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178. 16年と9ヶ月目① トーイラ、大一番。

 ノゾミが続編のメインキャラである事が判明したり、ザルソバとクロムカもなんやかんやあってふうふとなってミノリ達の家の隣に新居を建てて暮らし始めたりしてから、あっという間に一月の時が流れた。


 あの騒動以来大きなトラブルが降りかかる事もなく、平穏な毎日を過ごしていたオンヅカ家の面々は、いつものように家族全員で朝食を食べ終えてからそれぞれ家事を始めたり、本を読み始めたり、ザルソバとクロムカの家へ遊びに行ったりと思い思いの事をして過ごしている中……。


「あーあー……」


 一人、居間の床でゴロゴロし続けている金髪の女性。その正体はご存知ミノリの長女であり、最近ではすっかりヘタレの代名詞にもなりかけているトーイラである。

 まだミノリを堕として恋人関係になる事を諦めきれていなかったトーイラは、数ヶ月前の壁ドン作戦が失敗した事をまだこうして思い返してはもだえるように床を転がり続けていたのだが……十往復ほど転がり続けると途中でピタッとその動きを止め、天井を見つめ始めた。


「なんで私ってばこうもダメなんだろうなー……。こうして一人でいる時は、ママに対して、こうして、こうやって、こうすれば堕とせる!……って思えるのに、いざママの前に立つと勇気が出なくて失敗して……だからこそネメにヘタレ扱いされるんだろうなぁ……」


 トーイラは、そういった自分の情けない性分がとてもイヤだったらしい。


「もしもママが自分よりも力の強い人に惹かれて、戦って勝てたらお嫁さんになるって宣言するような信念だったら、今すぐにママに勝負を挑んで勝つことでその力を見せつければ、即座にママを堕とせるんだけどなー……まぁでもママを堕とすためにママの事を傷つけるのだけは絶対にイヤだけど……」


 確かにミノリを守るために身体能力や武術を強力なまでに身につけたトーイラではあったが、基本的に戦闘民族ではない一般女性なので腕力に物を言わせてミノリを従わせるなどという野蛮なことはできない性格であり、そもそもミノリを傷つけることなど言語道断、世界がひっくり返ってもトーイラには有り得ないのだ。

 ……ただまぁ、光の使いこと『ラリルレ』を始めとした一部の者はトーイラが腕力に物を言わせてあれこれしたので被害を被っているが……。


「もうこうなったら……最後の手を使うしか……。よし!!」


 今までウダウダと寝転がっていたのに、何かを決心したかのような事をつぶやきながらその身をいきなり起こしたトーイラ。

 そのトーイラの瞳には、『これで決めてママを堕としてみせる』という決意の炎が燃え上がっていて──今夜、ついにトーイラが動き出す。



 ******



「あー、もしかしてこれかなぁ。リラの視界にゲームウインドウが見えるようになった理由って」


 ミノリは、リラの視界にもゲームウインドウが見えるようになった理由を考えようと、一人、ミノリ用の机がある部屋に腰掛けて周りに誰もいないことを確認しながら引き出しから取り出したゲーム雑誌をもう一度見直していたところ、推測の域は出ないがその理由を見つけ出した所であった。


 ミノリが見つけ出したのは、特集ページに小さく載っていた一枚のゲーム画面の画像。


「この戦闘画面の画像に写っている敵モンスターって……種族名は確認できないけど吸血鬼ヴァンパイアだよね。服装や髪型は違うけど基本的なデザインと配色がリラと同じで、こうもりみたいな羽もあって……。それを踏まえるとリラのデザインは名前を変えた上で前作から続編に流用した……という事になるのかな?」


 前作ではリラと同じような配色の吸血鬼ヴァンパイアは実際には戦闘することのない『吸血鬼ヴァンパイアイベント用』しかいなかった。それが続編の画面上では戦闘画面に普通に存在する事からミノリはそのようにまず考えた。


