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アナザーレイド  作者: 好日日和
完結編
62/62

見えない敵

戻りました

カイナ達とケンオウセイを救ってから数か月。次のアナザーレイドは中々開始されなかった。


ただ、私自身はすごく大変な事態に巻き込まれていた。


いや、私だけではなく、この地球の人全てが大変な状況に陥ってしまった。


原因は感染症。


とある国で発症した感染症が瞬く間に世界中に広がった。もちろん日本でも感染が拡大した。


この感染症の怖いところは、症状がハッキリせず、風邪かと思っていたら既に感染してしまっている点だった。そして感染し、発症した人の1割くらいが死んでしまう恐ろしい病気だった。


私が働く総合病院にも、毎日毎日風邪のような症状、味覚や嗅覚の異常、脳梗塞や心筋梗塞など、多様な症状の患者が溢れかえり、検査をしたら未知の感染症であることが多数だった。


世界は混乱を極めた。


感染拡大を防ぐため、各国が人の移動を禁じたり店の営業をストップさせた。経済は停滞し、失業者が爆発的に増加した。


それでも感染は拡大した。


もちろん私も感染した。どんなに感染対策をしたって、いつの間にか身体にウイルスが侵入してしまっていた。


しかし「成分分析」と「抗体生成」のおかげで一瞬にして未知のウイルスは身体内からいなくなった。


私自身はそれで助かった。けれど私の血を使った抗体の複製や成分分析の結果を世界に役立てることは出来なかった。スキルでつくられた抗体は、自分の外に出た瞬間に効力を失い、成分分析の結果は分からないことが多かったため「■■■」と示された。


日常の看護をする中で、患者に触れた時に「他体再生」で悪くなったところをこっそり治してあげた。地道な作業ではあるが、目の前にいる人は助けてあげられた。


でも……


目の前にいない人は助けてあげられない。私の手が届く範囲なんてすごく狭い。


一人を助けることができても、見えないところで何人も死ぬ。


私は無力だった。



「無力」は私から色々なものを奪った。

大切な人、大切な時間、そして生きる希望も。


やっても無駄という気持ちは、誰かを助ける気持ちを蝕んだ。「きっとこの人を助けても、他の人は死んでいく」


仄暗い気持ちは徐々に心を埋め尽くし、私は「無力」から「無気力」となり「無心」に近い状態になってしまった。


今後、地球がアナザーレイドより危機に瀕しても他の理由で人々が滅亡するなら…

大変な思いをしてまで、助けられない命があるのなら…


「私、どうしたらいいの」

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