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㉓
「この前は大変なことになってしまった」
バイトの休憩中に、俺はため息をつく。
女の子の手料理という天国から、一気に地獄に突き落とされてしまった。
「はー」
今日は帰るのが怖い。
俺は、とりあえずスマホを家に置いてきてしまった。
アイと、顔を合わせるのがなんだか怖かった。
「おれって本当にヘタレだ」
そして、自己嫌悪が強くなった。
※
「よし、バイト終わったー」
時刻は午後三時。
そのまま、家に帰るのも少しもったいない時間だ。
そんなことを考えていると、後ろから武田に呼び止められた。
「ねえ、中村! このまえの埋め合わせに、今日少し付き合ってよ」
たしかに、昨日はアイとの修羅場のせいで、大変なことになってしまったしな。
「うん、いいよ」
どうせ、駅前をブラブラするくらいだろうと思って、俺は簡単に引き受けてしまった。
この選択が、俺の人生を変えてしまうものなのかも知らずに……。




