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136. 10年と1ヶ月目 ミノリさんのイケナイいたずら。

この話は途中まで書き進めていたものの去年9月時点でストーリーが変になるのではという理由で一旦お蔵入りにしていたのですが、2章完結時点で問題無さそうだったので仕上げてみました。

ミノリの仲間フラグを書き換えたばかりでリラがまだ出てきておらず、シャルもまだネメと結婚していなかった頃のお話です。

 これはネメの視界だけに見えるデバッグモードのウインドウからミノリの仲間フラグをいじった事によって、ミノリがザコモンスターから仲間キャラという扱いになって1ヶ月程経ったある日のお話。


「うーん……『モンスターとしての本能』がすっかり出なくなった事を考えると多分問題ないんだろうけど……気になる事があるんだよなぁ」


 仲間キャラという状態のままミノリが娘のネメとトーイラと共に生活していく中でミノリの胸中にはある疑問が噴出し始めていた。


「ママ、腕組んで難しい顔してどうしたの? 何か考え事?」


 ミノリが何か悩んでいるのに気がついたらしいトーイラがミノリの傍に駆け寄るとどうしたのかと尋ねてきたのでミノリはトーイラに今自分が疑問に思っていることについて話しだした。


「えっと、ザコモンスターから仲間キャラ……えーっと、敵という扱いじゃなくなった私の事をネメやトーイラ以外の人間が見たらどんな反応するのかなーと思ってね。

 あと、他の人間と話している途中でネメが私をモンスターという扱いの方に切り替えたらどうなるかってのも……」


 転生して初めての頃、会う人会う人ミノリを見るなりモンスターだと騒いで逃げ出していたのだが、現在のミノリを見たら一体どういう反応をするのか、そして話している最中にフラグを切り替えたら相手はどう反応するのかミノリはそれが気になっていたのだ。


 その心境の奥底には『相手の反応を少し楽しんでみたい』という心情が隠れており、これは基本的にのほほんとした性格で悪巧みなど殆どした事のないミノリにしては珍しいちょっとした悪戯心いたずらごころだった。


 その話をミノリから聞かされたトーイラ。デバッグモードを見ることができないトーイラはミノリがしてみたいのならしてもいいのではという構えらしい。


「それだったら、ずっと疑問を持ったままでいるより、ネメにお願いして実際に試した方いいんじゃないかなー。何かあってもママの事私たちが守るから安心して!」


 トーイラからの力強い言葉をもらえたミノリ。確かにこれ以上考えても推論の域を出ないのでそれならば実際に試してみるのが早いと判断したミノリは、近くで本を読んでいたネメに、その件を願いする事にした。


「ねえネメ、ちょっとお願いがあるんだけど……実は……」


 ミノリが試してみたい事を聞かされ、その内容に対して軽く眉間に皺を寄せたネメ。ネメとしてはミノリが再び敵扱いとなって迫害されてしまう状況になってしまうのをあまり好ましくないと思ったのだろう。

 しかし親愛なるミノリのお願いならばとネメはその頼みを聞き入れてくれた。


「少しだけでもおかあさんの身に危険が及ぶかもだから正直あんまり気乗りしないけど、おかあさんの頼みなら……」



 ******



 そんなわけでネメとトーイラと共に森を抜けてキテタイハの町のある方角へ歩いて行くミノリ。

 するとルーチンワークなのだろうか、ミノリが転生したばかりの頃にミノリの顔を見た途端逃げ出してしまった行商人があの頃と変わらぬ姿で歩いてくるのが見えた。


「…まるきり年を取ってないように見えるけど、むしろあの人の方こそ何者なんだろう……」


 行商人の変わらぬ容姿をミノリが不思議に思うのも仕方ない事ではあるが、君も10年前からまるきり姿が変わっていないぞミノリさん。


 それはともかくとして、ミノリは早速気になっていることを試すべく行商人に近づくと声を掛けた。


「こんにちはー」

「はい、こんにちは」


 2回目にあった時はミノリが変装をしていたから普通に挨拶を返してくれたが、3回目となる今回はミノリに仲間フラグが立っているから変装せずとも普通に行商人はミノリに挨拶を返してくれた。


 さぁ、今だ。ここでネメがフラグを切り替えると一体どうなるのか実験の開始だ。


 事前にデバッグモードでいつでも切り替えられるように準備していたネメがミノリの仲間フラグを消してみると……。


「うわぁああ! モンスターだったぁあ!」


 先程まで普通に挨拶をしていたというのにミノリがモンスターだと気づき、その場で腰を抜かして尻餅をついてしまった。


 ネメはその様子を確認すると続けてミノリの仲間フラグを元に戻した。すると……。


「いや違う、人だった! あー……ごめんなさいねモンスターだと見間違えててつい驚いち」


 尻餅をついた行商人が立ち上がってミノリに謝りかけている最中に、ネメは再びミノリの仲間フラグを消した。


「ゃああああ! やっぱりモンスターだぁああ!」


 するとやはりミノリをモンスターだと認識して、再び腰を抜かしてしまった。


フラグを切り替える度に腰を抜かして尻餅を抜かしてしまう、態度がコロコロ変わる行商人の反応が面白くなってきたのか、ネメは口角をつり上げ始めながら何度もミノリの仲間フラグを切り替え始めた。


「人だ! いやモンスターだ! ちがうやっぱり人だ! ちがったモンスターだ!」


 まるでバグったかのような挙動を見せる行商人。

 あまりにも挙動不審すぎる行商人はそのうち鳥だ飛行機だと言い出しそうである。


 しかし、それを繰り返す内に、だんだんと行商人はバテてきたようで息が上がってくると……。


「……いやなんかもうどっちでもよくなってきたよ人でもモンスターでも……。襲ってくる気配は全く無いし無害じゃろ……お嬢ちゃんたちの仕業しわざかい?

 ……人間なのかモンスターなのかなんかもうよくわからんしどういう理屈なのか知らんがあんまりこの老体にむち打つような所業はしなさんな……」


「……あ、はい、すみません」

「謝罪」

「ごめんなさい」


 ミノリとネメ、トーイラが素直に謝ると、行商人は呼吸を荒くしながら何処いずこかへと歩いていってしまった。


「人間、どうでもよくなると 恐怖心すら どこ吹く風」


 その背中を見ながらネメがぽつりとつぶやいた。


「……あの人に悪いことしちゃったね、ママ」

「そうだね、トーイラ……うん、もうこんな事してみたいだなんて絶対に言わないよ」



 そしてトーイラとミノリも改めて心の中で改めてあの行商人に謝罪しながらその背中を見えなくなるまで見送った。


 その最中さなか、ミノリの胸中ではある結論が出ていた。


(……結局人間相手だといくら親しく話しててもフラグ切り替えたら結局モンスターだと思われちゃってあんな反応されるわけだから……私の身の安全を考えると今後一生フラグは切り替えない方が良さそう)


 幸いにも行商人は戦闘能力が無かったのでミノリの身に危険は何も起きなかったのだが、これがもし戦闘能力がある者であればこうはいかず、それを踏まえるとフラグを消してしまうのはリスクしかない。


 そう判断したミノリは、その日以降、仲間フラグを消すという事はしなくなったのであった。



 ……約5年後、家族を守るために自身がモンスターだと、ゲーム本来の女主人公に明かす日までは。

行商人が出てきたのは『1. 1日目① 転生してました。』と『5. 4日目① 町へ。』でしたので131話ぶりの再登場でした。

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