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135. 14年と7ヶ月目その後 幼女化ミノリは腕が痛い。

2章本編は完結しましたが、ストーリーの関係上省略した話や後回しにした方がいいと判断したお話、お蔵入りになっていた話を番外編として順次公開します。

その為、時系列が前話と続いていませんのでご注意ください。


最初のお話は『124. 14年と7ヶ月目 夢の中のおんづかようちえん。』の続き部分でミノリが小さくなってしまった夢の話です。


「……え、ここでおわり……? ホントに? え、えー……?

 そんなぁ……すっごく気になるところで終わるなんて……」


 トーイラ、ネメ、リラ、さらにシャルも含めた4人が全員幼い姿でミノリの娘になっているという夢を見ていたミノリ。

 あと少しでリラがトーイラに告白しようかという場面でタイミング悪くミノリは目が覚めてしまい非常にもどかしい気持ちでいっぱいになっていた。


 時計を見直してみるとまだ針は4時を回ったばかり。ミノリがいつも起きる時間までまだ猶予がある。


「うん……二度寝しよう。そしたらきっと夢の続きを見られるはず……」


 二度寝する事にしたミノリは一度布団を被って再び目を閉じたのだが、その眠りに落ちていく最中『そういえばリラが私の格好をした時にトーイラとネメが危ない反応をしたような気がしたけれど、実際に私がちっちゃくなったらどうなるんだろう』などという余計な事を考えてしまったのがいけなかった。

 その考えが影響したようでミノリは先程の続きではない別の夢を見る事になってしまったのであった。



 ******



「……あれ? さっきと違う場面……うーん、残念。違う夢っぽいなぁこれは……」


 先程まで見ていた夢の場面と異なり、誰もいない居間に一人佇んでいた事から違う夢になってしまった事に気づき、非常にがっかりした様子のミノリ。


「まぁ……結局は夢なんだし仕方ないか。……ところで、なんだか周りの様子がどうも……」


 気持ちを切り替えた室内を見回したミノリは見慣れたはずの居間に違和感を覚えた。


「なんだろう、周りの全てが大きく見える……天井も高く見えるし……。あれ、これってもしかして」


 目の前にある見慣れたテーブルはどういうわけなのか顔を出すのがやっとの高さになっており、天井も高い。

 それ以外の家具や道具も全て普段よりも少し大きく見える事から、自分の身に起きている異変がなんとなくだがミノリは察した。


「まぁでもこの目で一応確かめてみた方がいいかな。えーっと脱衣場脱衣場……」


 ミノリが自分の目で己の姿を確認するため姿見が置いてある脱衣場に向って歩き出そうとすると、丁度ミノリを探しに来たらしいトーイラがミノリと鉢合わせした。


「ママ、こっちにいるのー? ……ってママ!?」

「あー……やっぱりそうかぁ……」


ミノリを探しに居間へやってきたトーイラの姿を見た瞬間、ミノリは確信した。


 トーイラの背が明らかに高いのだ。いや、確かに成長したトーイラはミノリの身長をとっくに追い抜いてしまっているのだが、今目の前にいるトーイラはミノリが軽く見上げなければならない高さで、これはむしろトーイラが大きいのではなく……。


「ママ、なんで子供みたいにちっちゃくなっちゃったの!?」


 ミノリが小さくなってしまったのだ。


(あ……やっぱり私の方がちっちゃくなっちゃったのか……。それも2人を保護した時よりも……)


 トーイラの言葉でやはりそうかと思ったミノリがふと横を見ると、そこには遥か昔、ネメとトーイラの身長を測る為に傷をつけた柱。その柱の傷を見る限り一番下の傷よりも自分の背が少し小さいようで、恐らく5歳児ぐらいの大きさになってしまったのだとミノリは判断した。


「トーイラ、どしたの突然叫ん……じゃ……!?」


 そしてトーイラに続けてにやってきたのはネメ。当然ながらネメもミノリより大きく、幼児みたいな大きさになってしまったミノリをわなわなと見つめると……。


「ちっこいおかあさんの破壊力はすさまじき。これはお持ち帰りした上で首輪つけて飼いならしたい」

「わかるよネメ! この大きさのまま手なずけたいよね!!」


 不穏な事を言い出した次女ネメに釣られて同じように危険発言をするヤンデレ長女トーイラ。


「飼うとか言わないでほしいなーネメ!? トーイラも同調しないでね!? 私ちっちゃくなっちゃってもあなたたちのお母さんなんだよ!!?」


 すぐさまミノリは抗議をするのであった。


 ******



「ママ、今までこんな風に子供みたいな大きさになった事って……あったっけ?」

「私の記憶におかあさんの幼き姿の記憶なし。なぜその姿に」


「初めてだよ、こんな大きさになっちゃうのなんて」


 その後、なんとか落ち着きを取り戻したらしいトーイラとネメがどうしてそのような大きさになってしまったのかミノリを問い詰めたが、夢なのだから当然夢だからとしかミノリは言いようない。

