VS アルツア リトライ4
一応決着です。
カン!ギィン!と金属同士が当たる高い音が訓練場に響く。
アルツアの剣は速く、重い。
私は視力向上と身体機能を上げているため何とか耐えている状況だ。
「ハッ!自ら望んでおいて防戦一方とはどういうことだ?どうせスキル頼みのつもりであったのだろう?女子に私の剣を受けられる者はいないからなぁ!」
更にアルツアの剣速が増す。
戦いを生業にしているだけあって、予想もしない方向から剣撃が飛んでくる。
ヤバイ!と思ったときは思考加速で、捌き方を考え一時的に筋力を上げてから躱す。
直ぐに間合いを取る。
「ほう、回避だけは特化しているようだな。だがそれでは勝つことは不可能だ!術式付加!」
アルツアの剣が燃え上がる。
観客席から歓声が上がる。
「もう小娘も終わったな!」
「アルツア様の炎剣は数多の敵を葬り去ってきたからな!」
アルツアの表情からしても決着をつける気でいるようだ。
…ここだね。
「騎士団を愚弄したことを後悔するんだな。それに私が対戦あったことが不運だったと、あの世で嘆け!」
炎の剣を上段に構え、そのまま振り下ろそうとしたその瞬間、
『アルツアに思考減速を発動』
ーーー
『思考減速』
物事を考えたり判断する時間が遅くなる。
このスキルを使ったものは、相対的に周囲の動きが早く見える。
何もすることがなく、暇な時に便利な能力である
ーーー
アルツアの動きが緩慢になる。
身体機能をスピード重視になるよう調整する。
アルツアの剣の持ち手辺りを狙い、私は思い切り剣を振り上げた。
ガン!という音ともにアルツアの剣を弾き飛ばす。
…まだいける
アルツアはまだ思考減速状態だ。
「重力操作!アルツアのみの重力を変更。重力の向きは右へ。現体重の3倍の重力を」
今度は魔法。なるべく具体的な指示を声に出すことで威力が上がるらしい。
思考減速の時間は5秒程だったろうか。
アルツアは我に返ったようだが、何も言えずに壁に落ちていった。
「な、あのアルツア様が…」
「嘘だろ、こんな小娘が!?」
観客席からは戸惑いの声が上がる。
そんなアルツアは壁に落ちた衝撃で、まだまともに会話することが出来ないでいた。
「私が対戦相手で不運でしたね」
甲冑と自重、それに3倍の重力がかかっているのだ。動くことは出来ず、ただただ大の字で壁に張り付くアルツア。
その顔は苦痛で歪んでいる。
「甲冑を外して部下の前で醜態を晒しますか?それとも、崇高な騎士団の、それも副騎士官ともあろう人が、こんな小娘に!しかも剣で!負けたと知ったら、街の人たち、いや国王や騎士団長はどう思うでしょうね」
ニヤリと笑ってみせた。
「そ、それは…」
「貴方の敗北は観客席にいる部下全員が見ていましたよ。取り柄の剣で負けた挙句、壁に貼り付けられるなんて。
これを負けと言わず、なんというのでしょう」
観客席の騎士達はこそこそと
「アルツア様が負けるなんて…」
「しかも剣での戦いだろ?俺たちにもどうすることもできないぜ…」
などと喋っている。
「さて、このまま街の人を呼びましょうか。副騎士官の負け姿を見てもらいましょう!
あ、騎士団長に知らせてもらうのもいいですね。もしかしたら国王も…」
「や、やめてくれ…」
「え?聞こえないです」
「やめてくれ…。私の…負けだ」
看護師さんて気が強くて弁が立つ方が多いんですよね〜(あ、主観ですよ)
メイさんも仕事モードの時はきつめです。




