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127. 14年と9ヶ月目① 叶った願い。

 ミノリがこのゲーム本来の主人公と出会でくわしてから一月が経った。幸いにもあれ以来彼女とは遭遇していないため、なんとか平穏な日々を送っていたミノリ。


 そもそもこの一月の間、再び彼女に出会う事を警戒してしまったミノリが、いつもは分担しておこなっていた狩りをトーイラに一任する一方、自分は一番安全なこの森から出ないようにしていたからというのもあったが……。


 ちなみにミノリたちの家があるこの森は、以前まではミノリ、ネメ、トーイラ以外の人物は3人のうち誰かに手をつないでもらったり、おんぶしてもらったり、先導されたりしなければ入る事が出来なかったのだが、今ではシャルとリラも自由に行き来できるようになっている。

 リラに関してはトーイラから光の祝福を与えられたからなのかトーイラやミノリの血を吸ったからのどちらかが判断できないが、シャルはネメと結ばれて魔力をネメから与えられたからで、ネメやトーイラの魔力が体内にあると入る事が出来るようだ。



 それは兎も角として、ミノリが誰よりも早く起きて朝食の準備をしているとネメ達の寝室の方から声が聞こえてくるのをミノリのエルフ耳が聞き取った。

 きっとネメとシャルが同時に起きたのだと最初ミノリは思ったのだが……どうも違うようで、しばらくすると暗い表情をしたネメだけが居間へとやってきた。


「おはようネメ……あれ、どうしたの? なんだか暗い顔しているけど……」

「おはようおかあさん……えっと……シャルの具合が昨日の夜から悪いみたいでずっとうめいてる……」

「え、シャルの体調悪いの!?」


 今まで怪我した事はあれど、体調を崩した事がミノリの記憶にある限り一度も無かったシャルの具合が悪いと聞かされ、驚いた顔でネメに聞き返したミノリ。


「うん、夜中に体がだるくて吐き気がするって言いながらベッドから動けないでいる。どうしようおかあさん…」


 ネメも初めての事態に戸惑っているようで、助けを求めるような視線で見つめられたミノリは、状況を把握する為にひとまずネメから、具合が悪くなるまでシャルの行動を確認する事にした。


「何か思い当たることはある? 変なもの食べたりとか、変な事したとか……」

「思い当たること……? うーん別に……。昨日の夜も寝る前に何回もシャルに魔力を供給したぐらいで」

「それでは?」


 2人はミノリに孫の顔を見せることを目標としているようなので、頻繁に体を重ねてネメがシャルに魔力を与えているのは重々承知だがそれで体調を崩しては元も子もないと常々思っているミノリは、そこに原因があるのではと判断して、このふうふがいつからその行為をしているのか思い返してみる事にした。


(そもそもネメとシャルって一体いつから魔力を与えていたんだっけ……結婚する前からって言っていたから少なくとも3年……普通の胎生と違って魔力が蓄積されて子を為すわけなんだから流石にもう……あれ……それってもしかして!)


 そこまで考えたところである可能性に気づき、ミノリはハッとした様子で顔を上げた。


「おかあさん、どしたの……? もしかして何かわかったの?」

「うん、もしかしてなんだけど……」


 ネメの方を向き直したミノリは、それが正解なのかを確認するべくネメに尋ねる。


「ねぇネメ、一応確認だけど鑑定魔法って人体に影響しないよね?」

「? うん、体がぞわぞわっとした感覚に包まれるだけで、悪影響はないけど……」


「それを一回、シャルに掛けてみて。もしかしたらシャルのお腹に……」

「え? …………あ!」


 そこまでミノリが話すと、ネメもその意味を理解したらしく、ネメは忍者のごとく足音を立てずにシャルが横になっている寝室へと駆け出していき、しばらくするとミノリの元へ戻ってきた。


 そのネメの表情には先程までの暗い様子は微塵もなく、ネメなりの笑顔が浮かんでいるということはつまり……。


「どうだった、ネメ? 私の予想当たっていた?」

「うん。おかあさんの言うようにシャルに鑑定魔法掛けてみたら、シャルだけに掛けたはずなのに反応が2つあって……それでシャルの状態を見て見たら……『妊娠中』だった。シャルにもそれを話したらすごく嬉しそうだった」



 ミノリの予想通り、シャルのお腹にはミノリの孫にあたる赤ちゃんがいるらしい。



「おめでとうネメ! あなたお母さんになるんだよ! ……あれ、シャルが産むんだからシャルがお母さん……? いや、2人も女性だからどちらもお母さん……うん? まぁいいやネメ、あなた親になるんだよ!」

「お、おかあさんありがとう。でも、嬉しいのはわかるけど、ちょ、ちょっと苦しい……」


 女性同士という関係の為、一瞬混乱したものの、そんな些細ささいな事はどうでもいいとばかりに親となるネメを祝福するべく強く抱きしめたミノリ。普段は加減して抱きしめるのだが感極まって力を入れすぎたようで、ネメからの軽い抗議を受けてミノリは慌ててネメを解放した。


「わ、ごめんねネメ。つい嬉しくて……さて、それじゃトーイラとリラが起きてきたら2人にも話さなくっちゃね。ひとまずネメはシャルの元へ戻って体調良くなるまで傍にいてあげて。

 前にモンスターが子供を授かるのは滅多にない事だって言っていたから多分あの子、嬉しい反面どうしたらいいかわからなくて不安になってるはずだから」

「うん、そうする」


 ミノリからシャルの傍にいてと伝えられたネメは、ミノリに返事をすると一目散にシャルの元へと駆け出して行った。



──ネメとシャルが初めて体を重ねた日から3年強、そしてふうふとなった日から2年。

ネメとシャルの悲願であった『ミノリに孫の顔を見せる』夢が間もなく現実になろうとしていた。

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