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アナザーレイド  作者: 好日日和
VS 第16世界 カイナ編
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VS 巨大隕石 3

「ねぇカイナ、炎は見たことある?」


「えぇ、人工知能を持つもの同士で記録の共有をすることができます。その中で、火の成り立ちや映像は確認したことがあります」



「じゃあその火の成り立ちをイメージ…。うーん、頭の中で火の成り立ちの記録を鮮明に再現して。そしてその記録を、手のひらから出るように命令してみて」


 私はカイナがなるべく分かるよう、魔法の使い方を教えてみた。


「え?えぇ。分かりました、やってみます」


 困惑しながらもカイナは動きを止める。数秒後、その手を前に出す。


 すると、大きくはないが燃え上がる炎がカイナの手のひらから現れた。


「熱っつ!何にゃこんなところで火を…


 ってカイナさん!火!火出てるよ火!」


 近くにいたカンちゃんがその熱に驚いて飛び起きた。


「こんなことが出来るなんて…。今までに経験もしたことがありません」


「この世界には思素っていう原子があって、想いを現象に変えてくれるんだよ。私は『魔法』って呼んでる。


 あ、外で呼吸出来たのもこの魔法を上手く使ったから出来たんだ」



「今まで知りませんでした…。こんなことが出来るなんて。過去にも魔法が使えたという生物はいませんでした」



 カイナはとても驚いたようだ。


 それにしても、カイナは人工知能で炎の成り立ちなどは私よりも詳しく理解しているはず。


 イメージだってかなり明確に出来るはずだが、炎はそれほど大きくなかった。それだけ、思素が薄いのか。


 それでも、人工知能ロボットが魔法を使えることがわかったのは大きい。



「カイナのスキルに『知能付与』ってあったよね?それ、生き物には使えないのかな?」


「生物に、ですか?今この星に存在するのは植物だけですので試したことはありません」


「じゃあ試してみようよ!生き物に知能があれば、力を合わせて魔法を使えるかもしれない」


「確かに機械だけでは心許ないですね。試してみましょう」



 そう言ってカイナはまだ背の高くない木の近くへ歩く。


 その木にそっと手を当てると


『知能付与』


 と一声発した。


 するとその木は仄かに光だし、ゆっくり点滅しだした。


 4、5回点滅したところでカイナが


「私の言葉がわかりますか?」


 と木に向かって語りかける。


「分かりますよ、カイナ。いつも私達を大切にしてくれてありがとう」


 と木から声が返ってきた。



 くるりと振り返るカイナ。


「メイさんの言うとおり、生物にも知能付与ができました!」


 カイナがやや興奮したように結果を教えてくれた。


「やったねカイナ!よーし、手当たり次第知能付与して皆でこの星を守ろう!」


 そうして次々と木や花達に知能付与を行うカイナ。


 どの植物も知能付与された途端に、まずカイナにお礼を言った。


 皆、本当に感謝しているんだろうなぁ。



「メイさん、これでこのシェルター全ての植物に知能付与が完了しました」


「いや、まだだよ。もっと大きな味方をつくらなきゃ」


「大きな味方?」


「そう、とても大きな味方だよ。カイナと私とカンちゃんで外に出よう」


「ちょ、ちょっと待って…。どういう…」


 私はカイナの手を繋ぎ、カンちゃんを片手に抱いた。


「さぁカンちゃん出口はどこ?早くしなくちゃ皆お終いだよ」


「わかったわかった。ったく、どこまでも元気なお嬢ちゃんだな」


 呆れたように言うカンちゃんだが、しっかり出口まで案内してくれた。


「ここから先は」


「分かってるよ。ちゃんと魔法で外でも呼吸出来るから」



 エレベーターを上がると、やはり砂が吹き荒れる過酷な世界が容赦なく私を襲う。


 まぁ外に出る前から魔法で対策してるから大丈夫なんだけど。



「メイさん、大きな味方というのは?」


「ほら、足元にいるじゃない。カイナが今立っているところに」


「あっしのことか?確かに存在の意義は大きいが」


「違う違う!カンちゃんじゃなくて…


 この星のことだよ」



「この星…ですか?惑星は様々な要素でつくられていて、一つの物体として活動はしていませんが…」


「ううん、それはカイナの捉え方だと思うよ。ケンオウセイにはケンオウセイが培ってきた歴史があり、それを過去も現在も見守ってきた。カイナ達も昔に存在した生物達も皆、ケンオウセイが意志を持って生み出したと考えたら?風や大地や海は、ケンオウセイの身体の一部と見做してみたら?


 どう?ケンオウセイは()()()()()って考えられない?」


「そう…ですね…。思えるような、分からないような…」


「星も『生まれ』てきて、いつか寿命で『死ぬ』。それは生き物だって、ロボット達だって変わらないよね。どんなモノにも生死があるのは生きていることと同じじゃないかな?」


「どんなモノにも生死がある、ですか。確かにそうですね。私達にだっていつか終わりはあります。生物も星も、生きているんですね。


 やってみます、知能付与」



 カイナは跪くように大地に両手を置いた。


 しかし、木や花のように大地は光らない。


「どうして…。私がまだ星を生命あるものと見做していないから?」


「違うよカイナ!さっきカイナが思ったことは間違いじゃない。だから、諦めないで!」


「うん。


 …私達の星、ケンオウセイよ。私達は自分達を、そして何より貴方を守りたいのです。


 お願い!どうか力を貸して!」




 カイナの想いが砂嵐にかき消される。


 私もカンちゃんも、ただただカイナを見ていた。


「…お願い…」


 呟くように、そう言うカイナ。その声は泣いているかのように聞こえる。




 その時だった。


 砂嵐が止み、大地が眩く光る。


 光はカイナの足元から、波紋のように広がっていく。


 見渡す限りの大地が光った時、地響きのような低く大きな声が空気を揺らした。




「カイナよ。其方の想いは私に伝わった」

いつも読んで頂きありがとうございます。

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