 そしてそれだけだとまだゲームウインドウがリラの視界にも見えるようになった理由にはならないが、その理由に繋がってくるのは続編のメインキャラとなるノゾミに添えられた説明文で、そこに書かれていたのはモンスターを仲間にできると考えられる『魔物使い』の記述。


 前作では構想だけあったものの結局組み込めず、残骸のようなデータしか残っていなかったモンスターを仲間にするシステムが、続編では正式に組み込まれることが決定したようで、ノゾミをパーティーに入れる事でモンスターを仲間にできるようになっているらしい。


「ノゾミが生まれてから力が強くなったり、新しい技や魔法が使えるようになったとリラとシャルが話していたから……きっとあの2人はその対象に含まれているのかな」


 そしてオンヅカ家の中では吸血鬼ヴァンパイアであるリラと、ウィッチであるシャルがその条件に当てはまりそうだとミノリは考え、既に2人ともノゾミの仲間という扱いになっているのだろうと推測した。


 リラはノゾミのことを妹のような存在として大切に想い、読み聞かせをしてあげていて、ノゾミもそれを嬉しそうに聞く姿が普段から見られる事から当然お互いに対する好感度が高く、シャルはそもそもノゾミの母親で愛娘のノゾミを溺愛している。そんなリラとシャルの2人がノゾミに対して敵対心を持つことなどあるはずがない。


 そういった状況を踏まえるとリラとシャルはゲームシステム上、ノゾミの仲間になったモンスターと見なされ、2人の視界にゲームウインドウが見えるようになったのだろうというのがミノリなりの見解だ。


「そしてリラのあの光の剣は主人公が習得する技の一つで、実際にゲームをプレイする上では覚える機会が無いので習得することが出来ない技だけど、システム上では覚える方法があれば誰でも使える技……という事になるのかな」


 リラは本来ザルソバに与えられるはずであった光の祝福をトーイラから与えられ、今もその状態を維持したままである。それが既に始まっている続編の世界にも影響していて、おそらく続編でも終盤辺りで続編の主人公が使えるようになるであろう光の剣を既に習得してしまい、ゲームのストーリーがまだ始まっていないにも関わらず、自在に光の剣を出現させられるようになったのだろう。


 本来使えるはずが無い技をリラが覚えた事になるため、一見バグが発生したようにも思える状況ではあるが、ネメがデバッグモードで本来覚えない技を自由に覚えられたと話していた事から、覚える技は固定されているように見えてもその実、システム上では全ての技を覚えられるようにプログラムされているのだと考えると、リラが光の剣を使えるようになった事もなんら不思議では無い。


「そして私に関してはゲームウインドウが見えなくなった事と、モンスターとしての本能がまた湧き出すような様子も無い事を考えると……おそらく私は続編では出番はなくて、さらにザコモンスターとして再登坂も無く、私の役目は完全に終わった、という事になるのかな。

 トーイラやネメもゲーム本来の流れを考えると続編への出番は無さそうだから私と同じように視界からゲームウインドウが消えて、私達3人は揃って続編の世界では一般人という扱いになったんだろうなぁ。……ちょっと肩の荷が下りたかも」


 ミノリがそう結論づけ、ほんの少しだけ出た開放感から軽く腕を伸ばして背伸びをついていると、タイミングよく聞こえてくる部屋をノックする音が聞こえてきた。

 あまりこのゲーム雑誌を自分以外の家族に見られるのはよくないと考えているミノリは急いでゲーム雑誌を引き出しにしまってから戸を開けると、そこには何かを決意したような瞳で立つトーイラの姿。


「あれ、どうしたのトーイラ?」

「えっと、ママにお願いがあって……今日はママと一緒にお風呂入っていい?」


 トーイラから、ミノリと一緒にお風呂に入りたいという申し出であった。


「うん、別に構わないけど……どうしたの?」

「特に理由は無いよー。ママと入りたかっただけ」


 何か一緒に入りたい理由でもあるのかなと思ったミノリが尋ねると、トーイラはただ一緒に入りたかっただけらしい。しかしその割には变に何かを決心したような顔をしている事をミノリは少し不思議に思ったが……。


