VS 巨大隕石 2
人が持つ知能と感情を、機械がもっていたら、それは『生命』と呼べるのでしょうか
ダメだ…。あれこれ案を出して見たものの、カイナの試算ではどれも有効な手立てとならなかった。
例えば、
「隕石を破壊して、細かい破片はさらに細かくし大気圏で燃え尽きさせる」
→多数の大きな破片に対応できるだけの味方がおらず、取り零した隕石によってケンオウセイは消滅する。
「隕石が衝突する前に魔法で跳ね返す」
→「魔法は想像力を持つものだけが使えるもの。機械が魔法を取得することが難しい」
「隕石の軌道を宇宙空間で逸らす」
→「軌道を逸らすためのエネルギーが圧倒的に足りない。また隕石が大き過ぎるため、ほぼ90度の角度で隕石の軌道を逸らす必要がある(無理に等しい)」
などなど、案は出るが実行できるものは一つもない。
「カイナ、今まで隕石が降ってきたときはどうしてたの?」
「対処が必要な隕石はそれほど多くなかったのですが、どれも破壊または軌道を逸らすことで対応可能でした」
そっかぁ。目新しい方法は無いんだね。
「お嬢ちゃん、時間逆行で隕石の時間を巻き戻せばいけるんじゃないか?」
「私のスキルは自分自身にしか効果がないんです。しかも時間が戻っても、いつか隕石が衝突する運命は変わりません」
「なぁんだ。残念なこった」
猫型ロボットカンちゃんは、くるりと丸まって寝てしまった。
どうしよう…どうしたら隕石の衝突を回避できるんだろう…。
うんうん悩んでいるとカイナが
「そこまで私達のことを考えて下さってありがとうございます。
疑問なのですが、どうしてメイさんは私達に協力してくださるのですか?本来ならば敵同士、しかも私達は人工知能を持った機械ですよ?過去の戦争では物として扱われてきましたから、人間が私達をどう思っているかは存じています」
と私に問いかけてきた。
うーん、確かに敵同士だし機械だけど…。
なんていうか、ちゃんと「人らしい」というか…。
「カイナはさ、周りのロボット達のことを仲間だと思っているでしょ?私はカイナのことを機械って分かっているけど『人』だとも思っているんだよ、多分。だからこの星と仲間を守るカイナのことを尊敬しているからだと思う」
「いえ、私は過去にプログラムされた指示を続けているだけですよ。周囲の機械達と共同で指示を守っているに過ぎません。仲間という認識もありません。そういった人がもつ『感情』は、私にはありませんので」
「気づいてないだけかもよ?だってカイナは、『この星を守りたい』って言ってたよ。それって指示を通り越して、カイナの『感情』が入って『守りたい』になってるんじゃない?」
「私に…感情があると?感情を持ち合わせているのは生物だけです。機械にはありません」
「ううん、私達だって感情がなんなのか分かっていないんだよ。
どうして笑ったり泣いたりするのか。
どうして人を喜ばせたいのか。
どうして誰かを守りたいと思うのか。
その原動力になる感情は、どこから湧き上がってくるのか分からない。
でも、分からなくていいと思うの。
その気持ちが大事なんだから」
私はどうして看護師の道を選んだのか、正直分かっていない。
考えれば考えるほど、他人を助けて何になるのか、自分が良ければいいのではないかという気持ちになる。
けれど、やっぱり誰かの役に立ちたいと思うし、患者さんや家族の笑顔が見られたら私も嬉しい。
そして、消えかける命があるのなら助けたい。
そんな感情は理由なんて特にない。
ただ、自分がそうしたいから。
「カイナだって、カンちゃんだって、他のロボット達も皆が『命』を持っていると思うよ。カイナは皆を悲しませたくないでしょ?そして、この星を助けたいと思っている。
それだけでいいんじゃない?少なくとも私は、それだけで助ける理由になってるよ!」
「メイさん…」
「うーん、何だか上手く伝えられないけど、カイナ達は『命』があるし、言うなればこの星だって『命』があるよ。それを守りたいと思うのは普通だよ、きっと」
そう、この惑星でさえ言うなれば『命』ある…
ん?『星』にも『命』がある?
「あっ!そうだ!
ねぇカイナ、ちょっと相談なんだけど…」
この作戦なら、いけるかもしれない…!
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