VS アルツア リトライ3
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アルツアと出会う1日前、旅商人を案内した騎士は宿舎へ戻る廊下で手紙らしきものが壁に立てかけられているのを発見した。
蜜で封もしておらず、簡易な封筒に文がはいっている。しかし、かなり品質の良い紙であることがわかり、興味本意で内容を確認した。
そこには…
「大変です!アルツア様!」
「なんだ、連絡兵も通さず部屋に入るとは無礼だぞ。それに私は今明日の…」
「これをご覧下さい!アルツア様に、アルツア様が、あの!」
「落ち着け。文がどうしたというのだ」
言いながらアルツアは案内役騎士が持ってきた文を読み、激昂した。
ーーー
出陣式当日、つまり今日はアルツア出会うはずだ。
昨日は入念に準備したし、スキルの確認も行った。
(もう手紙は読んだよね?あとはちゃんと引っかかってくれるかだけど)
そんなことを考えながら宿を出る。
通りでは、今日の式典を一目みるため多くの人が広場へ向かって行く。
私はその流れと反対に、騎士団訓練場を目指す。
ーーー
時間はお昼を過ぎたくらいだろうか。お金に換えてきた最後の携帯食料を食べる。
今は騎士団訓練場の真ん中にポツンと一人座っている。
訓練場は広い。多くの騎士が同時に訓練したり、団体行動を練習するためだろう。
大きい体育館という感じだ。
出入り口は二つ、私が座っている場所から左右斜め前方にある。
出入り口以外は訓練による跡を除き、全て壁になってる。3mくらいはあるだろうか。
壁の上は観覧席みたいな場所になっている。席といっても椅子等があるわけではなく、訓練場の外側へ向けて幅広い階段状になっている。
そう、アルツアの戦意を失くさせるためには観客が必要だ。
ーーー
それからまた時間が経ち、ちょっと小腹が空いたころガッシャンガッシャンと沢山の金属音が場内に響いてきた。
「貴様が他の世界の代表者か。随分と我々を愚弄してくれたな。今更冗談と言われても、もう遅いぞ!」
「あら、本当に他の騎士の方も連れてきたんですね。大人数で私を叩きのめすつもりだったんですか?やっぱり小心者なんですね」
怒っているアルツアを更に煽る。
「なに!?…ふん、こいつらはただの観客だ!お前たち、全員上に上がっていろ!」
「し、しかしアルツア様…」
「いいから上にいろ!!」
剣に手をかけて今にも襲う気満々の騎士達は、戸惑いながらも訓練場の観客席へ上がる。
「あ、私は別にいてもらってもいいんですよ。なんなら上階から魔法で攻撃でもします?」
「うるさい!こいつらは手を出さない。貴様と私で一騎打ちだ!いいな!お前たちも手を出すなよ!」
これで騎士達は本当に観客になってしまった。
「余程自分に自信があるようだが、何にでも上には上がいることを身をもって教えてやる」
そう言いながらアルツアは剣を抜く。徐々に間合いを詰めてくる。
「そうですか。それはご教授頂きたいですね。では」
私はスッと左手を差し出す。
「あん?」
「これは私の世界の流儀でして、戦うもの同士が正々堂々と全力を尽くしましょうという意味で握手をします。さあ」
ずいっと手を出すとアルツアも剣から左手だけを離して握手してくれた。
…
ぐっと握手した後、後ろに飛んで間合いを取る。
「すみませーん騎士団の方ー。私、剣を持ってくるの忘れちゃったので貸して下さいー」
「「「はぁ??」」」
「剣が無いと勝負にならないじゃないですかー」
はぁ?とか何言ってんだとかいう声がしたが、ガシャンと一本剣が落ちてきた。
「ありがとうございまーす!後でお返ししまーす」
そう言って私はアルツアに向き直り、剣を構えた。
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