表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/78

第27話 大漁だ

 とりあえず……せっかくつかまってくれてるんだし、一旦引き上げるか。

 俺は「飛行」で高度を上げ、イカを海から引きずり出した。


 引きずり出した後も、イカは執拗に俺に猛攻を加えてくる。

 それを適当にいなしつつ……俺は、かつてSNSでバズっていたとある動画を思い出していた。


 確かイカって、頭の付け根あたりをチョップすることで神経締めできてたよな。

 色が透明だか白だかに変わるのが、神経締めが上手くいってるサインだったはずだ。

 それやったら、クラーケンもおとなしくなるんだろうか?


 ものは試しでやってみよう。

 俺はイカを空中高く放り上げると……その首元へと一直線に飛んでいった。

 そしてそこに、空手チョップをお見舞いする。


 すると……さっきまでの暴れようが嘘みたいに、イカはぐったりと動かなくなった。

 更にその直後、イカの全身が真っ白に染まった。


 上手く締めることができたみたいだな。

 ひとまずはこの状態で収納して、どう捌くかとかは後で考えるとしよう。


「収納」


 そう唱えて俺は、イカをアイテムボックスに収納した。

 さあ、今度こそ素潜りを始めるか。



「ちょ……な、なんでそのイカ今の状態で収納できるんですか!」


 と思ったのだが……いざ海に飛び込もうとした瞬間。

 俺がイカを収納したことに対し、ヒマリがそんなツッコミを入れた。


「なんでって……なんか不思議な点でもあったか?」


「ありましたよ! 今の締め方だと、イカは仮死状態にしかなりません。……収納には生きてるものは入らないはずなのに、なんで今ので入れれちゃうんですか!」


 聞いてみると、ヒマリは不可解な点を詳しく聞き直してきた。


 それを聞いて、俺は少し考え込む。

 その末に出したのは、こんな結論だった。


「俺の収納にとっては、死んでる扱いなんじゃないか?」


 だいたい、死の定義なんてのは曖昧なものなのだ。

 仮に死を「通常の生命の活動状態に戻れない状態になること」と定義するならば、時代によって何を死とするかなんて簡単に変わってしまう。


 AEDの無い縄文時代なら初期の心停止だって「死」に該当するだろうし、遠い将来脳細胞一個から人体を完全復元できるようになれば、今「死」とされている状態の大半は「死」とは呼べなくなるだろう。


 それくらい、死とはフレキシブルな概念なのだ。

 だから俺の収納が今のイカを「死」んでいると判断したとしても、おかしくはないというわけだ。


 おおかた、INTによってどう「死」を定義するかが変わったりするのだろう。

「INTが高いほど、低い文明レベルにおける『死』の定義が採用され、収納できるものの条件が緩くなる」とかなら、仮死状態のイカを入れられたのも説明がつく。


「マサトさんの前では、収納魔法の条件すら変わってしまうんですね……。もうマサトさんの凄さで驚くことはないと思ってましたけど……ワタシの負けのようです」


「何と戦ってるんだよ」と喉元まで出かかったが、俺はその言葉を飲み込んだ。

 ヒマリも(おそらく)納得したんだし、そんなことより今は次の獲物探しだ。



 海面に目をやると……そこにはすでに、薄い氷が張られようとしていた。

 構わず俺は「飛行」で氷の膜をぶち破り、海の中へと突入する。


 思った通り、海水の冷たさは、特に耐えられないと感じることものではなかった。

 六月の雨の日のプール程度には冷たいので長居はしたくないが、落ち着いて魚を探す程度なら十分可能だ。


「あっ、あれは……」


 しばらく海の中を泳いで(飛んで)いると、俺は二つの魚群が喧嘩をしている場面に遭遇できた。

 鑑定によると、片方はワカサギ、もう片方はアジのようだ。


 参戦して、何匹かとっ捕まえるか。

 そう思っているうちに、更に状況は一変する。


 なんと今度は、漁夫の利を狙ってそこにマグロが乱入したのだ。

 マグロの乱入により、アジとワカサギの魚群は、散り散りに逃げようとし始めた。


「……今だ!」


 一気に魚群に迫ると、俺はマグロを筆頭に何匹かの魚を、ヒレから剣を刺して活け締めにした。

 どうせアイテムボックスの中は時間が停止してるんだし、血抜きは街に帰ってから専門の業者にやってもらおう。


 などと思いつつ、俺は活け締めにした魚全てをアイテムボックスに収納した。

 ……あとは、えび天も食いたいな。


 最後に俺は、海底を一通り探索してえびを何匹か捕まえ、海上に戻ることにした。

 海上に戻ると真っ先に浄化魔法を使い、体と服の水分・塩分を飛ばす。


「ヒマリ、帰ろうか」


「収穫はばっちりなんですね! 分かりました!」


 そして俺はヒマリに乗ると、帰路についた。


 ……黒豆と小麦があれば醤油も作れそうだし、マグロなんかは刺身にしてもいいかもな。

 食べ物のレパートリーが広がりそうで楽しみだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 主人公とても弱い 氷を割る時に津波もあリませ 魚も生きたままてす
[気になる点] なんでワカサギが海にいる イワシと間違えた?
[気になる点] 寄生虫に注意ですね(-_-;)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