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「くそ、大変なめにあったぜ」
おれはそう言いながら夜道を歩いていた。
教授は、契約書の言うことは絶対とばかりに、おれとアイの同居生活を認めさせた。
そして、アイは……。
「ふつつか者ですが、末永くよろしくお願い致します」
こんな感じだ。
「あー緊張しましたね」
「うそつけ」
「本当ですよ。だって、好きな人を親に紹介するわけですから……」
そう言って、アイは笑う。
「先輩? かくごはできましたか?」
「何のかくごだよ」
「わたしと末永くいるかくごですよ」
「バカ言うな」
その時、携帯が鳴った。
でも、おれはそれをすぐには確認しなかった。
だって、確認してしまえば、アイの顔をみることはできないのだから。
今日は、もう少しだけ彼女と一緒にいたかった。
「ちなみに、わたしはいつでもオーケーですよ」
彼女の顔をずっとみていたかった。
でも、はずかしくて、それはできなかった……。




