カイナの思い
頭の中で疑問符が沢山浮かぶ。
この星が終わりを迎えるのは私にとって関係ない。ましてや、私はアナザーレイドにおける対戦相手のはずだ。
その私に助けを求めるカイナの意図が分からなかった。
「どういうことですか?説明して下さい」
「そうですね。何の状況も説明せずに失礼致しました。こちらを」
そう言ってカイナは私達が座る円卓を見るよう促した。
円卓の天板の色が変わり、星の映像が映し出された。
「これが今私達が住む星『ケンオウセイ』です。赤い部分は砂漠化した土地、黒い丸で示した場所は私達のような機械がいる場所です。緑色の点は植物が存在していることを表しています」
そう説明を受けて星の映像を見ると、ほとんどが赤色だ。その中に数えるくらいの黒丸がある。更に植物がある場所は、黒丸の中のほんの僅かな部分しか無い。
「ご覧頂いたように星のほぼ100%が砂漠化しています。私達の拠点は星全体で11箇所しかありません。守ってきた植物達も、拠点が機能を止めると同時に消滅してきました」
表情は変わらないが、声色から悲しみが伝わってくる。
「私達を造った種族は遥か昔に滅びました。私達は『カイナ』この星の言葉で『希望』という意味を与えられ造られました。
初めの十数年は、この星の発展のため様々な研究や開発に使われていましたが、種族同士の争いが始まると、全ての『カイナ』は各々の国の兵器として利用されました。
結果として、私達を造った種は滅び、他の生物も生きられない環境となりました。
そんな環境下でも、酸素や食事を必要としない『カイナ』達だけは生き残ってきたのです」
「そうだったんだ…」
地球でも、近い将来あり得そうな話であった。なんだか私も悲しい気持ちになる。
「長い年月の中で、朽ちていく仲間もいました。それでも私達はここにいます。
『どんな生物も、その生命の連鎖を絶やすことなく、生存していける環境をつくれ』
これが『カイナ』の皆に与えられた根源の指令です。なんとしてでもこの指令を達成しなければならないのです」
「…もう生物が残っていないのに?」
「絶滅した種のDNAは保存しています。植物が育てばいつかそのDNAは復元できるのです。
しかし、先に星が終わりを迎えてしまうのです」
「どうして?植物ならこの辺りにあるじゃない。どの花も木も、いきいきしてる様に見えるけど」
「何十年も前に飛び立った観測用宇宙航行船から信号がありました。ケンオウセイに巨大な隕石が飛来する、と。
私達には隕石を迎え撃つための資源がもう無いのです。それに…」
カイナの言葉が途切れる。
しばしの沈黙の後、
「それに、仮に資源があったとして、何度試算しても巨大隕石を食い止める手段がないのです。
あらゆる方法を持ってしても、隕石は小さくはなれど飛来自体を防ぐことはできません。
ケンオウセイは終わりを迎える運命にあるのです」
どれだけ長い年月、カイナ達がこの星を守ってきたのだろうか。きっと隕石が降ってきたこともあったはずだ。
それを食い止めてきた高性能人工知能は、「できない」と判断したのだ。
本当に手立てがないのだろう。
「貴方のような、人間なんかよりずっと知能が高いはずのロボットができないのに、私なんかがどう役に立つの?」
「わかりません…。ですが、私達は過去の情報を基に最適解を割り出して動いています。
つまり経験したことのない事態には対応する力が弱いのです。
今回の隕石は、私達が持ち合わせている過去の情報を遥かに超えています。
メイさん、お願いする立場にないとは分かっています。
ですが、なんとかこの危機を回避して星を守りたいのです。
お願いです、どうか力を貸してください」
カイナは深く頭を下げた。
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