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アナザーレイド  作者: 好日日和
VS 第32世界 アルツア編
43/62

閑話 その後の第32世界

「き、消えた…」



 今の今まで、目の前にいた女が急に姿を消した。




「どこに…行ったのだ」


 アルツアは痛みに耐えながらも、なんとか立つことが出来た。



 今まで戦っていた他の世界の女は変な奴だった。


 こちらの動きが分かっていたかのような流れ、女とは思えない身のこなしと力、そして何故か殺すつもりが最後までなく、挙句自分の身体を治してくれた。



「騎士達よ、あの女を探せ!騎士団を侮辱したものだ、なんとしても探せ」


 部下にそう命令した。が、心は違った。


 もう一度あって話をしてみたい。


 アルツアはそんな風に思っていた。



 ーーー

 アルツアは自室に戻り戦いの傷を癒すことにした。



 空はまだあちこちで光を放つ。


 地震も時折起こり、徐々に大地が姿を変えていく。



 不思議なのは、街や人に被害がないことだ。


 何かあれば、騎士団や街の兵士達から何らかの情報があるはずだが…



 自分の周りには大きな被害が出ないまま、3日が過ぎた。



 ーーー


「見つからない、か」


「はい、国中のあらゆる場所を探しましたが見当たりませんでした」


「やはり、元の世界に…」


「アルツア様?」


「なんでもない。もう捜索は打ち切りでいい。下がっていいぞ」




 やはりあのメイという名の女は元の世界に戻ったのだろうか。



 この世界を創ったという女神様は何と言われるだろうか。



「リトル」



「なんですか?もうバトルは終わりましたよ」



 寡黙な石は端的にそう言った。


「私達はどうなるのだ」


「さぁ?負けるのも初めてですから」



 このよく分からない石が分からないというのなら仕方ない。



「ですが」


 リトルが言葉を続けた。


「ここ最近の地震や空の光は管理権限が移譲された影響でしょう」




 まぁそうだろうな。


 アナザーレイドの説明の際にその話は聞いている。



 負けるつもりなど、全く無かった。


 スキルを与えられ、それを利用し強くなった。


 世界を背負っている気などなく、勝った先のことしか考えていなかった。





 しかし


 現実は無様なものだ。


 戦いの素人、しかも女に負け、怪我まで治された。


 空の光は止まず、大地は大きく形を変えた。



 慢心と信仰が足りなかったのだろうか。



 女神様からの御言葉はない。


 これからどうなるのだろうか…



 ーーー



『やぁアルツア君、レイドバトルお疲れ様だったね』


「誰だ貴様?だいたい、ここはどこだ?」



『君の夢の中だよ。

 私は第12世界の創造主「メディテイカム」だよ。君の世界を管理することになったものだ』



「この世界の管理者だと…。じゃあ女神様は…」


『あぁ前の管理者は落ち込んでいたよ。〈初戦敗退なんてつまんなーい〉って。管理する権利がなくなっただけで、基本的にはこの世界のどこかにいるはずだよ』



「そうか…女神様はご健在か」



 よかった。失望はされたようだが、僕が負けたからもう居なくなられたと思っていた。


『まぁ権利の移譲だけだから、存在に影響はないよ。このまま君たちは信仰を続けるといいよ』


「な、なぜ!?」


『何故考えていることが分かったかって?それはもう私に管理権限があるから、この世界の万象を把握することができるのさ』


「そ、そうなのか…」



 しかし…


「この世界をどうするおつもりだ?毎日空は光、大地は刻々と形を変えている。我々の世界を滅ぼすと…」



『そんなことはしないよ。ちょっと僕が利用しやすいように調整しているだけさ。不要な星を失くしたり、この星の大地を実験用に造り変えるくらいだよ』



「調整?実験…?」



『まぁとりあえずこの世界の生物を無闇に失くしたりしないから安心してくれ。君はレイドバトルに敗れはしたが、まだ若く育てれば影響力を持ちそうだ。


 そこで一つだけスキルを与える。


 ー『神語拝聴』ー


 これで僕と交信が、夢の中以外でも可能になる。

 君はこれから新しい世界を導くものとして働いてほしい』



「世界を導く…」


 急に鼓動が早くなる


『そう。僕がこの世界を造り変えるとしても、実際に動くのは生物だ。僕の指示を聞いて実行してもらうよ』



 この創造主を信仰するということか。


『信仰心はどちらでもいい。上手く人を動かすんだ。そのために信仰や思想、人心掌握は賢く使ってくれ』



「まだ全然理解が追いつかないが…。負けた者の宿命だ。その役目、承った」




 ーーー


 数年後、アルツアは壇上に立ち民衆に語りかける。

 神の言葉を聞き、第32世界の在り方を示すために。

 騎士としてではなく、宗教家として。


これでアルツア編は終了です。

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