「んー、そっかぁ。うん、私は構わないよ。だけど一つだけトーイラお願いがあって……お風呂入る時、私の髪を洗うの手伝ってくれるかな? やっぱり一人だと洗うの大変だから」


 ミノリはあえてそれに触れず、一緒に入る事に同意した。


「もちろんだよママ! 私、ママの髪洗うの大好きだから一生懸命洗わせてもらうね」

「あはは、頼りにしているよトーイラ」



 ******



──そしてその日の夜。


「それにしてもトーイラが私と一緒にお風呂に入りたがるのって久しぶりだね」

「言われてみればそうかも、最近はリラと入ることが多かったから。ママもノゾミちゃんと入る事多いよね」


「そうだね、ノゾミはおばあちゃんっ子だし、私もノゾミに甘いところがあるから一緒に入ってってお願いされるとついOKしちゃうんだよね。……ただまぁ、湯船に入ってもすぐに出たがったりお臍をさわろうとしたりしてくるのはちょっと勘弁してほしいと思っているけど……ノゾミが異様にお臍に執着しているのはきっとネメの仕業なんだろうなぁ、あれ。ネメも小っちゃい時から私のお臍に対して変な執着あったから」

「あはは……」


 脱衣場に入るなり、トーイラと軽く雑談をしながら何のためらいも無く身につけている衣装を外し出すミノリ。隣にいるのは娘だから安心しきっているのか、全く羞恥心しゅうちしんを見せないままミノリはあっという間に一糸も纏わぬ姿になった。


 それに対してトーイラはやはり緊張しているのか脱ぐのがゆっくりめであった。その上、先に全裸姿となったミノリの体に不思議と神々しさを感じ、息を呑んでしまっていた。


(相変わらずママの体って綺麗……ママは私より背は低いし、胸も控えめだから子供っぽいとママは自分で思っているみたいだけど、筋肉がほどよくついていてい引き締まってみえる肢体に、バランスの取れたスラッとした体つき、くびれもしっかりとあるし肌も張りがあって本当に素敵……それに比べたら私のこの胸の贅肉ぜいにく……本当に邪魔)


 オンヅカ家の中ではシャルと一、二を争う胸部の大きさを誇るトーイラであったが、内心ではこの豊満な胸をトーイラは邪魔としか思っていない。


(これのせいで激しい動きを伴う攻撃をする時、ブラをしてても上下に揺れるから気になって動きが悪くなるんだよねー。……ぎ取る方法無いかな)


 などとトーイラが服を脱ぎかけたまま動きを止めて考え込んでしまっていると……。


「……おーい、トーイラー? どうしたのボーッとして。早くお風呂に入ろ?」

「!?!? ひゃっ、ママ!?」


 考え事から戻ってきたトーイラの目の前にはミノリの顔。どうやら動かなくなったトーイラを気にしてミノリが顔を近づけていただけなのだが、トーイラは恋慕を抱いているミノリの顔が目の前にあった事で思わず驚きの声をあげてしまった。


「わっ。ご、ごめんねトーイラ驚かせちゃって。でもほら、脱ぎかけたままじゃ風邪引いちゃうかもしれないから早くお風呂に入ろうね」

「う、うん……」


 ミノリが先にお風呂場へ向かうと、トーイラも急いで服を脱いでミノリを追いかけるようにお風呂場へ直行した。




──こうしてトーイラにとって、一世一代いっせいちだいの大勝負が始まったのであった。



 今回から4-1章に入ったミノリさんですが、4-1章の後に番外編、4-2章ときて、4-3章で最終章となり、4-3章で完全に完結とする予定です。

 ただ、現在予約投稿済みのストック分が尽き欠けているのと、4月から生活環境が変わる事で書く時間が取れなくなってしまう可能性がある為、継続していた連続更新が一度途切れるかもしれません。

 完結までは遅れてでもなんとしてでも書ききる所存ですので、最後までお付き合いただけたら幸いです。

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[良い点] 魔物使い・・・調教・・・閃いた!
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