 しかしミノリはこれが夢だからと説明するのが何故かはばかられてしまい、ひとまずわからないというていで話を続ける事にした。


 それというのも……。


「それで……ママは元に戻れるの? その姿もそれはそれでいいし、めちゃくちゃ愛玩したいけれど……」

「気がかり。だけどその可憐な姿も愛しき。……飼いたい」


 先程から幼い姿のミノリに対して、どことなくよこしまな気配が2人から芽生えている気がしたのだ。これでミノリが迂闊うかつにこれが夢だなんて2人に伝えてしまったら、一体どうなってしまうのやら……。


(なんだかすっごい危険な気がするんだよねそれ話しちゃうと……)


 暴走した夢の中の2人によって一生夢の中に囚われてしまうのではないか、そんな危険な空気をミノリは感じたのだ。


「んー……まぁそのうち戻ると思うよ。だから2人共気にしなくて大丈夫だよ」


 その為、ミノリは2人に悟られないようにあまり気にしていない風を装いながら無難に答えたのだが……。


「ん、ネ、ネメ、どうしたの……って、ちょ、ネメ!?」


 大丈夫だと言ったのに、近づいてきたネメに何故か抱っこされてしまうミノリ。


「なんで抱っこするの!?」


 一人慌てるミノリだったが、そんなミノリの心情を知ってか知らずか、まるで誓いを立てるかのようにネメは謎の決意を口にしだした。


「決めた。おかあさんは私の娘として一生大切に育てる。私の庇護下におかあさんを入れて永久とこしえに愛さねば」

「待ってネメ!? 私さっきそのうち戻るって言ったよね!? だから育てる必要なんて全く無いよ!?」


「戻らない可能性もある。私、お母さんみたいな娘が欲しかったからこれはむしろ好都合の鴨葱かもねぎ背負しょ背負しょい」


 慌てたミノリがふとネメの顔を見上げてみると、獲物の小動物を捕らえた猛禽類のような目でミノリを見下ろしていた。


「ひぃ!? ネメが錯乱してる!?」


 恐怖を覚えたミノリがネメから逃れるためジタバタもがきだすと、そんなミノリに救いの手が差し伸べられた。


「ちょっとネメ!! そんなのダメーーー!!」」


トーイラがネメからミノリを奪い取り、救出してくれたのだ。そして……。


「あ、ありがとうトーイr……」

「ママは私が育てるの!! 私の事しか考えられないように今から教育しちゃうんだから!!!」


 嗚呼ああ哀しきかなミノリさん、トーイラはもっと危険な思想を持っていた。


「トーイラもなの!? というか私の意思は無視してない2人とも!?」


 ミノリは暴走する2人に対して思わず叫んだのが、暴走機関車状態の2人はどちらもミノリの話を聞く様子がない。それどころかミノリの右腕をネメがつかみ、トーイラが左腕をつかむと……。


「トーイラは今すぐおかあさんから手を離すべき!」

「そういうネメこそママから手を離してよー!!!」


 ミノリの腕を両方から引っ張り合うというミノリの取り合いが始まってしまった。


「痛い痛い痛い!! 2人ともそんなに力強く腕を引っ張らないでー!! 腕抜けちゃうーーッ!!!!」


 大岡裁きのように両腕を引っ張られるミノリ。本来の大岡裁きならミノリが痛がると同時に手を離すものなのだがブレーキの壊れた娘たち2人は一向に手を離す気配が無い。


 痛がりながら『あぁこれ手が抜けるか最悪テナガエビみたいになるわ』と、ミノリが諦観ていかんの境地に陥りかけていると、どこからともなく第三の救いの声がミノリの耳に聞こえてきた。


「かーさまが痛がってるよ。 トーイラおねーちゃんもネメおねーちゃんも、めっ」


 いつの間にやってきていたのだろうか、三女のリラがたがが外れた姉2人をとがめるように抗議した。


「「……あっ!!」」


 リラの声で我に返った2人が慌てて手を離すと、腕を引っ張られる痛みで目に涙を浮かべながらリラの後ろに隠れたミノリ。

 自分たちの暴走行為によって怯えてしまったミノリの姿を見て、まるで自分のしでかした大罪を悔やむかのように2人はその場に崩れ落ちてしまった。


「私はなんて罪深いことを……おかあさんのロリ姿があまりにもかわいすぎたあまり、おかあさんを痛がらせてしまった……」

「ごめんなさいごめんなさいママ……私ママを困らせるつもりじゃ……」


 地面に突っ伏しながら泣き出す2人。

 どうやら幼女化したミノリを見て興奮のあまりたががはずれてしまっただけのようらしい。


(……いや、そんな事で簡単に外れるのもどうかと思うのだけど……)


