帰還
すみません。コロナのせいで全然書いている暇がありませんでした。
これからも不定期連載となりますが、どうぞ最後までメイの活躍を見てくださると嬉しいです。
眩い光に包まれて、目の前が真っ白になる。
光が和らいで辺りの状況が分かるようになると、もうそこは自分の部屋だった。
「私の部屋か…。じゃあもう16世界は…」
どうなったのか分からない。
あの時、カイナ達はただ終わりを待つよりも、たった一つの望みをかけてレイドバトルの敗北を選んだ。
それが良かったのか悪かったのかは、もう誰にも分からない。メディテイカム様を除いては。
「ねぇシロマちゃん、どうして創造主様達は互いの世界の管理権限をアナザーレイドの賞品にしたのかな?」
「何故なんでしょうか、私も存じあげません」
そうだよね、公平さを保つ役割のシロマちゃんが知っているはずがない。
「勝っても負けても、どっちかの世界は何かしら変わっちゃうのか…。私には何も出来ないのかな」
「そんな事はありませんよ、メイ様。勝ち続ければ、第12世界は守られます」
「それは…そうなんだけど、やっぱり相手側にも家族なり仲間なりいる訳で、それを世界ごと壊してしまう可能性があるなんて、私には中々受け入れられないよ」
人の命を守る仕事をしながら、一方では誰かの命を奪っているかもしれない。そう思うと、胸の奥がズンと重くなる感じがする。
「メイ様はご家族様やご友人様を守りたかったのではないですか?対戦相手の創造主様に今の世界の安定を願いますか?」
いや、そんな不確かなことは出来ない。それならまだ、この世界を創ってきた現創造主様に任せるほうがマシなのだろう。
「そうだね。とりあえず私が出来るのはシロマちゃんの言う通り、この世界を守ることだね」
私は神様じゃないから、自分の手の届く範囲でしか誰かを助けることは出来ない。
きっとこの重い気持ちは、ずっと背負っていかないといけない物なんだと思う。
「はぁぁ、どっと疲れちゃったなぁ」
そう言って自分のベッドに寝転がった。
「メイー?帰ってきてるの?ご飯できてるわよ」
一階からお母さんの声がした。丁度、晩ご飯の時間だったようだ。
「はーい、今行くねー」
多分こっちの世界では大して時間は進んでいないのだろう。でも私は第16世界を三回やり直したせいで、すごく久しぶりにお母さんのご飯を食べる気分だ。
疲れた身体を起こして、私は家族のいる居間へ向かった。
ーーー
その夜。
『メイ君、今回も無事に勝ち進んでくれたようでありがたいよ』
創造主様、か…。
『なんだいそのガッカリした様子は。せっかく良いお知らせを伝えにきたのに』
「本当に良いお知らせですか?またすぐにレイドバトルに行けとかじゃ、良いお知らせになりませんよ」
こんなに疲れることなんだから、もう少し間隔を空けてもらいたいのが正直なところだ。
『レイドバトル自体は全知技会に運営を任せているから、僕の一存ではどうにもならないよ』
「そうですか。で、良いお知らせってなんですか?」
『不貞腐れているのかい?良いお知らせは【第16世界について】だよ』
「え!?」
『あの世界の管理権限を得たからね。どうしているか気にしているかと思って。知りたいかい?』
「し、知りたいです!!」
でも、もうあの世界は無くして新しい世界にしたとかだったらどうしよう…。
『ハハハ、それならわざわざメイ君に知らせないよ。君のやる気が失せてしまっては意味がないからね』
「じゃああの世界をどうしたんですか?」
『まぁ少しばかり介入はしたけど、基本的には何も変えていないよ。特に破壊した星や生命体もないし、今すぐどうにかしないといけない事案もなかったしね』
「じゃ、じゃあカイナ達は…?」
『もちろんそのままさ。時間も記憶も弄ってないから、君がケンオウセイに行ったことも、隕石衝突回避に関わったことも変えていないよ』
「ホントですか…!?よかったぁ!」
もう二度と会うことはないかもしれないけど、それでも彼女達が生きていてくれているのは嬉しいことだ。
そしてその世界が無くならなかったことも。
『ね、良いお知らせだったでしょ?』
「そうですけど、何故今回はバトル後の世界について教えてくれたのですか?」
『さっきも言ったとおり、君のやる気が下がってしまっては困るからね。これからも頑張って戦ってくれよ』
「出来る限りそうしますので、メディテイカム様も出来る限り相手の世界はそのまま残してあげて下さい」
『約束はできないなぁ。じゃあね』
悪戯っぽい笑顔を浮かべて消えていく創造主様。
「頑張ってそうしてください!」
私はそう反論した。これからのことは何も分からないけど、でもカイナ達が生きているのは私にとってとても良い知らせだった。




