接触
夜に国内へ侵入したものの、行く宛もないためなるべく人目につかないところで休みながら朝が来るのを待った。
開戦時間はとっくに過ぎているため、何かしらの方法で相手から攻撃を受ける可能性はある。
こちらも相手が認識出来た時点で戦闘開始だ。
ーーー
朝日が登る。しかも二つ。
「おぉ、さすが異世界…」
金色に輝く二つの太陽をみて思わずそう声を漏らした。
ぼんやりとそんな事を思いながら街の中心へ歩いていくと、近くから声がした。
「急がなきゃ!」
「ほら、あなた早く行くわよ!」
「服装は大丈夫か?」
なにやら慌しい内容の会話が聞こえる。
どこかへいそいそと向かう男女に声をかけた。
「あの〜、私昨日領主様の命で王国に初めて来たのですが、何かあるのですか?」
「ん?おお、どこの領か知らんがお勤めご苦労さん」
「これから、第二皇太子様の出陣式があるの。国民はこれからお国の為に戦いに出られる皇族の方々の出陣式に参加するのよ」
「出陣式なんてそう見られるものじゃないからな。聖騎士団の方も式に出られるから、せっかく王国に来たんだ、見ていくといい」
「そうそう、カッコいいわよ〜!」
ウチの両親くらいの歳だろうか。
壮年の夫婦が、出陣式について語ってくれた。
確かに日本でも自衛隊の式典なんてそう見られるものじゃないし、騎士団っていうのも気になる。
やっぱり、ガチガチの甲冑とか着てるのかな。ちょっと楽しみだ。
「ありがとうございます!私も時間があるので見に行こうと思います」
こうして、他の人の流れに乗って街の中心へ向かう。
ーーー
お城の前の大きな広場には大勢の人と、人が集まる事に便乗した屋台が出ており、半ばお祭り騒ぎのようになっている。
広場の中心からお城側に向かっては、誰も人はおらず、どうやらこの空いたスペースに第二皇太子様というのが来るようだ。
屋台から流れてくる香ばしい香りや甘い匂いにお腹が減った私は、この国のお金を持っていないため匂いだけを頂きながら携帯食料を口にする。
(この国のお金、どっかで手に入らないかなぁ)
結局、一時間くらいぼーっとする時間になってしまった。
が、そのおかげで式典が見れる位置はかなり前の方となった。
『ファンファファファーン!!』
突如大きなトランペットの様な音が響く。
同時に旗を持った甲冑姿の騎士を先頭に、楽器隊、歩兵、騎馬隊が視界の左側から続々と現れる。
どうやら式典が始まったようだ。お祭りムードの人達も足を止めて騎士団を見る。
屋台の人も手を止めて見ている。
続々と騎士団が大広場に集まり、整列していく。
その一糸乱れぬ動きに、皆釘付けになり、拍手したり指笛を鳴らす者もいる。
『ドーン!ドーーン!』
二回大きな太鼓が鳴ると、整列しきった団員達の動きがピタと止まる。
囃し立てていた街の人々も静かになる。
豪華に飾り付けられた馬に跨る金髪の青年。白いマントに金の刺繍が入った服、絢爛なアクセサリー。
多分この人が第二皇太子なんだろうなぁ…
キラキラ度が周りと全然違うもん。
第二皇太子の周りを取り囲むように騎士団が配置されている。他の騎士団員とは甲冑の装飾がやや豪華にみえる人たちが四人いた。
皇族の最も近しい位置にいるため、きっと精鋭を集めて囲んでるんだろうな。
ふとその中の一人と目が合ったような気がした。第二皇太子の向かって右後ろ。
全身甲冑であるため、頭部はこちらから良く見えないが、なんとなく視線を感じた。
しかし第二皇太子一行は式典のため、大広場に整列する。もちろん目が合ったような気がした騎士団員もだ。
そのまま何となく気になり、式典全てが終わるまで、私はほぼ最前席で第二皇太子の出陣式を観覧することとなった。
咳のしすぎで腹筋が痛いです。
めっちゃ鍛えられてる気がします。




