私の思い
第二戦の本番開始です。
まだ会って数時間しか経っていないロボット、しかもアナザーレイドの対戦相手なのに、私の心はカイナに寄っていた。
一方で違う思いもある。
単にこれはカイナの作戦かもしれない、何か裏があるのかもしれない、と。
でも自分がカイナの立場だったら?
もし、明日にでも隕石が地球に落ちてきて、それを防ぐ手立てがない。
そんな中、もしかしたら助けてくれるかもしれない人物が現れたとしたら。
例え、アナザーレイドの対戦相手であったとしても。
私も、世界の命運よりもまず、自分の星を守ろうとするだろう。
きっとカイナと同じ思考になる。
私はしばらく無言で考え込んでいた。
「メイさん、やはり無理でしょうか…」
「ううん、正直すごく迷っているの。
私はカイナの話を聞いて、悲しい気持ちになったわ。だから、出来ることなら手助けしてあげたい。
でもレイドバトルの対戦相手である以上、どちらかの世界は相手の管理下になっちゃうよね?
そうしたら、私の世界の創造主はこの世界をどうするかわからない。
つまりこの星がどうなるかもわからないんだよ?」
そう、前回のレイドバトルで第32世界は、メディテイカム様の管理下になった。
ただし、その後の32世界がどうなったかは教えてもらっていない。
私は出来れば誰の命を落とすこともなく、各々の世界がそれまでと変わらないようにしてほしかった。
だから、
「もしこの星が助かっても、その後のバトル次第じゃ、この世界そのものが変わっちゃうかもしれないんだよ?」
素直な気持ちをカイナぶつけた。
カイナの表情からは何も読みとれない。
すると、
「まぁ正直なとこ、創造主が変わってくれた方がいいんじゃねぇのか?」
カイナの代わりに猫型ロボットのカンちゃんが発言した。
「それを口に出しゃ、戦意喪失になって負けが決まっちまう。そうすりゃ、カイナさんのスキルも無くなるし、お嬢ちゃんも自分の世界に帰っちまうだろ?
それじゃ困るんだよな。うちの創造主様はこの星、いや、この世界にもう興味がないらしいからな」
「創造主なのに、自分の世界に興味がない?」
「そうさ、カイナさんがアナザーレイドの代表に選ばれた時、自分で言ってたらしいからな。『別に勝っても負けてもどっちでもいい。強制参加らしいからやるけど、もう別にこの世界に興味ないから』ってな。
だからよ、勝ってもこの星は終わり。負ければどうなるか分からないってことだ。
だったら、どうなるか分からない方に賭けた方がマシだろ?」
そうなんだ。そんな創造主もいるんだ。
創造主でもそれぞれ個性があるんだな。自分で創った世界に興味がないなんて、かなり変わってるなぁ。
確かにそれなら、賭けに出た方がいいってことかな。
「カンちゃんが言うことは本当なの?」
カイナはこちらを見たまま何も言わない。
「何も言わないってことはそういうことね」
うちの創造主も何考えてるか分からないけど、カイナ達がいる世界については要望を出そう。
「シロマちゃん、審判員を呼んでくれる?」
「もうですか?」
「私の心が決まったのよ。お願い」
「かしこまりました」
数秒後、
「お待たせしましたー!今回も審判を務めさせて頂きます全知技協会審判員のモノです。今回『第12世界代表メイ様』と『第16世界代表086-カイナ1156号様』のレイドバトルにおける審判を務めさせて頂きますので!」
どうやら今回も青い円錐形の審判員らしい。
「審判員さん、バトルを始める前に確認なんだけど、戦う場所はこの『ケンオウセイ』なんでしょ?
でも今このケンオウセイは消滅の可能性があり、公平にバトルが出来なくなるか、私も相手も死んでしまうかもしれないの。
だから、一時休戦し、ケンオウセイを消滅の危機から脱しさせた後にバトルの開始を要請するわ」
そう言ってカイナを見る。私はニッと口角を上げる。
「私も一時休戦を要請します。ケンオウセイの危機を回避後、バトルの開始をお願いします」
カイナは私の意図を汲んでくれたようだ。
「んー、そうですねー。確かにバトル会場が消滅してはバトルが出来ませんからねー。
わかりました!申請を受理し、『春田メイ様』と『086-カイナ1156号様』のレイドバトルを一時休戦としバトル会場の保持に務めて下さい!
ただし、バトル会場の危機が回避されたら直ぐにバトルを開始しますよ!」
よし!上手くいった!
これで堂々とカイナに強力できるぞ!
「カイナ、後でバトルするために、この星を守りましょう」
「ええ、後でバトルするために!よろしくお願いします」
カイナの声は、嬉しそうだった。
いつも読んで頂きありがとうございます。
世間はコロナの影響が大きいですが、皆さん頑張りましょう。
私も前線で戦ってきますので!




