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ぬすっと物語17 鑑定

 おいらは一旦卵のある広間に帰ってみた。


 ちゃりん。ちゃりーん。

 おいらの卵にお金が投げられている。


 そして、手を握りしめて祈っている人からは、思いがかすかに卵を通しておいらに流れ込んでくる。

 うん、なんかほんのりとおいらが元気になった気がする。


 あの強烈な光ほど、おいらの中には思いは流れ込んでこない。

 ゴーレムアイとか、あの光はやっぱりおかしかったんだ。


 おいらが遠くから卵を眺めていると、昨日、卵を取り囲んでいた人たちがまた現れた。

 今度はヒゲが長いおじいさんが増えている。


 何しに来た?


 おいらはじーっと卵を取り囲んでいる人たちを見る。

 昨日に比べて、今日は話している声が小さい。

 近づかないと聞こえないので、おいらはそろりそろりと近づいてみる。


 これ以上近づくとお金を踏んでしまうから、ここで話しを効いてみよう。

 ここからなら、耳に手を当てれば聞こえるぞ。


「ガゼル老師、聖なる獣の卵の鑑定をお願いします」

「老師の1番弟子は、空の卵という間違った鑑定をされたのです」

「私の鑑定は間違っていません。間違いなくこれは空の卵なのです」

「まだいうのか! 卵が割れていないのに、空の卵の訳が無いだろう!」

「声が大きいです。もう少し声を抑えてください」

「いえ、今もまた私は鑑定をしましたが、空の卵とでます」

「ガゼル老師、老師の鑑定ではどう出るのでしょう? 老師以上の鑑定ができる方は、この街、いえ、この国にもいません」


 ふむふむ。

 あのヒゲが長いおじいさんがガゼル老師みたいだ。

 ちょっと額に汗をかいているが調子が悪いのかな。


「わしの鑑定でも、空の卵と出る。これは空の卵で間違いない」

「そ、そんな!?」

「それは本当なのですか?」

「うむ、ただ、空の卵以外にも、鑑定の結果が出ている」

「他の鑑定結果? ……それは?」

「……」

「老師、なんなのですか?」

「ぬすっとの住み家」

「は?」

「空の卵(ぬすっとの住み家)と出るのじゃ」

「ぬすっとのすみか? 住み家ですか? それはいったいどういう」

「わからぬ。わしの鑑定結果ではそう出るだけなのじゃ」


 ぬすっとの住み家!

 おいらの家だから当然だ。

 ようやく、厨房の太い女の人以外においらの名前を言ってくれる人が現れた!


 おいらはこの感激を残しておきたい。

 おなかの袋の中からノートとペンを取り出して、ヒゲが長いおじいさんの名前はガゼルとメモする。

 ついでにコメントもメモしておこう。


 →みどころがあるヒゲ長。


 うんうん。これだけ書いておけば、ヒゲ長を忘れることはない。

 おいらはノートをおなかの袋にしまう。


 あれ、いつのまにか、ヒゲ長たちが卵の側から離れて行ってる。

 まぁ、いいか。


 そうだ、ゴーレムアイは全てを見通す。

 価値もわかるはずだから、鑑定ってのと同じような効果があるかもしれない。


 おいらもおいらの卵を見てみよう。


 ゴーレムアイ発動!


<鑑定結果:聖なる獣の卵→空の卵(ぬすっとの住み家)>


<卵の主のぬすっとは外出中。ぬすっと以外は卵の中に入ることは出来ない>


<「ぬすっと」とは、訪問者用の厨房の料理長ムギハト(女)が、たまたま呟いたぬすっとという言葉を聞いた聖なる獣が、自分の事かと勘違いし、自らのことを「ぬすっと」と認識したために世界に定着した>


<聖なる獣の卵(空の卵)は壊れない限り、人々の祈りや思いを力に変えてぬすっとに伝える世界の器である>


<ゴーレムと呼ばれる銀色のロボットにより、膨大な魔力が注がれたため、ゴーレムと同じメタルボディになった>


<残念な事に、卵にはゴーレムとのパスが繋がってしまっている>


<ゴーレムとパスが繋がったために卵なのに破壊不可となってしまった>


<ぬすっとの特殊スキル【つながる扉】以外では、卵の内部と外部を行き来することができない>


<聖なる獣の卵をいつもきれいに掃除しているのはシスターエレメア>


<シスターエレメアにはぬすっとが優しいいい人と認識したこと、日々の掃除で聖なる獣の卵に一定以上の魔力と祈りが注がれていたことなど相まって聖なる獣の卵の加護が与えられている>


<卵の……


 ご、ゴーレムアイストップ!


 な、なんかたくさん情報が出てきた。

 鑑定ってこんなにたくさんの情報が出てくるの?


 ずらずらと出てきたから、最初の2行くらいしかわからなかった。

 止めなかったら、いつまで続いたんだろ。


 試してみる?

 いや、いいや。別に知らなくてもいいことを知っても仕方ないしね。


 おいらは卵が無事なことを確認できたので、安心して広場を離れる事にした。

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