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アナザーレイド  作者: 好日日和
VS 第32世界 アルツア編
40/62

勝敗

「はーい、そこまででーす。たった今、第32世界代表アルツア様の敗北宣言がなされました。それを持ちまして、今回のレイドバトルは第12世界代表春田メイ様の勝利となります」


 青い円錐体の石、レイドバトルの審判員がそう言った。



「では、敗者には罰則を。えい!」


 青三角形が淡く光り出す。


 アルツアを見ると、彼も青く光っている。


「いやだ!やめてくれ!…勘弁してくれ…」



 どうしたんだろう。


 しばらくすると青三角形が私に言った。


「第32世界の管理権限を剥奪、それに伴い第32世界代表者のスキルの無効化、収用をしました。管理権限は第12世界の創造主へ移行されます。収用したスキルから一つをお選びください。勝者に付与されます」



 そう言うと目の前に言葉が4つ浮かんだ。

 スキル名かな?



『術式付加』

『物体騎乗』

『剣技向上』

『思念強化』



 これがアルツアが持っていたスキルかぁ。

 いかにも騎士に必要そうなものばかりだ。


 今後に役立つスキルがいいけど、内容が分からないから選び難いな。



「審判員さん、スキルを選ぶのはすぐにしなきゃいけないですか?」



「えっと…少々お待ちください…あ、あった。えー、勝者は敗者の持つスキルから一つ選択し得ることができる。それは管理権限が完全に勝者側に移行される前までに行われなければならい、です」



 マニュアルでも読んでるのかな…


 まぁでも少し余裕があるってことね。



「じゃあまた選んだらお伝えしますね」


「畏まりました」




 ふと壁を見るとまだアルツアが大の字になっていた。



 部下の騎士達は上官の指示がないため、複雑な表情でこちらを見ている。



「重力解除。お疲れ様でしたアルツアさん。怪我は…ありそうですね。ちょっと動かないでください」


 アルツアの手を握り「他体再生」を発動する。



「所々傷がありますが、動かない腕や激しく痛むところはありますか?」


「貴様…なんのつもりだ…。辱めを受けるくらいならいっそ殺してくれ…」



 横の重力から解放され、四つん這いになっている彼は忌々しそうにそう言った。



「何言ってるんですか。もうレイドバトルは終わりです。大きな怪我があって動けないと困るでしょう?いいから早く痛むところや動かない部位を言ってください!私は甲冑のせいで見えないんですから」



「あ、あぁ…。

 一番は背中だ。凄く痛い。それと頭も同じくらい痛い。…うっ!気持ち悪い…」



 横重力で壁に叩きつけられたからか。

 さっきいた場所から壁まで10m以上はある。


 単純に10mの高さから落ちて地面に叩きつけられたと考えると。


「手足が動かし辛かったり、喋りにくさはありますか?」



「ちょっと手が動き辛いかな…」



 外傷性の頭蓋内出血系かな。


 急いで頭の中の血を止めるイメージをする。



 あとは至るところが骨折している感じがする。


 身体の骨を元通りになるように、骨格標本をイメージしてスキルを使い続ける。



「…ふぅ…」


 スキル使い過ぎると疲れるんだよね。


 でも大怪我している人を前にして、休むことはできない。



 我ながら損な性格だなぁ…



「貴様…いやメイよ。すまない…」


「なんですか、急に」



 突然しおらしい態度のアルツアが若干気持ち悪い。



「別に勝手にやってるだけなんで気にしないでください。私のせいで人が死ぬのは嫌ですから」


 殺すつもりはなくても、あとあと死んだともなれば相当後味が悪い。



 だからできる限りのことはする。



「私のスキルも万能ではないので、この後は必ず安静にしてください。何かあったらそこらへんの医者か、身体を治せる魔法が使える人に治してもらってください」



 アルツアの治療が終わり、凄く疲れた私はそのままゴロンと仰向けで寝転んだ。




『あー!疲れたー!戦うのって、大変だぁ」

いつも読んでくださりありがとうございます。

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