表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
165/251

160. 16年と2ヶ月目② 副産物&ばいおれんす。

狩りのお話という性質上、スプラッタな表現と残酷表現があります、苦手な方はご注意ください。

 リラとノゾミにとって今日は初めての狩り。

 攻撃手段が少なくて狩りをするには明らかに不向きであるはずのリラが一体どうやって狩りをするのか疑問であったミノリをよそに、リラが空に向けて左手を掲げながらリラなりの大声を出すと同時にあらわれたのは光り輝く不思議な剣であった。


「え!? 何その剣……ってあれ!? その剣ってまさか……」


 リラの左手に握られたその不思議な剣にミノリは見覚えがあった。それもこの世界に転生してからではなく、前世でこの世界をゲームとして遊んでいた時だ。

 そしてその光を放つ剣は本来リラが持つことすら有り得ないものであった。それが何故かというと……。


(ちょっと待って、その剣って確か光の祝福を受けた証として主人公の手元に現れる剣で、ラスボスを倒すために必須で必ず最後はあの剣でとどめを刺す事になっていたはず……なのに、なんでその剣でむしろ倒される側であるはずのリラが……?)


 そう、本来ならその剣を持つのはこの世界ならザルソバであり、リラはむしろその剣で討たれる側なのだ。だというのにその光の剣は、まるでリラが正当な所有者であると言わんばかりにリラの手に握られている。

 そんな予想外の出来事によって、驚いて声が出ないミノリの顔を見たリラは、ほんの少しだけ満足気まんぞくげな表情で、まるでイタズラが成功して嬉しさがにじみ出ているようなそんな様子であった。


「かーさま驚いた? 元々トーイラおねーちゃんから血をもらっていた頃から血の中に入っている魔力で少しずつ回復していたらしいんだけど、光の祝福で特異体質も治してもらってからは回復どころか魔力量自体が増えるようになっちゃってて……かーさまが言ったみたいな理由で使うのは避けてるんだけど、いつの間にかトーイラおねーちゃんが使えるような強い魔法も使えるようになったんだよ。

 そしてこの剣もなんだかよくわからないけど、いつの間にか使えるようになったのに最近気づいたの」

「そ、そうなんだ……」


 どうやら光の祝福の恩恵はリラの特異体質を改善させただけではなく、世界を救う者に与えられる剣まで、ある意味副産物としてリラに与えていたようで、剣からも『THE・最強』と誇示しているかのような覇者のオーラまでも出まくっている。


(……うん、何はともあれ、これだったらリラでも問題なく狩りができる気がする……)


 ミノリはそれだけでもう大丈夫だと瞬時に判断する事ができた。


「それじゃ、どうやって攻撃するのか見せたから今度は実践。かーさま見ててね。あたし、がんばる」

「う、うん……。初めての狩り、がんばってねリラ!」


 あの剣を構えているだけで全く問題ないことはわかっているが、それでもリラにとって初めての狩りである事には変わらない。若干戸惑ってしまったミノリだったが、これが三女リラの初めての狩りである事を思い出し、気持ちを切り替えるとリラに向けて声援を送った。

 それを聞いたリラは小さく頷いてからパタパタと自分の羽で飛び上がり、獲物のウマミニクジルボアに気づかれることなく上空で静止した。


 ちなみにだが……獲物であるウマミニクジルボアの上空にリラが辿り着くまで、そこまで遠くないにも関わらずかなり時間がかかった程に移動速度がとても遅かった為、いくら強力な武器を扱えるようになってもリラ個人としての能力は基本的に低いままのようだ。


 それはさておき、ウマミニクジルボアの上空で静止しているリラはなかなか攻撃に移ろうとしない。

 隻眼であるが故に狙いがなかなか定まらないのか、それとも緊張しているのか……そうミノリが思った瞬間だった。


「今だっ」


 どうやらタイミングを見計らっていただけだったらしいリラが小さく叫ぶと、手にしていた光の剣を下向きにして、ウマミニクジルボアを突き刺すように一気に下降した。


 そして……あっという間だった。リラの剣はウマミニクジルボアの脳天をまるで豆腐のようにあっさり貫き、ウマミニクジルボアは何が起こったのかわからない顔のままその場に倒れ、一瞬にして絶命してしまった。


「すごいでしょママ。リラってばあんな技使えるんだよ」

「……わお……」

「見て見てかーさま。あたし、ちゃんと狩れたよー」


 絶句するミノリをよそに、リラは先程倒したばかりのウマミニクジルボアを引きずりながら嬉しそうに駆け寄ってこようとしたのだが……飛行速度と同様に腕力もやっぱり今のリラには全く無いようで、ウマミニクジルボアを運びながらミノリ達の元へ戻ってくるまでかなりの時間がかかった上……。


