案内役
猫型ロボットといえば、日本で最も有名なロボットを思い浮かべるが、私の足を触ったのは、ごく普通の猫だった。
ただ、メカメカしい。
足にすりすりしてくるメカ猫は、灰色の体に無機質な目、そして生物独特の温かみはない。
すりすりしてくるメカ猫をどうしていいか分からず、突っ立っていると、
「ふぅ…つい癖で。ありがとうございやした」
「猫がしゃべった!」
「そりゃあ会話が出来ないと困りますんで。あ、すりすりしてる時に身体情報を読み取らせてもらいやした」
…しまった…もう敵陣に居るんだった。
危機感の薄い自分に憤りを感じながら、とりあえず身体強化は発動した。
「あっしの名前はカンシチロウ。この辺りの案内役をしておりやす。して、お嬢さんは何者だい?生身の生物なら1分と経たずしてあの世逝きのはずだがねぇ」
「えっと…」
正直に答えていいものなのか。
少し悩んだ末に、
「窒素でエネルギーが産生されるよう、身体が適応したんです」
苦し紛れの返答だった。
「窒素で、ねぇ。
まぁいいや。お嬢さん、どこかに行きたいのかい?こういっちゃ自慢になるが、この辺りの地理は得意でね、よけりゃ案内してやるよ?」
「本当ですか!?是非お願いします!シュウ国まで!」
「シュウ国ね。あいわかった。じゃあお代のほうは…」
「え、お代取るんですか?」
「ほ?善意でやってるとでも?」
そりゃそうか…どこの世界もサービスに対価を払うのは当たり前だよなぁ。
「お代は体でいいぞ」
「え!?か、体!?」
そんな…私まだ…
恋人はいたことあったけど、デートしたくらいで、別れちゃったし…
それに相手が猫、しかもロボットって、もうそれある意味すごい上級者向けの…
「何考えてんだ。ほら、ここを撫でろ」
メカ猫は器用に前足で顎の下を指した。
「え?ここを?撫でる??」
「なんだい、最近の人間は猫の扱いも知らんのかい。ここをこう…すりすりするんだよ!」
言われた通りメカ猫の顎下をすりすりする。
すりすり…
すりすりすりすり…
「や、なかなか上手いじゃないか」
「ただの猫じゃん!」
メカといえど、習性は猫そのものだった。
ついでに耳の裏も掻くことになった。
「ふぅ…満足したぁ。じゃ、これで対価はオッケーな。シュウ国へいくぞ」
これでいいんだ…
そして変な想像した自分が恥ずかしい。。
「お嬢ちゃん、名前は?俺のことは気軽にカンちゃんとでも呼んでくれやいいよ」
「私は…メイ。よろしくね、か、カンちゃん」
「おう」
こうして変な猫型ロボットに案内役を頼むこととなった。
ーーー
自ら案内役と言うだけあって、カンちゃんの行動は素早かった。
まず、アンテナ(尻尾)で方向の確認。
次に何やらぶつぶつ呟いていたが、距離と時間、天候予想をしていたらしい。
それらが完了すると、カンちゃんはピョンと私のリュックに飛び乗った。
目的の方向へ目から緑色のレーザーを出すと、
「にゃあ」
と一声鳴いた。
すると、緑のレーザーに沿って砂嵐が止み、視界が開けた。
「俺には磁場をちょっと弄れる機能があってな、ここらへんの砂の粒は碍竜石が細かく砕けたもので…」
すごく興味ない話をしてくれた。
どうやら、カンちゃんの機能で砂嵐を止めたらしい。
猫でこれだけの機能なら、人型になったらどんな能力が使えるんだろ…
まぁ考えても分からないので、止んだ砂嵐を悠々と歩くカンちゃんの後ろを追った。
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これからも頑張りますので、よろしくお願いします。