 ミノリが引っ張られた腕の痛みが消えるのを待ちながらそう考えていると、三女のリラは本当にミノリの事を心配しているようで慰撫いぶ するようにミノリに声をかけた。


「かーさま、腕大丈夫? こっちで休も」

「あ、ありがとうリラ……おかげで腕が抜けなくてすんだよ……」


 嘆いている姉2人をよそにリラはミノリを優しく導きながら別室へ連れて行ったのであった。


 ……しかしこれがミノリに降りかかった新たな災難の始まりだった事を、この時のミノリは気がついていない。



 ******



「かーさま、あたしよりちっちゃくなっちゃった。どうしてなの?」

「うーん、これはその……」


 これが夢だからとミノリ自身はわかっているが、ネメとトーイラ同様に、夢の中のリラにもどう伝えたらいいものかと考えていると……。


「……それにしても、かーさまってちっちゃくなっても……とっても美人。おねーちゃんたちがかーさまを取り合うのも納得……。あたしも、こんなちっちゃくてかわいいかーさまなら……娘にしたい」

「あ、あれ? ……リラ?」


 先程のネメやトーイラと同様にリラの様子までも突如として変わり、10歳のあどけない少女が一転、一人の『女』に変貌したかのようにミノリに対して身を寄せ始めてくる。


「あ、あのー……リラ? 一体何を……?」

「だめ、今はあたしの方がかーさまなの。だから()()()()()()は黙るの」


 ミノリの事を普段の『かーさま』ではなく『ミノリちゃん』とまるで子供のように呼んだリラはそのままミノリを抱きかかると、まるで赤ちゃんをあやすかのような仕種しぐさを始めた。その姿はまるで……。


(あ、これおままごとだ?! 私、いつの間にか娘役にされてる!!)


 ただのおままごとならかわいいものなのだが、先程のネメとトーイラ同様にリラの様子もおかしいと感じたミノリは慌ててリラから離れようとしたが……幼女となってしまって力が出ないのだろうか、リラの抱擁ほうようする力が異常に強く、ミノリは逃げることができない。


 現実のリラは腕力も体力も人並み以下の少女なのに一体何処にそんな力が隠れていたのか。そしてリラはミノリがその手から逃れようとしたのに気がついたらしくさらに抱擁ほうようする力を強める。


「だめだよミノリちゃんそんなに暴れちゃ。さぁ、今日からあたしがかーさまだよ。もう怖いものなんてなにもないよ。これからはトーイラおねーちゃんとあたしがミノリちゃんの親になって、ミノリちゃんのこと、大切に育ててあげるからね……」


 気づいた時には時既に遅し。どこにそんな力を隠し持っていたのか、リラは恐ろしい程の腕力でミノリを手放そうとしないまま、まるであやすかのようにミノリに向けてしゃべり始めた。

 しかし何故だろう。口調は優しいはずなのにミノリを見つめるリラの紅い瞳から何か不穏な気配を感じる。


 ミノリはそんなリラの表情を見ておのずと察してしまった。


『もう、にげられない』と。


 リラに抱擁ほうようされながらミノリの意識が沈んでいく最後、リラの紅い瞳が妖しく輝いた、そんな気がした。



 ******



「ひぃいいいいい!!!!! 起きろ起きろ起きろ私ーーーッ!!! ……あ、あれ? よ、よかったぁ……ちゃんと目覚められて」


 まるで悪夢を見たかのようにびっしょりと寝汗をかいたミノリは奇声を上げながら飛び起きた。夢の中に一生囚われてしまうのではないかと危惧までしたのだが、そんな事は無く無事解放されたらしい。

 時計の針は5時を少し回ったばかり。ミノリが普段起床する時間より少し遅いがまだ他の家族は寝ている時間だ。


(あ、まずい……つい大声を出しちゃったけど……よかった、2人ともゆっくり寝てる)


 悪夢を見てしまった為、無意識のうちに奇声を上げてしまっていたが、幸いにもトーイラもリラもそれに気づかずぐっすりと眠ったままだ。2人を自分の奇声で起こさずにすんだのだけは運が良かったとミノリは胸をなで下ろした。


「それにしてもなんでだろう……すっごい腕が痛い……実際にやられたわけじゃないのに……」


もしかして現実の自分の腕にも2人に手を引っ張られた跡が残っているのではと一瞬脳裏をよぎったミノリだったが、そんな事は勿論無く、跡どころかしみ一つないいつもの肌がそこにあった。


「まぁいいか……それにしても結局、リラとトーイラの関係はわからずじまいかぁ……まぁどっちにしろ夢の中の出来事であって現実じゃないから気になっても仕方ないや。さて、朝食つくらないと」


 ミノリは小声でそう独りちると、朝食を作るために着替えて台所へ向かう事にした。


 着替え中にミノリはふと…、


(そもそもさっきのは全て夢で若干性格も誇張こちょうされただけで現実の娘たちがあんな事するはずないし……。リラだって素直ないいだから)


 と、そんな風に考えるのであったが、この時のミノリはリラのトーイラへのかわいらしい恋慕の影に潜む少し歪んだ愛情についてまだ気がついていなかったのであった。


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