「だ、大丈夫リラ……? 息上がっているよ?」

「ぜぇ……ぜぇ……とても重かった……」


 ミノリの元へやっと戻って来るなりその場にへたり込んでしまった。

 生命力と防御力だけはオンヅカ家随一だが、それ以外の能力は無いにほぼ等しいリラ。

 しかし先程リラが見せた技の攻撃力は控えめに見てもネメやトーイラに引けを取らないものだ。その為ミノリも、


(移動速度や基本的な体力は皆無に近そうだから一人では無理そうだけど、それでもアタッカーとして見るならかなり強力なのでは……?)


 と、リラに対する考えを改めたのであった。



 ******



「おばーちゃん、次はノゾ! 見てて!」

「う、うん……さっきも一応言ったけれど攻撃魔法は使わないでねー」

「大丈夫だよおばーちゃん! ノゾまだ魔法使えないから!」


 そしてお次はノゾミが狩りをする番だ。

 体力オバケであり、オンヅカ家において武闘派筆頭でもある母親ネメから直々(じきじき)に教育を受けているノゾミは、一体どうやって狩りをするのか。

 大丈夫だろうと思う反面、何故かミノリの胸中は不安な気持ちも入り交じっていた。


(どうしよう、ノゾミは確かに賢いけれど、まだ幼い故の無邪気さ兼ね備えているからわりととんでもない事になりそうな気がする……)


「ノゾミもがんばってねー」

「ノゾミちゃん、ファイト」

「うん! トーイラおねーちゃんもリラおねーちゃんもありがと! ノゾ、がんばる!」


 そんなミノリの不安など知ってか知らずか、トーイラとリラからの声援を受けてから獲物であるムスヤクニルドリに気づかれることなく目の前まで接近したノゾミは、一瞬の隙をついてムスヤクニルドリの顔面をその拳でめいっぱい殴りつけた。


 すると、その力が強すぎたのかムスヤクニルドリの首が殴られた拍子ひょうしでギャグ漫画のように横に3回転してからその場に倒れて動かなくなってしまった。おそらくノゾミに殴られた勢いで首が1回転した段階で絶命したと思われるのだが……ノゾミは何故か一向に殴るのをやめようとしない。


「あはははは! そーれ! そーれ!!」


 動かなくなったムスヤクニルドリにまたがりながら笑顔で延々と殴り続けるノゾミ。ノゾミの拳がムスヤクニルドリに当たるたびにムスヤクニルドリの体から噴き出した赤い何かノゾミにかかっていて、ある意味ホラー状態だ。


「ノ、ノゾミ! ストップストップ! 流石にそれ以上殴る必要ないよ!?」


 スプラッタに近い状態になりかけている事に慌てたミノリが急いでノゾミを止めたが、ノゾミはミノリからストップがかかるまで動かなくなったムスヤクニルドリを殴り続けていた。

 そして殴り続けていたのには理由があったようだ。


「えー? なんで止めちゃうの? 殴り続けるとお肉柔らかくなるってネメママが言ってたのに」

「それは肉体が変形するほど殴るって意味じゃないよ!? 第一骨もバラバラになっちゃうし取り外した方が良い臓器までめちゃくちゃになっちゃう!」

「そうなの? なーんだ、そっかー。じゃあノゾやめるね」


 そうノゾミは言うと、先程までムスヤクニルドリだった何かへの攻撃をやめて地面へと降りた。

 このムスヤクニルドリだった何かはおそらく骨は細かく砕かれ、中身も色々とぐちゃぐちゃになってしまっているのは一目見ただけで明らかだったため、


(これ持って帰るのかー……うーん……)


 どうやってこの無残な肉塊と化したムスヤクニルドリを持ち帰ればいいのか眉間に皺を寄せながら悩むミノリをよそに、キラキラした眼差しを向けながらリラがミノリの元へやってきて上目遣いで尋ねた。


「それでかーさま、どう? あたしとノゾミちゃん、これからは狩りをしても大丈夫?」


 どうやら今日の自分たちの狩りについての評価と今後狩りをして良いかの是非を聞きたかったらしい。


「え、あー……うん。2人とも大丈夫……かな? 但し私かトーイラかネメが同伴することは必須だけどね」


 ミノリは『リラは狩りをする事自体は出来るけど、根本的な体力が無いから狩ったモンスターを持って帰ってくる途中でダウンしそうだし、ノゾミは加減をわかってないから止める人が必要』という欠点が2人にはあることから、単独で狩りをさせるのは難しいとは思ったものの、それをサポートする誰かがいれば実力としては全く問題ないと判断し、これからも狩りをしても良いことを2人に伝えた。


