ぬすっと物語11 お金の行方
おいらは廊下をてくてく歩く。
すると前の方から何人かが連なって歩いてくる。
木の板に何かを載せている。
うーん、あれってお金? お金だよね?
木の板にお金を一杯のせている。
あれってもしかして、もしかしなくてもおいらの卵に向かって投げられていたお金?
あのお金はどこに持っていくの?
おいらは気になってお金を持って歩いている人の後ろをついていくことにした。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
おいらがこっそりとお金を持って歩いている人たちの後ろをついていくと、立派な扉の前に来た。
なんだ、この扉。
ちょっと他の扉に比べて豪華だ。
扉の前でベルを鳴らすと、扉が内側から開けられた。
お金を持った人たちが中に入っていく。
扉が閉まる前においらも慌てて中に入った。
部屋の中央に置かれた大きな机の向こう側に座っている太った男の人が、お金を持った人たちに声をかけた。
「ご苦労様です。今日の供物はどれほど集まりましたか?」
するとお金を持った人たちが、部屋の中にいた人たちにお金を載せた木の板を渡した。
「司祭様、こちらが本日の聖なる獣の卵に捧げられた供物です」
太った男の人は、によによと笑う。
その笑顔は、ちょっと気味が悪い……。
「おぉ、今日はいつもより少し多いくらいではないですか」
「はい。聖なる獣の卵が銀色になったことで、それを見に来る人たちで普段よりも人が多かったです」
そうか、おいらの卵を見に来た人は、いつもより多かったのか。
おいらは、卵の周りにいた人たちを思い出し、うんうんと頷く。
「そうですか、聖なる獣の卵に捧げられる供物は、この神殿を支えるための大事な資金ですからね」
によによと笑いながら、太った男の人は、お金を持ってきた人たちを労い、退室を促した。
お金を持ってきた人たちが、部屋から出ると、扉がそっと閉められた。
部屋の中から、閂がかけられ、外からは扉が開かないようにされた。
太った男の人は、山積みになったお金を分けるように、部屋の中にいる人に指示する。
「ぐふふふ、今日も多くのお金が集まりましたね」
「でも、司祭様。銀色になった聖なる獣の卵を鑑定した結果が、空の卵と出たらしいですよ。卵はどうなってしまったのでしょうか?」
「空の卵でも何でもかまいませんよ。大切なのは、お金を集められることなのですから。これまで通り、聖なる獣の卵として祀っておけば良いだけの話しです」
「そんなものなのでしょうか?」
「そんなものです。それでは、お金は金庫にしまっておきましょうか」
なんか、この太った男の人、いやな感じだ。
おいらは顔をしかめて、太った男の人を睨んだ。
太った男の人は、部屋の奥に入っていき、その後ろを、分けたお金を持って何人かがついていった。
おいらもついていく。
太った男の人が、黒い頑丈そうな扉の前で、何かを呟き、鍵を扉に挿してまわすことで扉が開いた。
お金を中に入れるみたいだ。あれが金庫ってやつなのだろう。
お金を中に入れ終わると扉は閉められた。
あれ、でも、小さな袋がまだ残ってる。
あの小さな袋はどうするんだろう?
「司祭様。それではこれは司祭様に」
「えぇ、何かとお金が入り用なので困ったものですよ」
太った男の人は、受け取った小さな袋をふところに入れた。
!?
どういうこと!?
あれは、おいらのお金なのに!
うぬぬと思いながら、おいらは太った男の人を睨む。
その後もしばらく、太った男の人を見ていたけれど、ふところに入れたお金はそのままだ。
うぬぬ。
おいらのお金をどうする気なのだろう。
太った男の人が一人だけになって、どこかに行く。
おいらもその後を付いていく。
ついていった部屋には、本棚がたくさんあり、本が一杯あった。
太った男の人が本の一冊に手をかけ引くと、本棚の一つがすーっと動き出した。
!?
なんだ、それ!
本棚の後ろには扉がある。
おいらが驚いていると、太った男の人が扉を開けて中に入っていった。
おいらも慌てて、扉の中に駆け込んだ。
「ぐふふ。今日もバカな者達からのお金で私のふところが潤いました。聖なる獣の卵様様ですね」
部屋の中にはお金が一杯ある。
金色や銀色のお金ばっかりだ。おいらは呆然と部屋の中のお金を見渡した。
「あんな訳のわからない、なんの卵かわからないものをありがたがる気持ちは理解できません」
太った男は、部屋の中に積まれたお金を見て、にやにやすると部屋の外に出ていった。
静かに扉が閉められると、部屋の中が真っ暗になった。
暗い……。
真っ暗な部屋でおいらはぽつんと立っている。
どうすればいい?
全てを見通すゴーレムアイなら、どうにかなる?
ゴーレムアイを使ってみた。
すると、真っ暗な部屋でも、何の問題もなく見えるようになった。
ゴーレムアイ、すごい!




