165. 16年と5ヶ月目③ 先輩ふうふのあれこれ話。
R15要素が強いですので苦手な方はご注意ください。
ミノリと別れ、家でおそらく勉強にそろそろ飽きる頃であろうノゾミのために足早で帰るネメとシャル。死霊使いであるにもかかわらず光属性のままで、さらに正気も保ったままでいるクロムカを不思議に思いながらあれこれ話していた2人だったが……。
「それはそうとクロムカは数時間だけノゾミのペットだったけど、確かにペットのオーラがすごかった」
「そうですね。私も最初、母親としてクロムカさんが一体どんな人なのか見定めようと躍起になっていたんですが……あの姿を見たら妙に親近感が湧いてきまして……」
2人は少しだけ話題の方針を変え、今度はクロムカの印象について話していた。
「わかる。あれはシャルと同じようなペットオーラがすごい。52万はある」
「52万……一体何処から出てきたんですかその数字?」
「降ってきた。ちなみにこの数字はシャルよりも多い」
「……そうですか」
そうネメが言うと、何故かシャルは少しだけ不機嫌そうにほっぺを膨らませ出した。
「どしたのシャル。なにか不満そう。私何か悪い事した?」
「いえ、別にネメお嬢様が悪いってわけじゃないんですけど……ネメお嬢様がクロムカさんに心変わりしたらいやだなーって……」
「あぁ、なるほど。焼き餅」
「もー! いちいち言わないでくださいよネメお嬢様―!! 自分でもわかってるんですよ子供っぽいって! ……だけど自分でも意外でした、こんな気持ちが頻繁に湧き上がるようになるなんて」
ミノリ達と暮らさず、ネメと結婚もせず、野良モンスターとして一人生活していたままだったのなら恐らく一生芽生えるはずのなかった『嫉妬』という感情。
ノゾミに構っていられる時間が少ないと感じた時にも似たような感情が湧いたシャルだったが、それが再び胸中から噴出しだした事に、シャル自身も驚いているようだ。
「焼き餅を焼けるようになったのは、シャルの心も成長している証拠。でもシャルをそんな気持ちにさせた私もちょっと迂闊だった。反省」
「くすっ、そうですよネメお嬢様。私はモンスターだとか人間だとかの前にネメお嬢様を愛する一人の女で、ネメお嬢様たった一人のお嫁さんなんですから」
「もちのろん。私が愛し、嫁とするのはシャルただ一人。……シャル、ちょっと止まって」
「なんですか? ネメお嬢さ……んっ……」
「……」
ネメに呼び止められたシャルが立ち止まると、ネメはシャルの肩を取って向かい合うように姿勢を正せると……その場で口づけを交わした。
「もう、ネメお嬢様ってば……いきなりなんですか。……まぁ嬉しかったですけど」
「ごめんのキス。そして照れてる顔はやっぱりかわいい。流石、私の嫁」
その後暫くの間見つめ合ってから、やがてどちらからともなくその場で一緒に笑い出す二人。そして手を繋ぎながら再び家へ向かって歩き出した二人の話題はザルソバへと移っていた。
「……そういえばネメお嬢様。さっきクロムカさんと会った時、ザルソバさんも近くにいましたよね。あの方に関して私、気になった事があるんですけど……」
「ん、どしたのシャル」
「えっと、ザルソバさんって、以前だったらお姉様に対して熱視線を送っていたような気がしたんですけど……今日はそれほどでもなかったですよね?」
「シャルご明察。実際熱視線を送っていなかった。あれは多分クロムカの影響。
ザルソバは以前ならおかあさんのことを『下心ありありムッツリスケベ欲望渗ませグヘヘ目』で見ていたけど、今日はその視線が薄まっていたのが私には感じた。多分恋愛対象がお母さんからクロムカに移行しはじめてきている」
ある意味恋愛のプロであるネメとシャルのふうふは、ザルソバの恋愛感情の変化を視線などから読み取っていたらしい。
「ということは……やっぱりあの2人……デキてますか?」
「そこまではいってないと思う。もしもあの2人が私たちみたいな関係になっているとしたら、ザルソバの魔力がクロムカの体内に入り込んでいていもおかしくはないはず。
だけどさっき会った時に感じた魔力の流れにはそういった兆しは無かったから、まだ私とシャルみたいな関係にはなってない」
そして、まだ恋愛関係にまでも至っていないとネメは判断したようだ。
「そうですか……。でも、今はまだでも将来的にはそうなる可能性も……?」
「無きにしもあらず。……あとでザルソバに魔力の注ぎ方をこっそり教えておこう。多分クロムカがザルソバの魔力を体内に注がれたらすぐ。英雄と呼ばれるだけあってザルソバの魔力は質が良すぎるのをひしひしと感じた」
