次の戦いへ
もう、次の戦いが始まってしまう。
相手の世界のことを考えると、どうしても気後れしてしまうが、自分には守るべきものがあることを言い聞かせる。
(私は、私の家族や大切な人を守るんだ。守らなくちゃいけない)
記憶保持で、死にかけた時の気持ちを蘇らせる。
家族のために、自分のために死にたくなかったこと。
この世界を、日常を守りたかったこと。
そんな記憶と感情が、心にじんわり広がる。
うん、まだ頑張れる。頑張るしかない!
ーーー
次の日の夕方、シロマちゃんが対戦相手の情報を話してくれた。
「メイ様、まずこちらをご覧ください」
出た、あの宙に浮かぶ画面!
【春田メイ様の対戦相手は、第16世界『ケンオウセイ』という星にある「シュウ国」に住う「086-カイナ1156号」というモノです】
あの機械のような声で伝えてくる。
画面には相手の顔のようなものが写し出された。画面下にはテロップのように[086-カイナ1156号]と表示されている。
[対戦日時は現時点から150時間後、場所は「ケンオウセイ」の「シュウ国」となります。審判はレイドバトル公平委員会に属する全知技協会員が務めます]
対戦相手の内容が違うだけで、他は全く同じの喋り方だった。
伝えるだけ伝えて、シュンと画面が消える。
「シロマちゃん、対戦相手なんだけど…人…じゃないよね?」
「はい、今回の対戦相手は人工知能を搭載した自立型小型戦闘機です」
「…そんなこともあるの…」
「ええ、高等知能を持つのは人間だけとは限りませんので。第16世界の創造主「ダイラン」様がお選びになりました」
相手、機械かぁ。自立ロボットなんて見たことないから、全然検討つかないな。
「シロマちゃん、その国の特徴を教えてくれる?」
「はい、まずケンオウセイには酸素がほぼありません。故に生物はおろか、植物もありません」
「えぇぇええ!!?」
「以前はあったようですが、人間に似た者たちが戦争と領土争いを続けた結果だと聞いています」
どこかの近未来の物語でありそうな内容だ。
「人工知能を持つ機械は、それらに代わり戦争後の世界を平定しました。まぁ人間に似た者たちが絶滅したので、結果そうなったのでしょう」
「人類は絶滅しました、か…」
「人工知能は遥か昔に人間以上の知恵と知識を得ました。それから、文明は発展しなくなりもう何百年と機械だけが生きる星となっています」
そう、だからさっき見た映像で、顔みたいと思ったのは、明らかに人ではない様相だったからだ。
ツルリとした光沢のある固そうな肌。頭の部分は丸型で、人の頭を模しているようだった。目のようなものは4つあり、鼻や耳、口は無かった。
戦う相手は、なにも人間だけじゃないんだな。
「ねぇ、シロマちゃん」
「どうされました?」
「酸素がないってことなんだけど、私がそっちの世界にいったら直ぐ死んじゃうんじゃない?」
「その辺りは身体操作で調整してください」
そういうことかい。
酸素がなくても動けるようにしろってことね。
わかったよ、やってみますよ。
「じゃあとりあえずそのスキル練習だぁ!」
だんだんと人間離れしていってる気がするなぁ…
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