戦いのあと
目の前が真っ白になって、次に目を開けたときは自分の部屋に帰ってきていた。
「シロマちゃん、第32世界はどうなった…?」
「申し訳ございません。それにはお答えできません」
「なんで!?」
「創造主メディテイカム様より第32世界についての情報提供を制限されております」
「そんな…」
巻き戻した時間も含めて一週間くらいしかいなかった世界だけど、そこに生きる人達を知ってしまった。
別に全ての人を助けたいとは思わない。
そんなこと出来るわけがないからだ。
それでも手段があるなら、
助けられる手立てがあるなら…
「メディテイカム様と話がしたい」
シロマちゃんに言う。
「メイ様、私も含め創造主メディテイカム様にこちらからコンタクトを取る事は出来ません…」
こっちからの話は聞かないってことね。
出来ることがなく、することも無くなった私はボブっとベッドに倒れ込んだ。
「私、人殺しに加担したのかなぁ」
ーーー
眠い。
異世界、戦い、魔法、あっちの世界の人達、
勝っても負けても、どちらかの世界が犠牲になる
私が負ければ…
でも私が勝ち続けたら?
メディテイカム様はどうするつもり?
『創造主』からみたら人間なんて玩具と一緒なのかな
グルグルと雑多な考えが頭を巡る。
考えたくない。
暗鬱な気持ちのまま寝入ってしまった。
ーーー
『メイ君、人が死ぬのは嫌かい?』
メディテイカム様の声だ。
また夢に来たのかな。
『そうだよ。で、人が死ぬのは嫌かい?』
『嫌に決まってるじゃないですか。死んだら何もない、周りは悲しむ。寿命なら仕方ないかもしれないけど、事故や病気や戦いは無くせるかもしれないじゃないですか。
好き好んで人の死を望むヤツがいたらおかしいですよ」
つい口が悪くなってしまった。
『そうかい。じゃあどうして人間同士で争うんだい?それで人は死ぬことがあるのに、分かっていてやってるんだろ?』
「戦争の理由なんて、宗教か政治的な思惑じゃないですか。一番の人間が利益を得るためにやってることで、巻き込まれている人のほうが多いですよ、多分」
『じゃあ、その一部の人間がいなくなれば良いのかい?政治や宗教、思想が同じなら争うことはないのかい?』
「それは…」
『結局、君は自分の手が届くところで死を見るのが嫌なんだろ?もう見えなくなった世界なんて関係ないじゃないか。君は他国の食料問題に貢献したことはあるかい?紛争は?いや、その辺である喧嘩もさ。
関係ないなら無関心なんだろう?』
…
何も言い返せない…。
「それでも目の前の人でも、手が届くなら助けたらいいじゃないですか!?
いえ、自己満足ですが私がそうしたんです」
結局、そういうことだ。
自分の周りの人が死ぬ、自分が死ぬのが嫌で、遠くの誰かが死んでも心は痛まない。
ただ、それを他人から指摘されれば複雑な気持ちになる。
どうしらいいの?
『まぁとりあえず僕がやる事は気にしないでおくれよ。君はただ戦ってくれればいい。負ければ僕の世界も、君と君の周りも終わりなんだから』
…
ーーー
起きたら気分は最悪だった。
それでも仕事には向かう。
どうやら、他の世界と自分の世界じゃ時間の流れが違うみたいだ。
何日も32世界に行っていたのに、自分の部屋に戻ってきたのは、転移門をくぐって一時間後になっていた。
ぼんやりと仕事をして、怒られてた。
ダメだ!こんなことでは!
気合を入れ直して仕事は終わらせた。
帰宅後、部屋に戻るとシロマちゃんがスマホから飛び出してきた。
「メイ様、間もなく次のレイドバトルが始まるようです」
「もう!?!?」
こんな気持ちでどうしたらいいんだよぅ。
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