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「ハハハハ、それはすまなかったね」

 教授は笑いながら、俺に詫びた。

 絶対に悪いと思っていないが……。


 今、俺たちは、空港内のカフェに来ている。

 アイが「ああ、初の両家顔合わせですね」などと意味不明な供述をしていたが、それは無視だ。そもそも、俺の家族は来ていないし……。


「でも、うまくいっているようでなによりだよ。君になら、アイを任せておいてもいいね」

 えっと、目の前の教授が何を言っているのかよくわからない件について。

「はい、お父さん。私も先輩ともっと一緒にいたいです」

「だろう。いやー、君を選んだ僕の目に狂いはなかったようだ」

「もう、お父さんったら~」

「ハハハハハ」


 まるで、海外のホームドラマを見ているようだ。

 なあ、キャサリン(錯乱)。


 話がどんどん先にいっている。

 当事者の俺をおいて……。


「えっと……。教授……? もしかして、俺のバイトってまだ終わらないんですか?」

「当り前じゃないか。きみとの契約書では、一年と定めたはずだよ。ちゃんと、説明したじゃないか。ふたりで、そばを食べながらね」

 絶対、説明を受けていない気がする。

 完全にはめられた。


「もう、私は永久就職だっていいですよー。先輩」

 ワロタ、ワロタ、ワロタ……。

 

「こんなのってないよ。あんまりだよ」

 俺は絶望した。


「ああ、そうか。『君みたいな、どこの馬の骨ともわからない奴に、アイは渡せん』みたいなことを期待していたんだね。なら、最初からやりなおそうか」

「私も『やめて、私のために争わないで』って、やりたいです」

 親子ふたりでハイテンションに物語が進んでいく。


「もうやだ、この世界」

 再び、空港に俺の悲鳴が鳴り響いた。

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