「だけどリラ、他にもっと私にお願いしたい事って無いの? お風呂に入るのっていつもしている事だからちょっと肩すかしで……」
それは、リラの誕生日だというのにいつもと変わらない事しかお願いされなかったというトーイラなりの不満で、もっとリラのことを祝いたいというのがトーイラの本音だ。
ちなみにトーイラも誕生日であったが、彼女はもう成人している為、自分の誕生日についてはもうそこまで祝う必要が無いと考えている。
それは兎も角として、トーイラの本音を聞いたリラは腕を組んで考える素振りを見せたが、暫くすると何かを決意したのかトーイラと向き合うように姿勢を変えてから口を開いた。
「えっと……実はね、トーイラおねーちゃんにお願いしたい事がもう一つあって……
「なんだー、それじゃ教えてよ。私とリラの仲なんだから決して拒んだりしないよ?」
「で、でもそれをお願いするのはちょっと恥ずかしくて……」
「大丈夫大丈夫。私、リラのおねだりだったらなんでも聞いちゃうよ」
「……いいの?」
「もちろん、私はリラのおねーちゃんだもの」
「そ、それじゃ……」
お風呂に入っているせいなのか、それともリラ自身が恥ずかしかったからなのか、リラは顔を真っ赤にさせながら、トーイラにお願いしたい事を上目遣いで口にした。
「あ、あのね……。あたしの事、抱き枕にして一緒に眠ってほしいなって。
あたしはまだちっちゃいから、トーイラおねーちゃんはとても抱きやすいと思うの」
「!?!? ちょ、リラ!? それはちょっと私としては予想外のお願いだし、リラにはそれはまだ早いかなって思うんだ私!!」
なんとリラのお願いは自分をトーイラの抱き枕になった上で一緒に眠りたいというものであった。
それをしてしまうと、自分がリラに手を出してしまったように思われるのではと感じてしまったトーイラは慌ててそれを拒否しようとしたのだが、リラはその姿勢を崩さない。
「でも、さっき『なんでも聞いちゃう』って言ったよねトーイラおねーちゃん……。あたしも恥ずかしいから我慢しようと思ったんだよ。
だけどトーイラおねーちゃんがそう言ってくれたから、あたしもがんばってお願いしたのに……」
そして明らかにしょんぼりとした顔をトーイラに見せるリラ。
「ぐ、うぅぅう……わ、わかったリラ!! それじゃ今日はリラのこと、抱き枕にして眠るよ!!」
「……いいの?」
「私に二言は無いから安心してリラ! だけどそれ以上のことは絶対にしないからね!!」
トーイラの事がずっと好きなリラはずっとトーイラの事を見ていた。そしてその知識からおそらく『トーイラがああ言った時はこうするのが一番良い』事もわかっている。
だからこそこうして力では圧倒的に不利なリラが、トーイラに対して常に優位なポジションにつけているのだろう。
(あー……やっぱりダメだなぁ私!! リラがこうもぐいぐい来ると簡単に押されちゃって!! リラって本当に私に対してだけ押しが強いんだよなぁー!! そこがかわいいんだけどこれ絶対、私がママを堕とすよりも前に私が先にリラに堕とされるって!!)
一枚上手なリラにまんまとはまるトーイラ。トーイラがミノリを堕とす前にリラに堕とされるのも時間の問題なのかもしれない。
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──風呂から出た後、トーイラとリラは彼女たちの寝室へとやってきた。
この寝室はミノリも一緒で一週間のうち半分はノゾミも一緒なのだが、ミノリはまだ片付けをしているようで、ノゾミも今日はネメたちと一緒の寝室で眠ることになっている。
その為、今この寝室にいるのはトーイラとリラだけである。
「トーイラおねーちゃん、あたしはいつでもいいからトーイラおねーちゃんが抱きたい時に……きてね」
「ちょ、ちょっとリラ!? もっと他に言い方あるよね!?」
そう言ったリラが下着姿のままベッドに体を投げ出すと、トーイラがベッドに入るのを待ちわびるかのように手を広げた。
なお、昔のミノリがパジャマを着ることができなかった為にずっと下着姿で眠っていた事もあって、娘として育てられたトーイラとネメもパジャマを着る習慣が身につかないまま大人になってしまったのだが、後から家族となったリラやノゾミにまでその習慣が定着してしまい、今ではシャルを除いた全員が通称『シタギデネル族』となってしまっていた。
なお、あまりにも風呂上がりは下着でいる事に慣れきっていたため、居間でまだ片付けをしていたザルソバとクロムカが下着姿で歩くトーイラたちを見て驚いたような顔を見せたが、どうして驚いたのかトーイラたちには全くわかっていない。
「でも他に言い方は無いと思うよトーイラおねーちゃん……」
「わ、わかっているけど……よし! それじゃリラ、寝ようか」
「うん」
少しだけ躊躇ったもののここで動かなくてはリラにも失礼だと思ったトーイラは意を決してベッドに入るとすぐにリラを抱きしめた。
(わぁ……リラが言うようにとっても抱きやすい……そしてリラのにおい……! 前も思ったけどリラのにおいって本当に私好みですごくいい……)
直接肌に伝わってくるリラのぬくもりと、抱きやすい体の大きさ、そして抱きしめた途端に感じ始めたリラの甘いにおい。その全てがトーイラに心地よい感覚を齎してくれるもので、
(あ、これダメ……なんだかもうすぐ眠りに……落ち……)
トーイラがリラを抱きしめてから僅か十数秒で、あっという間にトーイラは眠りに落ちてしまった。
(トーイラおねーちゃんの体温……あったかい。それにきつくならないように優しく抱きしめてくれていて……嬉しい)
そしてリラもまた、下着部分を除いた箇所から直に伝わってくる愛しいトーイラのほどよい体温に包まれた事ですぐにうとうとし始め、本当に幸せそうな顔で静かに寝息を立てたのであった。
ちなみに同室ではミノリも寝ているのだが、抱き合って眠る2人を見ても『仲が良くていいねぇ』と微笑ましい光景としか思わず、ベッドに入るとそのまますやすやと眠りについてしまった。
……同じ部屋でそんな風にイチャイチャして眠る2人がいたというのにあっさり眠ってしまうあたり、ある意味ミノリが一番豪胆なのかもしれない。




