敵陣にて
あっという間に警察風ロボットに囲まれてしまった。彼らは今にも私を捕らえようとでもしてるのか、じっと動かない。
しかし、これはカンちゃんに騙されたのだろうか。
「カンちゃん、私のこと騙したの?」
警察風ロボットの向こうにいる猫型ロボットに問う。
「なに言ってんの。ちょっと待っててみ?契約は成立してるんよ。それに捕まえるつもりなら、もうとっくの昔に捕まえとるわ」
まぁ、確かにそうだ。
実際、警察風ロボットもじっとしているだけで、とりあえず何もしてはこない。
数分後、
「随分と騒がせているわね、カンシチロウ」
よく通る綺麗な声がした。
警察風ロボットが私を囲むのをやめて、その人物に向かって一列に整列した。
「初めまして、春田メイさん。私が今回のアナザーレイドの相手よ」
現れたのは「086-カイナ1156号」、今回のレイドバトルの相手であった。
私は即座に身体強化を発動すると同時に退路を考えるため視線をカイナから外した。
「安心して。今はまだ戦わないわ。襲うつもりもないから。さぁ皆、持ち場へ戻って」
ん?今は戦うつもりがない?どういう事だろうか。
「メイさん、きっと混乱されているでしょう。対戦相手となった以上、戦う意志を失えば自分達の世界は相手に奪われる。けど、私には今は戦えない理由があるの」
そういってカイナは手招きをして歩きだした。ついて来いということだろうか。
「なんでカンちゃんも付いてくるの?」
「なんでって、そりゃああっしは諜報部員でもあるんで、カイナさんの部下になるんですわ」
もともと敵側だったのか……。結果としてなんともなかったけど、危機感薄いな私。
「もともと敵側だったってことね」
「敵も味方も関係なく、取引をする。それがあっし、カンシチロウの信条さ」
私を見て首を傾けるカンちゃん。
どこまで信じていいのやら…
ーーー
カイナについて歩いていくと、徐々に廃墟の様相が変わってきた。
先程までいた場所よりも、高層の建物が多くなり、一つ一つの規模も大きい。
民家のような廃墟がほとんどないことから、ここがかつて都市の中心であったことが考えられた。
「こちらへ」
カイナがそう言って手で示した先はマンホールだった。
「ここに入れ、と」
「はい、お話したいことがありますが、外では敵が多く、また酸素もありません。シェルター内であれば、セキュリティシステムもありますし、人間が口にできる食料も少しはありますので」
なんだろうか。下で待ち伏せでもしてる?
いや、それなら最初にしてるだろう。
カイナの思惑が分からない。
「わかった。とりあえず下に行けばいいのね」
そう言ってマンホールな前に立つと、自動ドアのように蓋がスライドしてポッカリと穴が現れた。
覗き込むけど何も見えない。
「暗くてよく見えないんだけど、どうやって降り…」
「一方通行だから滑っていくんだよ!ほーら!」
カンちゃんの声とともにドン!と背中を押された。
「うきゃあああぁぁあ〜!!」
なす術無く穴に吸い込まれる。
「すぐ追っていくからよぉー!ょぉー!ぉー」
私を突き落とした犯人が、大声でそういったが、すぐに聞こえなくなった。
あの国民的猫型ロボットが出てくる物語って偉大ですよね




