⑭
アイは、少しだけ緊張した顔をしていた。
何をする気だ。
俺も、少しだけ緊張していく。
「先輩。言いにくいんですけど……」
アイの頬は、赤く染まっている。
まさか、二度目の告白か?!
俺は、さらにこわばった顔になる。
もし、アイが再び告白してくれたら、俺は断ることができるのか?
そんな痛いことを考えていた。
「あの、ですね。その……」
アイは、いつもの本性を隠して、しおらしくしている。
そのギャップを見て、俺はドキドキする。
これは告白に違いない。
俺は、確信した。
どうする、俺。
相手は、AI。
冷静になれ。
どんなにかわいくて、元気いっぱいで、話が合っても、相手は人外だ。
俺は、どんどん混乱していく。
「ふぅー」
アイは、大きく息を吸った。
ついに、来るぞ。
俺は覚悟を固めた。
「わたしと……」
やっぱりだ。
「金魚すくいしてください」
「ちょっと、考えさせて……。えっ?」
「一度でいいから、金魚すくいを見てみたかったんですよ。お願いします」
ああ、お願いって金魚すくいのことなんだね。
そっか。
俺、勘違いしていたよ。
「わかった。いこうか」
俺は、気の抜けた声で、そう言った。
※
金魚すくいの屋台に向かう間、先輩はずっと黙ったままだった。
顔が赤くなっていたのはわかっている。
やっぱり、告白だと思われていたんだな。
わざと、勘違いさせるような、言い方をしたんだけど……。
ひとごみのせいで、先輩に声が届かないことを確認して、わたしはつぶやく。
「少し考えたら、オッケーしてくれんですか? 先輩」
自分の体が少しずつ熱くなっていくことを実感した。




