VS アルツア
(『アルツア』っていう人だ)
『そうですね、今回のレイドバトルの対戦相手で間違いありません。対峙した以上、バトル開始となりますので、審判へ開始の連絡をしておきます』
シロマちゃんがそう言って、審判を呼び出した。
「はじめまして、メイさん。」
「よく私がわかりましたね」
「まぁ始まる前に一度顔を見ているからね。それに出陣式を見ていたでしょ?」
「あぁ、あの時なんとなく目が合った騎士はあなただったのですか」
「まさかこんな呑気な顔して目の前に現れると思ってなかったよ。その時に開始要請しても良かったんだけど、僕も式典中でね。職務を放ってまで君とバトルするつもりは無かったんだ」
そして今わざわざ面と向かって自己紹介をしている。
どれだけ自分に自信があるんだろう。
そう考えていると…
ドン!
と結構大きな音ともに目の前にある腕相撲用の樽に何か落ちてきた。
「わぁ〜!お待たせしてすみません!私、全知技協会審判員のモノです。今回『第12世界代表メイ様』と『第32世界代表アルツア様』のレイドバトルにおける審判を務めさせて頂きますので!」
円錐形の青い石みたいなのがそう早口で喋った。
どうやらシロマちゃんの仲間っぽい人(?)だ。審判はこの青い三角形さんがするのだろう。
「勝利条件はお分かりですね?ではこれからレイドバトル開始とします!」
高らかに青三角が叫ぶ。
開始の合図と同時にアルツアが剣を抜いて、鋒をこちらに向けている。
おぉ…真剣だ…初めて見た。
「ちょっと油断しすぎなんじゃないか?もうこれで僕が剣を横に振れば、それで終わりだぜ」
「ご親切にどうも。でもそんな剣ごときでは私に傷一つ付けられませんよ」
そう言って思い切り後方へ跳ぶ。平家の屋根に着地した。
「ここでは無関係の人が多すぎます。場所を移しませんか?」
「よかろう。騎士団が使う訓練場がある。そこであれば人もおらず、そう簡単に壊れることはない」
周りに人がいてはお互いに戦いにくいだろう。
アルツアが剣で差し向けた方向にある大きな建物へ向かう。
いつ襲われるか分からないので、私はなるべく距離を取るように屋根を跳び跳び移動する。
ふと振り返ると、アルツアは剣を収め悠然と歩いていた。
随分と舐められてるなぁ私。
私の案に乗ってくれたのも、いつでも勝てるっていう自信があるからなのかな。
騎士っていうくらいだし、きっと戦いにも慣れてるんだろう。
加えて何かしらのスキルや魔法を使ってくることが考えられる。
…どうしようか。
とりあえず相手の能力を知ることにしよう。
アルツアより一足先に着いた。
訓練場といっても周りを分厚い壁に囲まれただけの広い空間であった。
天井はなく、壁のあちらこちらに訓練の痕だろうか、一部が崩れていたり穴が空いていたりする。
ぼーっと見ていると視界の端から炎の塊が飛んで来た。
とっさに横へ回避するが、回避した先にも炎は飛んで来ていた。
「あっ!!」
勢いに負けて倒れ込む。右腕に直撃した炎は火傷を負わせて消える。
身体強化に痛覚遮断を発動しているにも関わらず痛みと熱さを感じた。
これは魔法?スキル?なんで痛みを感じたんだろう…
すぐに身体再生で傷を癒す。
目線だけ、炎が飛んで来た先を見ると、離れた場所でこちらに手をかざすような格好でアルツアが立っていた。
防御にも抜け目がないようにするためか、フルアーマーの甲冑を再度身につけている。
「本当に素人のようだね。一度も戦いの中に身を置いたことがないのかい?初戦がこんなに楽勝だなんて、幸運だな僕は、ハハ!」
言いながらこちらに歩いてくるアルツア。
「これでも魔法は得意じゃないんだ。まぁ副騎士官だからそこら辺の団員が不得意というのとは訳が違うけどね〜。本来はこっちが専門なんだ。ほら!」
そう言って目の前に放り投げられた1本の長剣。
「さっき君はこの剣じゃ傷が付かないって言ってたよね?そう言ったことを後悔させてあげるよ。ほら、公平に剣での戦いにしてあげるから、その剣を使っていいよ」
どうやら自分の得意な土俵に持ち込みたいようだ。
どうしよう…
どうしたら…
考えながら剣を拾う。
なんとか再生した右腕も使って両手で構える。
持っている剣が、手が震える。
ちなみに剣道すらやったことがないため、真剣はおろか竹刀すらまともに握ったことはない。
「なんだいその変な構えは?まぁそんな貧相な女じゃあ剣なんて扱えないよな。すぐに楽にしてやるよ!」
長剣を斜めに下げた状態でこちらへ向かってくるアルツア。
考えろ
考えろ…
途端、アルツアが走り出し剣を振りかぶる!
ヤバイ!ヤバイ!
アルツアが振り下ろした剣が目前に迫る。
明日から仕事復帰です。
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