アトジュニ王国
扁桃炎で倒れていました。
魔物認定と引き換えに手に入れた、こちらの世界の服に着替える。
「はぁ…」
思わず溜息をついてしまった。
まさか、最初に出会った人達に人外の物として扱われるなんて…
とりあえず村で聞いたアトジュニ王国へ向かうため、長閑な田舎道を歩いていた。
日本のように舗装はされておらず、人や場所が行き交うことによる自然の道だ。
夜になりお腹が空いてきたため、そのまま食べられる携帯食料を口にする。
ライターと周りに落ちていた枯れ木で火を起こし、その隣に一人用のテントを設置した。
休みの日に友人達とキャンプをしていた知識と技術がこんな形で活かすことになるとはね〜。
水は近くの川で汲んできたものを飲む。
念のため新スキル「成分鑑定」を発動させる。
ーーー
スキル「成分鑑定」
皮膚や粘膜に触れたものの成分を分析し鑑定する。
円グラフのように成分が表示されるようになっていて、具体的に何がどれだけ含まれているかが示される。
地球の成分で無いものについては「???」として表示される。
ーーー
水は手に触れただけでは、毒性があるか不明だったため、ほんの少しだけ舌にのせて飲み込まないようにしばらく待つ。
特に問題なかったため水はそのまま飲む。
寝るときは「体熱調整」にて寒さを緩和させる。
ーーー
スキル「体熱調整」
身体内の熱代謝に作用し、外因の寒熱に対応する。
ーーー
これで寒さ暑さに対応することができるようになったため、日本にいるときも愛用していた。
こちらの世界は夜、やや寒いため身体を温めて寝る。
ほとんどのスキルはオフにするが、聴力向上だけは発動しておく。
野犬や盗賊に襲われても困るしね。
こうして2日間歩いて、ようやくアトジュニ王国に辿り着いた。
「ようやく着いたっぽいね」
「そうですね、ここがアトジュニ王国とみて間違いないでしょう」
シロマちゃんが答えてくれる。
目の前には石造りの壁が広がる。
門は無駄のない造りをしており、重厚な木扉が外側に向けて開いている。
門前には長槍を携えた甲冑の門番が四人立っている。
「さすが王国だね。大きいなぁ」
「メイ様、どうされるのですか?」
どうされるのか、というのはどうやって中に入るのかということだろう。
村人が言っていた貴族や領主の許可証なんてもちろんもっていないし、肌の露出が少ない門番に記憶改変は使えない。
となると…
もうここは日本じゃないし、お金を払って入る夢の王国でもない。
夜が来るまで、私は城壁の外を散歩することにした。




