終わりと別れ
「私、第16世界代表086-カイナ1136号は第12世界春田メイに敗北したことを認めます」
カイナは、そう私に言った。
「カイナ、本当にこれで良かったの?ケンオウセイは守れた訳だし、私と戦ってこの世界を維持していくことも出来たかもしれないんだよ?」
当初の約束通り、カイナはレイドバトルから降りてくれた。つまり、それはこの世界の管理権限をウチの創造主に渡すということだ。
「メイさん、貴方には多くのことを教えられただけでなく、大切なものを守ってくださいました。この先にどんな事があろうとも、私達はメイさんのことを忘れません」
「カイナ…」
すると、どこからともなくいつもの審判員が飛んできた。
「お待たせしましたー!ってもう敗北宣言出てます??
あちゃーバトル終わっちゃったよ…。まぁいいか、勝者『第12世界春田メイ』」
青い円錐形の審判員はそう宣言した。
カイナが選んだことだ。もう私は何も言えない。
ただ、メディテイカム様に会ったときには、この世界をこのまま保存してもらうようお願いしよう。
「さ、春田メイ様。勝利しました貴方には、相手のスキルを一つ選んで自身のものにする権利があります。どうなさいますか?」
あ、そうか。カイナが持ってるスキルも無くなっちゃうのか…
けど、どのみち選ばなくてもスキルは無くなるのだろう。ならば、カイナの意思を私は継いでいきたい。
「生体錬成にします」
カイナが植物を創り出してきたスキルだ。なんとなく、このスキルが彼女の生きた証のように思えた。
「かしこまりました。では『生体錬成』のスキルを春田メイ様に付与致します」
こうして、私に新しく「生体錬成」のスキルがついた。
ーーー
そうこうしている間に、管理権限の移譲も終了したらしい。
ただ、前回の時と違って、地震が起きたり、何か特別な変化が起こらないため、あまり実感が湧かない。
「これでついにこの世界が、違ったものになっちゃうかもしれないけど…」
「メイさん、大丈夫ですよ。もともとは滅びるしかなかった私達が、こうして生きていられるのも幸運なことです。
これで私達が消去されても、それは滅びる運命だっただけで、生き残ることができたら、それは幸運という言葉では表せないくらい、凄いことなのです」
「ごめんね…、ありがとうカイナ」
『じゃあ綺麗に纏まったところで、メイ君には戻ってもらうよ』
どこからか聞こえてくる創造主の声。
「メディテイカム様、どうかこの世界をそのままにしてあげてください」
『メイ君は相変わらずだね。前にも言ったけど、この世界をどうするかは僕の決めることだ。君はアナザーレイドに勝ち続ければいい。そうしたら、君の大切な人達は守られるのだから』
「カイナ達も、もう大切な人なんです」
「欲張りな娘だなぁ。約束は出来ない。さぁ自分の世界に帰ってもらうよ」
そうメディテイカム様が言うと、私の身体が光だした。
これは自世界へ帰る光なのだろう。
「カイナ!私は貴方のことを尊敬している!どんな事があっても、諦めない『心』を持った貴方を!」
「メイさん…。本当にお優しい方ですね…。私達は大丈夫です。きっとまたお会いしましょう!」
「…!
うん!必ず!」
その言葉を最後に、私は光に包まれた。
カイナ編もあと1話で終了です。
いつも有難うございます。




