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アナザーレイド  作者: 好日日和
死の運命編
9/62

お風呂場にて

「メイ〜、お父さんとユウキがお風呂出たから、次に入りなさい」



 シロマちゃんから一通りの説明を聞くと、丁度お母さんからまた、お風呂催促の声がする。


「わかったー!今いくね!…ということでちょっとお風呂入ってくるので、シロマちゃんは部屋で待っててね」


「かしこまりました」



 私は一階に着替えを持って一階へおりる。


 台所には明日のお弁当を準備するお母さんがいる。


 テーブルには、結局一緒にお風呂へ入ったのだろう、お父さんとユウキが座ってお茶を飲んでいた。



「メイ、また調べものしてたの?仕事熱心なのはいいけど、無理しちゃダメよ」


 お母さんは優しく私に言う。


「姉ちゃん、またマンガ読んでただけだろ?」


「なんだ、メイもユウキもマンガが本当に好きだなぁ!」


「な、俺は別にそんな読んでねぇよ!」


 お父さんが揶揄うように言い、弟はちょっとムキになって反論している。


「まぁマンガ読んでた、に近いかな?私もお風呂入ろうっと」



 家族の顔を見て思わず顔が綻ぶ。


 あぁ、いつもどおりだ。お母さんは優しいし、お父さんは元気で、弟は生意気だけどかわいい。


 私の大切な家族。


 私が守ると決めた家族だ。



(皆、私頑張ってこの日常を守るからね!!)

 そう心の中で呟いた。



 ーーーー


 頭と身体を洗ってから、髪を束ねて少しぬるめのお風呂に浸かる。


 お風呂は乾燥肌の母のために白い入浴剤が入っている。



 足からゆっくり湯に入り、胸の辺りまでじんわりした温かさを感じる。



 …はぁぁ、生き返るぅ…



 もう少し沈んで、肩まで浸かってホゥっと息を吐く。



 やっぱりお風呂はいいなぁ…

 こう、ホッとするというか、しあわせ〜って感じがするというか…


 しばらく目を閉じて、目まぐるしかった今までを振り返る。


 事故して、死にかけて、どうしても死にたくなくて、時間が戻って、シロマちゃんに出会って…


「ホント、マンガの世界みたい」

 思わずそう口から溢れた。


 現実世界からかけ離れ過ぎてて、なんだか笑いがこみ上げてくる。


 ふふ、私が世界の運命を背負っているなんて、誰が考えるだろうか。


 私自身もこうして家族と会話したり、お風呂に入ったりしていると、そんな夢物語みたいなことが私の空想じゃないかとすら思えてくる。



 ぼんやりとそんな事を考えていると




 ザバッ!足側のお湯の中から何か出てきた!!

「マンガの世界ではございませんよメイ様」


「きゃあぁぁあー!!」


 思わず叫ぶ!




「メイどうした?!大丈夫か!?」


「メイ?!何かあったの!?」


 すぐに両親の心配する声がした。



「だ、大丈夫。ちょっと虫がいて、もう外に出てったから…」


 お父さん達に説明しながら、両手でシロマちゃんを湯船に沈める。


「もう大丈夫だよ!心配かけてごめんね」


「そう…ならいいんだけど…」

「ホント姉ちゃんは人騒がせだな」


 遠くで弟がぼやいている。



 …


 びっくりしたぁ…


「ちょっとシロマちゃん!急に出てこないでよ!びっくりするじゃない」


 声を潜めて、突然お風呂から浮上してきたシロマちゃんに注意する。


「失礼致しましたメイ様。一つお伝えし忘れていたことがありましたので」


「そんな急ぎで?もう…ゆっくりお風呂タイムにしたかったのに…」


 夢心地のお風呂タイムが台無しだ。


 フワフワの毛がお湯に濡れて、毛筆みたいになっているシロマちゃんは、水滴をポタポタさせながら話を続ける。


「はい、勝利者の特典について説明しておりませんでした」


「勝利者の…特典?」


「アナザーレイドで、最後の一人まで勝ち残りますと、創造主様方のご厚意により『なんでも好きな願いを一つ叶える』という権利が得られます」


「え?なんでも好きな願いを叶えてくれるの?」


「はい、各世界の代表者達にとっては過酷な戦いになると考えている創造主様方は、勝ち残った一人にどんな願いでも叶えられる権利を特典として提示致しました。一生使いきれない程の金品や、一つの星の支配者、多世界への転生など、なんでも可能だそうです」



 なんでも好きな願いを叶えてもらえる権利か…



 私はこの世界を守れたらいいと思っていたけど、そんな特典があるならそれを目当てにしている代表者はきっといるだろう。



 もし勝ち残れたら何がいいかな。


 もしも一つだけ、なんでも願いが叶うなら…


 そしたら私は…

漸く序章が終わろうとしています。

皆さんは一つだけ願いが叶うなら、何を願いますか?

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