VS アルツア 3
アルツアは目を見開いたまま、こちらを見ている。しかし体勢はその場で座り込む形だ。
私もまた目を見開き、ついでに口も少しポカンと開いてしまった。
思考加速解除後、掌から出た青い球(実際は炎が)は目で追えないスピードでアルツアの顔の横を通り抜けた。
壁に当たった青い球は
バァン!
と大きな音を立て、かなり広い範囲の壁を焦がして消えた。
「えーっと…み、見たか!私の魔法を!」
(素晴らしいです!メイ様!)
シロマちゃんだけは何故か感激してくれる。
「無詠唱でそんな上級魔法まで使えるとは…。貴様、さては貧弱な小娘ではなく魔導女の一味か!?」
なんか凄そうな人と誤解されたみたい。
「それよりももっと格上よ。これ以上痛い目を見たくなかったら管理権限を渡しなさい」
「は!それはお断りだ!このアルツア、聖騎士団の副騎士官である以上、自ら敗北を認めることはしない!いくぞ!!」
アルツアの持つ剣に炎が纏っている。
多分さっき叫んでたスキルの「術式付加」なんだろうか。
その剣を携えてアルツアが突進してくる。
結局、その剣で攻撃するなら普通の剣と大差なくない?
とはいえ、切られるのは嫌なので床を蹴って左へ大きくジャンプ。
壁に空いている大穴に着地する。
炎なら水で消えるかな。
ダムから水が放水されるのをイメージして、アルツアに向けて手をかざす。
すると、ダバダバダバと手からどんどん水が出てくる。
具体性が足りないのか、ダムの放水ほどではないが、そこそこの水量が手からどんどん溢れ、あっという間にアルツアのくるぶし辺りまでを沈めるくらいの深さになった。
「くそ!これでは『ファイヤーソード』の威力が落ちてしまう…」
ご丁寧に名前と効果半減の説明を頂いた。
「仕方ない。奥義、『物体騎乗』!」
スッとアルツアがしゃがみ込み体勢となる。
すると辺りの水がゾゾゾっとアルツアの方に集まっていき、大きな水の塊を成した。
アルツアはその頂上にいる。
「ハハハ!驚いたろう?岩とかでもよかったんだが、まぁ水でもいいだろう。潰してやる!」
アルツアの乗る水は横に大きく広がり、そこままこちらへ向かってくる。
…
ここらへんまでかな。
ある程度、アルツアのスキルや魔法は見させて貰った。
魔法は多分最初の炎球くらいしか使えないんだろう。
この世界の魔法は具体的なイメージ力が必要だ。ただ火を思い浮かべただけでは威力は小さい。
スキルも「騎士」という職業に関連したものだ。他にあったとしても多分スキル名を言ってくれるアルツアのことだ。簡単に推測できるだろう。
ということで。
水がまさに私に覆い被さらんとする瞬間に
時間逆行!!
咳だけ治りませんね。
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