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ぬすっと物語29 まちわびた返事

 リンゴを食べ終えたおいらは、相談書を確認しに向かった。


 おいらの質問に回答がそろそろあるかもしれない。

 おいらは期待しつつ相談書の場所へと向かう。


 掲示されている相談書を見る。


 !


 あった!


<相談書>

「せいなるけものはみつかったら、にんげんにたべられますか?(ぬすっと)」

「答 聖なる獣は食べられません。卵の中から早く出てこられるように祈りましょう。冗談でも食べるということは言わないように」


 おいらは貼られている返事をじっと見つめる。


 ふむふむ。


 よかった。おいらは食べられないらしい。

 ひと安心だ。おいらは胸をなで下ろす。


 おいらはおなかの袋からペンを取り出し、返事の下に「わかりました」と書いた。

 これで心配事が一つ減った。


 おいらは足取り軽くその場を離れた。


 ◇ ◆ ◇


 おいらは卵のところまで帰った。


 まだ朝早いからか人はまばらだ。

 返事に書かれていたみたいに、卵の中から早く出てこられるように祈ることにした。


 おいらは卵に向かって二回お辞儀をし、ぽんぽんと手を二回叩く。

 食べられないから安心してと祈る。

 最後にもう一度ぺこりとお辞儀をした。


 むふー!

 これで大丈夫!

 おいらは見つかっても食べられないぞ!


 おいらはうきうきと厨房に向かう。

 見つかっても食べられないという安心感。


 むっふー!


 今ならおいらもテーブルで料理を頼めるかもしれない!

 おいらは厨房ではなく、食堂へと向かう先を変える。


 むぅ、まだ誰もいない。


 とりあえず、イスに座ってみる。


 ……。

 イスに座るとテーブルの上が見えない。


 おいらはイスの上に立ち、テーブルに手を添える。

 ここで待ってたら、料理を頼めるかな?


 おいらはそわそわしつつ、イスの上で待ってみた。


 まだ人が来ない。


 大丈夫かな?

 おいらは料理を頼めるのかな。


 ……。


 うーん、どうなんだろう。


 おいらは一人で待っていると徐々に心配になってくる。


 大丈夫かな。


 見つかっても食べられることはないんだから、大丈夫だよね。


 見つかって食べられないからといって、料理を頼めるのかな?

 わかんない。


 おいらは心配になりながら、そわそわしつつイスの上で待ってみた。

 シッポをぷらぷらさせる。

 うーん、うーん。


 そうだ。

 相談書に聞いてみようかな。


 うん、相談書に聞いてみた方がいい気がする。

 見つかっても食べられないからといって、料理を頼めるとは限らないもんね。


 おいらはイスからぴょんと飛び降りる。

 おいらは人に見つからないように食堂から抜け出して、もう一度相談箱のところに向かった。


 ◇ ◆ ◇


 相談箱に辿りついた。


 おいらは相談書を一枚取り、おなかの袋からペンを取り出して相談書に質問を書いていく。


<相談書>

「せいなるけものはしょくどうでりょうりをたべられますか?(ぬすっと)」


 うん。これでおいらが食堂で料理を食べられるか返事が来るはずだ。


 おいらは相談書を相談箱に入れる。


 おし。おいらは相談箱にむかって頷いた。


 おいらは相談箱を2回なでた。


 ◇ ◆ ◇


 食べ物を手に入れられなかったので、おいらはもう一度中庭に向かう。

 まだ中庭に入ってきた人たちはいるのだろうか。


 こっそりと中庭を覗く。


 おいらのリンゴの木の回りには誰もいない。


 むふー。


 これはチャンスだ。


 おいらはととととととと、と足早にリンゴの木に近づく。

 そのままリンゴの木の回りをととととと2周してみた。


 おし!

 だれもいない!


 おいらはよじよじと木に登る。

 やはりリンゴはなっていない。


 おいらはまだリンゴが食べたい。

 リンゴの木の枝をトントンと叩く。


 おいらの手がきらきらと光り、リンゴの木にその光が注がれ、リンゴがなっていく。


 むっふー!

 むっふー!


 いいよ、いいよ!


 そのままおいしくなーれ!

 大きくなーれ!


 おいらはシッポをブンブン振りながら、リンゴの木に光を注ぎ続ける。

 きらきらと光が注がれ、リンゴが大きくなっていく。

 色も赤くなってきた。


 おいしそう。


 おいらの手から光が止まった。

 おいらはリンゴをもぐとおなかの袋にしまう。


 これは後で食べる分!


 おいらはリンゴをとれたことに満足して、よじよじとリンゴの木から下りていく。


 中庭から建物の中に入り、てくてくと歩いていると小さな子供達が駆けて行くのが見えた。


「こら、神殿の中は走ったらダメですよ! 歩きなさい!」

「はーい、ごめんなさい!」

「だから、走らない!」


 途中で大人から注意されて、早歩きになった。

 あっ、そうか、あの子供達は昨日の部屋に行くんだな。


 おいらもまた行ってみよう!

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