ケンオウセイへ
心躍る音楽と人々の笑顔。
そんな中、険しい顔をしてシンボルのお城を見ているのは私だけだろう…
ーーー
今回も正規の料金を支払って入園した。
前回は何もしなかったけど、今回はなんだか悔しくてお土産屋さんを見て回った。
悔しいというのは、高いお金を払っているのに、何もせずに転移門を通過するという点で、だ。
私だって、せっかく来たんだから楽しみたいよ!
あーあ、できれば好きな人と来たいなぁ…
チラッとリュックにぶら下がっているシロマちゃんを見る。
(端から見たら、『お一人様』なんだろうな…)
悲しい気分にさせてくれる…
お土産屋さんでキャラクターのボールペンとノートを買った。せめてもの雰囲気づくりだ。
ここまで来た記録をノートに書く。
とりあえずこれでセーブ完了だ。
ーーー
今回も奇異の目で見られながら、お城の前でシロマちゃんを掲げる。
前回もそうだったけど、恥ずかしいから何とかならないかな…
恥ずかしさと闘っていると門が開いた。
リュックから簡易酸素ボンベを取り出す。
マスクを口に当てて、門をくぐった。
ーーー
【シュウ国】
門の先は凄まじい風と砂嵐の世界だった。
余りの凄まじさに目を瞑る。
一度思考加速で考えを廻らせる。
(今ある酸素は10本。多分もって30分だろう。その間になんとか活動できる方法を考えなきゃ!)
シロマちゃん情報では、この星にも僅かだが思素があるということ。
前回のアトジュニ王国では、より具体的なイメージを描くことで魔法の力は増強した。
魔法は現象となり、何かをつくることは出来なかった。
ならば…
ならば今回も同様の特徴があると信じて、イメージする。
(私の顔を全て覆うように、ヘルメットのように空気の層ができる。そこにはこの星の僅かな酸素が集まるよう、風が渦巻く。
私の呼吸によって出される二酸化炭素も上手く風にのって空気の交換がなされる。
砂や雨、石などが入らないよう、外側の層には強い風を、私の顔の周りには柔らかい心地よい風を…
このイメージを記憶保持し、常に魔法として発動!)
思考加速解除!
…
どうかな…
かなり具体的に考えてみたけど…
なんとなく顔の周りにフワッと風が吹いた気がした。
恐る恐る酸素マスクを外してみる。
…
よし、魔法が上手く発動してくれたみたい!
私の顔から20cmくらいまでは砂は入って来ず、ちゃんと呼吸もできる。
記憶保持で、魔法は半永久的に発動されるはずだから…
とりあえずこれで第一関門突破だぁ〜!
「シロマちゃん上手くいったねーってシロマちゃん!?」
嬉しくてシロマちゃんを見ると、シロマちゃんは白くなく砂が積もっている。
「それは良かったです、メイ様」
ピコピコと尻尾を振る砂、いやシロマちゃん。
「…シロマちゃん、砂がすごい積もってるけど大丈夫なの?」
「はい、これくらいでは何ともございません。私達を破壊するのであれば、相当なエネルギーを必要としますので」
シロマちゃんって壊れないんだ…
ともあれ、これでケンオウセイで活動ができるぞ!
ともあれ、街を見つけなきゃ。
しかし前も後ろも黒黄色の砂嵐で何も見えない。
むやみに歩き回るのも危ないしなぁ。
うーん、どうしたものかと考えていると、
足元を誰かが触った。
ふと下を見ると
そこには猫型ロボットがいた。
いつも読んでくださりありがとうございます。
初めてブックマークをつけて頂いて、本当に感動しています…
少しでも皆様の暇つぶしになれば幸いですわ