「やったねノゾミちゃん」

「うん、リラおねーちゃん!」


 リラとノゾミはどちらも大喜びで嬉しそうにハイタッチを交わした。きっと、狩りが出来ずにいた事に負い目を感じていたのだろう。


 ……まぁ、そもそも数年前まで特異体質で衰弱しきっていた子や、現時点でまだ1歳児である孫に狩りをさせる事自体どうかと内心思う事もあるけれどミノリは2人の自主性を重んじる事にした。


 思考を放棄しただけのようにも見えるがそんな事は断じてない、多分。



 そして狩った獲物を運びがてらミノリが何を考えていたかというと……。


(とりあえず……今日の献立の一つはつみれ汁かなぁ……このムスヤクニルドリの残骸はもうそれしか料理では使い道がないだろうし、今日中に食べきった方良さそう……。そして次からはちゃんと加減するようあらかじめ狩りの前に注意しておこう……)


 どうやら本日の夕飯の献立を一つ決めたのに併せて、今後の狩りでの方針も脳内で定めたようだ。



 ******



 その後、ミノリ達が狩ったモンスターをなんとか家まで運び終えると、ネメとシャルも買い出しを終えて帰ってきていたようだったので、リラとノゾミが狩りを無事完遂した事と、リラが強力な剣を扱えるようになった事を近くにいたシャルに伝えると、シャルは少しだけ驚いた顔を見せたがそれも束の間、すぐにそれもそうかという顔をミノリに見せた。


「あ、リラちゃんも新しい技が使えるようになっていたんですか? 実は私もいつ頃からだったかは忘れましたけど、ネメお嬢様の付与魔法関係なく自分の能力が高まったり新しい魔法がいつの間にか使えるようになったりしていたんですよねー。今まで成長したこと無かったのに不思議ですよね」


「へ? そうなの?」


「はい。確か私の時はネメお嬢様から……えっと【げーむういんどう】の【敵一覧】でしたっけ?

 ネメお嬢様と結婚してからも私の種族名がずっと消えずに薄く残ったままだったそうなんですけど、いつの間にか私の種族名が消えていたそうで、その頃から私も自分で強くなっているのか今まで使えなかったような攻撃魔法が使える事に気がついたんです」


「そうなんだ……あ、そういえば言われてみればリラの名前もいつの間にか消えていたなぁ……」


 シャルの言葉を聞いてミノリも思い出したのだが、視界にうっすらと見えていた【ゲームウインドウ】の【敵一覧】にずっと表示されていたリラの種族名がいつの間にか無くなっていたのだ。


 ネメから魔力を与えてもらった事によってシャルの種族名がゲームウインドウの敵一覧で薄く表示されるようになり、そして今ではそこから種族名が消えたという話を踏まえると、おそらく光の祝福によってリラの属性が変わった事、そしてトーイラから血を分け与えてもらっていた事が関係しているのではとミノリは推測した。


 しかし、それよりも今改めてゲームウインドウを見たミノリがそれ以上に気になったのは……。


「なんだか視界に見えてるゲームウインドウ、前よりも薄くなっているような気がするんだけど……気のせいかな」


 シャルとリラの2人が敵一覧から種族名が消えると同時に成長するようになった事と薄くなったゲームウインドウ、何か関係があるのだろうか。

 ミノリはその事がほんの少し不思議に思ったのだが、ゲームウインドウ自体、ミノリの中でも影が薄い存在だった事もあって、いつしかこの疑問は綺麗さっぱりミノリの頭から消え失せたのであった。




 ……そして、ミノリがシャルの元から移動した後。


「あっしまった……」


ミノリに伝えようと思っていた事があったのを今の今まで忘れていたらしいシャルが、それをふと思い出したらしくその場で小さく叫んだ。


「最近になって、みんなが話していた【四角い板】っぽいものが私の視界にもうっすら見えるようになってきているという事を伝えるのをうっかり話し忘れてた……まぁ後でいい……のかな」



 そうシャルは独りちると、まだ途中だった買い出しで運搬してきた荷物の仕分け作業へと戻ったのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] はいはい!先生!も一個! >うっすら見えるようになってきているという伝えるのを 「いう事を伝えるのを」…ですかね?
[気になる点] はいはい!先生! >ウマミニクジルボアの上空にリラが辿り着くまで結構時間がかかった五度に移動速度はとても遅く、 「五度に」→「程に」…かな?(テキトーな推測)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