表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アナザーレイド  作者: 好日日和
VS 第16世界 カイナ編
56/62

目指すもの

「カイナ、私に何を望む。私の身は既に死んでいるようなものだ。其方も知っておろう。かつて人々は争い、大地や空を汚し、自身らで滅びの道を選んだことを」


 どこから聞こえてきているのか分からない、大きな星の声は、そうカイナに問いかけた。


「私はケンオウセイを守りたい、そしていつの日か緑豊かな大地で、多様な生物がその命を繋いでいく様を、私は取り戻したいのです」


「それは不可能だ。人のような高度な知能があるもの達は必ず争い、破滅する。繰り返すことが分かっていて、それでも尚、願うのか」


 カイナは立ち上がり、目に見えない大きな声に返答をした。


「願います。私の使命は『どんな生物も、その生命の連鎖を絶やすことなく、生存していける環境をつくる』こと。争いによって生存出来ない生命がいることは、使命に反するため()()()()()()ます。


 生物は、高度な知能があったとしても感情は制御できません。それは仕方のないことです。ですが、争いを避けることはできます。


 少なくともその力が私にはあると信じています」



「ほう、大した自身だな。よかろう、私を使ってやってみるがいい。して、望みはなんだ」


 ここは私が説明役をかって出た。


「今、このケンオウセイに向かって同じくらいの大きさの星が衝突しようとしています。それを防ぐためには、貴方の強力な魔法が必要です」


「魔法だと?太古に失われた技術に惑星同士の衝突を防ぐことなどできるのか?」


「可能です。今、貴方はカイナによって知能を与えられ想像力を働かせることができます。私もカイナ達も植物達にも一斉に、同じ魔法を使ってもらいます」


 そう、ここで重要なのは知能があるもの達が()()()()()()()使()()こと。それくらいしなければ、同サイズの惑星相手に勝つことはできない。


 大切なのは、同じ想いと同じ魔法だ。



 ーーー


 巨大隕石衝突まであと12時間を切った。


 隕石は空の景色の半分以上を覆っている。


 茶色く歪な表面すら見えるほど、隕石は間近に迫っていた。



 カイナや私によって、人工知能を持つロボットや知能付与された植物達、そしてケンオウセイ自体に、たった一つの魔法を教えた。


 ケンオウセイが砂嵐を止めてくれていることで、皆が外に出られるようになった。


 木や花たちも大型ロボットにより運び出されている。



 ここで、小高い丘から声が発せられる。


「私はカイナ、086-カイナ1136号、数少ない『カイナ』の生き残りです。


 私は諦めかけていました。どうしようもない絶望に打ちひしがれ、半ばこの星と、皆と心中するつもりでいました。


 ですが、今はもう違います。

 私達には同じ魔法があります。

 そして、同じ想いがあります。『感情』という新たな機能に戸惑うものもいるでしょう。


 しかし、今はその『感情』が大切なのです。

 この星を、ケンオウセイを守りたい。

 我らを造り使命を与えた者たちの想いを繋いでいきたい。

 そうした強く、純粋な想いが、あの巨大隕石からこの星を守ることに繋がるのです。


『どんな生物も、その生命の連鎖を絶やすことなく、生存していける環境をつくる』


 私達はその使命を叶えるため、数えきれない程の時間を費やしました。

 今こそ、星を救い、使命を全うする時です!」


 カイナの熱い演説に、誰も声を上げない。

 いや、本当は叫びたいほどの情熱が湧き上がっているが、それ表現する方法がないのだろう。


 ロボット達はじっとカイナを見つめ、植物達はザワザワと葉や花を揺らしている。



 こうしてカイナをリーダーとして、機械と植物と星、そして人が一つに纏まった。



 ーーー


「いきます!」


 カイナがそう叫ぶと、皆一様にして動きを止めた。イメージを固める時間だ。


 私が選んだ魔法は第32世界でも使った『重力魔法』だ。


 ケンオウセイ自体には、自身に向かってくる隕石を押し返すような強いイメージを持ってもらった。


 もともと重力が自分自身に働いているケンオウセイにとっては、さほど難しいことでは無かったようだ。


 一度、反重力の練習中にロボットや植物達は反重力の影響で、宙にふわりと浮かんでしまったことがあった。



 ロボット達と植物達、そして私は隕石自体にケンオウセイと()()する魔法をかけることした。


 単にどちらか一方に反発する力があったとしても、それだけでは力不足だった。


 磁石の同極同士が反発するほうが、その力は強く作用する。


 そして反発するもの同士がより近ければ近いほど、その力が増すことも。


 ロボット達や植物達には、実際に磁石を使って反発するイメージをつけてもらった。


 これなら多分、いや、絶対大丈夫!



「反重力魔法、発動!」


 カイナの号令が響く。


 星を震わせるような、地鳴りが一帯に響く。


 ロボット達は手や作業用のアームなどを隕石に向ける。


 植物達はザワザワと葉や花を揺らす。



 魔法の影響か、とてつもなく大きな力が突然発生した影響か、隕石と大地の間に閃光があちらこちらで走る。


「カイナ!隕石は!?」


「動きは…止まっています!


 ですが、まだ押し返すことはできていません。

 皆、あと少しです!絶対にこの星を守り、皆で()()()のです!」


 そう皆を励ますカイナ。


 それに応えるように、空を駆ける光の数は多くなった。


(((おおおおぉぉぉ!!)))


(((ゴゴゴゴォォ)))


 全員の叫びのような音と大地が鳴り響く音が重なる。




 そして、



 目に見えて隕石が小さくなっていく。


 つまりそれは、



「皆!成功です!隕石が遠ざかっていきます!」



 カイナが歓喜の声で伝えた。

いつも読んで頂きありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