「え、ネメお嬢様が言う程良すぎるんですか!? ネメお嬢様もあんなに魔力いっぱいあるのにつまりそれ以上……?」
驚くシャルであったが、シャルが驚いたのはネメの魔力『量』より多いと勘違いした為である。その為、ネメは魔力の『量』ではなく、魔力の『質』の方である事をシャルに説明した。
「私の魔力はただの凡百が長年無理して鍛えた程度のもので魔力の量が多いだけで質自体はあんまり。ザルソバの魔力の質は格が全然違う。
一応、おかあさんやシャルを助けた時に使った【でばっぐもーどのふらぐ切り替え】で『闇の巫女』状態になっている間だけは私の魔力の質も良くなるけど、基本的にザルソバと私の魔力の質は雲泥の差」
ネメとシャルとの間に子供を設けるのに2年掛かったが、どうやらそれは魔力の質が大きくかかわっているらしい。
「まぁ結局のところ、2人ともあと一押しすればコロッとお互い堕ち合うだろうけど、まだどっちも覚悟が足りないのは間違いない」
「となると、私たちはこのまま様子見するしかない感じ……ですかね」
「うん、それしかないけど……私としてはどちらでもいいから早く手を出すべきと思う。……守るべきクロムカが人外の位置に座したままなら尚更」
「……そうですね……」
ザルソバがクロムカに早く手を出した方がいいと2人が思ったのは『クロムカがモンスター化してしまっている事』が大きくかかわっているようなのだが……2人はその理由については知っているからなのか口に出す事はしなかった。
そして話はまた別の話題へと移り、今度はザルソバとクロムカの体格差についての話になっていた。
「それにしてもザルソバさんとクロムカさんは年齢としてみるなら1歳差なので問題ないのはわかっていますけど、クロムカさんはモンスター化した影響で成長が止まってしまったままだから……体格差が結構ありますよね……」
「体格差は気にしなくていいと思う。リラとトーイラもおんなじような体型だし……というかあの2人も相思相愛なのは見てわかるからさっさとくっつけばいいのに。トーイラがずっとおかあさんへの想いを引きずっているのはわかるけどそれだったらもう少し行動に移してほしい。ヘタレすぎてこれでは応援しようにも応援できない」
「あはは……トーイラお嬢様に対して、珍しく辛辣ですねネメお嬢様」
「仕方ない事。だってあそこまで引っ張ったらずっと一途にトーイラの事を想っているリラが不憫」
ザルソバの話だったはずなのに唐突にネメにディスられるトーイラ。……まぁ『頑張る姿が見たい』とトーイラに直接伝えたのに未だにトーイラが何も行動に移していないのだから、妹としてはやきもきしてしまうのも仕方ないのだろう。
「そういえば体格差でふと思ったけど……今私が小さい子供に戻ってしまったらシャルがどう反応するのか気になる。子供だと今みたいに恋愛感情湧かなくなったりするのかとか」
「くす、大丈夫ですよネメお嬢様……体格差程度のことで、ネメお嬢様への愛が消滅してしまうなんて事、永遠にありませんよ。
だってネメお嬢様のことを好きになってから11年経っているんですよ私。告白したのはネメお嬢様が14歳の時でしたけど、好きになったのはネメお嬢様がまだ11歳の時で、私よりもちっちゃかったじゃないですか」
「そうだった。……そう考えると随分重力のかかった愛だったんだって今更思った」
そうネメが呟くと、それがおかしかったようでシャルはくすりと笑いながらその言葉に応酬した。
「ふふ、愛が重い女で結構ですよ。私の心も体も全てネメお嬢様のものなんですから。体の隅から隅までネメお嬢様に愛でられつくしても、ネメお嬢様のことをずっと愛しく思っていて、夜めちゃくちゃに乱されてもこうしてネメお嬢様のことを愛し続けているわけですから……愛が重いなんて今更ですよ」
「……! 愛いすぎるシャルにそんな風にたくさんの愛を唐突にぶつけられたら、家まで保たないぐらいに興奮してきた。ちょっとあっちの茂みに行こう」
シャルからの愛がふんだんにこめられた言葉によって、ネメは突如として気持ちが昂ってしまったらしく、瞬間沸騰湯沸かし器のようにいきなり興奮しだしてしまった。
「え!? あ、ちょ、ネメお嬢様!? ……ふふ、わかりました。あなたの永遠の伴侶としてネメお嬢様からの愛情、全て受け止めます。でも手短にお願いしますよ? ノゾミちゃんが待っているはずですし…」
「もちのろん」
……この後2人は茂みに移動すると仲良くゆっくりと倒れ込み……それから何をしていたのかは定かではないが、とりあえず2人は帰るのが予定より少し遅れたそうな。
結婚してもうすぐ4年になるネメとシャル。2人のふうふ仲は冷めることなく、相変わらずのラブラブふうふであり続けているようだ。




