⑰
「ハハハハ、それはすまなかったね」
教授は笑いながら、俺に詫びた。
絶対に悪いと思っていないが……。
今、俺たちは、空港内のカフェに来ている。
アイが「ああ、初の両家顔合わせですね」などと意味不明な供述をしていたが、それは無視だ。そもそも、俺の家族は来ていないし……。
「でも、うまくいっているようでなによりだよ。君になら、アイを任せておいてもいいね」
えっと、目の前の教授が何を言っているのかよくわからない件について。
「はい、お父さん。私も先輩ともっと一緒にいたいです」
「だろう。いやー、君を選んだ僕の目に狂いはなかったようだ」
「もう、お父さんったら~」
「ハハハハハ」
まるで、海外のホームドラマを見ているようだ。
なあ、キャサリン(錯乱)。
話がどんどん先にいっている。
当事者の俺をおいて……。
「えっと……。教授……? もしかして、俺のバイトってまだ終わらないんですか?」
「当り前じゃないか。きみとの契約書では、一年と定めたはずだよ。ちゃんと、説明したじゃないか。ふたりで、そばを食べながらね」
絶対、説明を受けていない気がする。
完全にはめられた。
「もう、私は永久就職だっていいですよー。先輩」
ワロタ、ワロタ、ワロタ……。
「こんなのってないよ。あんまりだよ」
俺は絶望した。
「ああ、そうか。『君みたいな、どこの馬の骨ともわからない奴に、アイは渡せん』みたいなことを期待していたんだね。なら、最初からやりなおそうか」
「私も『やめて、私のために争わないで』って、やりたいです」
親子ふたりでハイテンションに物語が進んでいく。
「もうやだ、この世界」
再び、空港に俺の悲鳴が鳴り響いた。




