私のスキル その2
他の2つのスキルについても確認する。
「他の2つのスキルについても教えてくれる?」
「はい、時間逆行は
1.メイ様の生命活動が停止した場合
2.一日につき3回まで時間逆行と念じる
以上のことによりスキルが発動し、記録地点まで過去に戻ることができます」
死んじゃった場合と1日3回までは自分の意思で過去に戻ることができるらしい。
…もう死ぬような痛みは味わいたくないんだけど…
あれ?でもこれって…
「これって私はアナザーレイドの「生命活動の停止」っていう敗北条件に当てはまらなくなるんじゃない?」
「はい、確かに敗北条件1.生命活動の停止には当てはまらなくなります。正確には敗北はするが、その時点で過去に戻るため敗北がなかったことになります」
ということは私が命の危険に遭っても負けない!?
「ですが、戦意の喪失による敗北が認められるケースも考えられます。生命活動を停止させるほどのダメージを受ければ戦意がなくなることも十分に考えられます」
…確かにシロマちゃんの言う通りだ。
ものすごい痛い思いをしたら、たとえ過去に戻ったとしても戦えないかもしれない。
その時点で私は負けてしまう。
「そうだよね…。いくら身体を強化しても、私の知らないスキルを使って攻撃されたら死ぬかもしれないし…」
「メイ様、時間逆行の発動条件1.生命活動の停止については、あくまでもセーフティーネットとして認識されてはいかかですか?」
「セーフティーネット?」
「はい、つまり生命活動を停止させられるような事態が起こっても、過去に戻って対策を立てられる。そして未来を変えることができる、と。そう考えることができれば戦意は喪失せずに済みませんか?」
確かに前向きに捉えると、
死ぬようなダメージを受ける→時間逆行で過去に戻る→対策を練る→勝利する
そう考えれば戦意の喪失には当たらないのかな。
でも… ものすごく痛かったり辛かったら、多分無理な気がする…
でも負けられない戦いでもあるので、できる限りシロマちゃんの言う通りにしよう。
私にはもう少し前向きな思考が必要そうだ。
「あ、ちなみに過去に戻ったときの記録地点って?」
「時間逆行における記録地点とは、メイ様が紙や電子媒体において『記録する』意思を持って記入を完了した時に、記録地点として認識されます。
「つまり、時間逆行が発動した場合、私が書いている日記の一番新しい記事のところに戻ってくるってこと?」
「はい、その認識で間違いございません」
だから私は、事故にあって時間逆行した先は、一週間前の6月13日の夜ということになったのか。
よかった…日頃つけている日記がこんな形で役に立つなんて思いもしなかった。
じゃあ定期的に日記をつけていけば、何かあってもその地点に戻ることができるということだ。
うん、こまめにつけよう。
あ、でもアナザーレイドで殺される直前に日記を書いていていたら、
日記を書く→直後殺される→時間逆行で直近の日記の地点に戻る→戻った直後に殺される
なんてこともあるわけだ。
うわぁ、考えたくもない。そんな地獄。
ある程度、その先の未来を変えられるくらい時間の余裕を持たないとね。
じゃあ1〜2週間ずつ日記をつけていこうかな。一ヶ月単位だと長すぎるし。
「シロマちゃん、もう一つの記憶保持っていうのはどんなスキルなの?」
「基本的には時間逆行した際に記憶まで巻き戻しさせないためのスキルです。ただ、日常生活においても発動することはできます。メイ様が忘れたくないと思った出来事や強く印象に残った場面は、その時の気持ちや感じた五感まで記憶を保持することができます」
「逆に言えば忘れたいことは忘れられないということ?」
「はい、そうなります。記憶の保持に特化しておりますので、記憶消去や操作まではできません。ちなみにそれらが可能になるスキルもございます」
「そうなの!?」
気持ちの良いことや嬉しいことがありありと思い出せることはメリットだ。
でも、痛いことや強烈に印象に残る悪い場面に出くわした時、忘れられないということはデメリットである。
PTSD(心的外傷後ストレス障害)、つまりトラウマになってしまう可能性がある。
トラウマを植え付けられたら、戦意の喪失に繋がり敗北になってしまうだろう。
一刻も早く記憶を操作できるスキルを手に入れなければ…!
でも、忘れないということも十分なメリットはある。
知識や経験の蓄積。これは大きいと思う。
一つは、私が持つ時間逆行は、何度も繰り返し過去をやり直せるスキルだ。その中で得た知識や経験、同じ間違いを繰り返さないためには必要なことだと思う。
もう一つは、嬉しい感情を残しておけるということ。
嬉しかったことを思い出としてではなく、その時の感情のままに記憶できるなら、辛いことがあった時に心の助けになるんじゃないかと思う。
記憶保持のスキルを有してから覚えているのは、家族の声にとても安心感を感じたこと。
死にそうだったのに、生きていられたこと。
家族や大切な人たちのために頑張ろうと思ったこと。
これらは、感じた時の熱量を失うことなく、その時の感情を蘇らせることができる。
…うん。
生きていられたことを感謝して、自分の大切な人を守るために、私はアナザーレイドを勝ち抜くぞ。
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