開戦
死の運命を回避してから、約1か月。なんの進展もない。
また殺されそうになるとかそんなこともなく、唯々毎日が過ぎていった。
「メイ〜ご飯できたわよー」
「はーい、今から行くね」
お母さんの夕飯を呼ぶ声に返答し、事故後、一週間毎に書いている日記を書き終えて机にしまった。
いつアナザーレイドや運命の神が関与してくるか分からないので、とりあえず人生のセーブポイントは作っておく。
今のところ何もないけどさ…
一階に降りると、揚げ物の香りがしてきた。
「今日は唐揚げ?」
「そうよ〜。ウチの人達に人気だからね!」
お母さんはそう笑顔で言う。
外の皮は薄いながらもカリッとしていて、噛むと直ぐに鶏肉の旨味が口に広がる。中は柔らかく噛むほどに肉汁が溢れてくる。
衣にも味に工夫がしてあり、醤油や大蒜以外にコンソメを混ぜており、お母さんが秘伝のレシピと言うだけあって、何個でも食べられる仕組みになっている。
二個三個と唐揚げに手を伸ばしている間に、弟とお父さんも食卓に座っていた。
「唐揚げだ〜」
笑顔の弟。
「お母さん、ビールもお願い」
お父さんは晩酌モードになった。
ウチの家族はお母さんの唐揚げが好き過ぎる。かく言う私もだけど…
ーーー
夕食後、自室でシロマちゃんを呼ぶ。
「ねぇシロマちゃん、何か進展あった?」
日課のように毎日訪ねていることだ。
いつもなら、
「本日はアナザーレイドについて、お伝えすることはございません」
と言われ、スキル練習に付き合ってもらっていた。
しかし
「はい、対戦相手が決定致しました」
「え!?」
前もって言われたいたことだが、あまりにも平穏な時の中で過ごしてしたため(もうアナザーレイドなんて無くなったんじゃ)くらいの感覚でいた。
「えっと…相手はどんな人?」
「対戦相手については、こちらをご覧下さい」
そう言ってシロマちゃんが尻尾をピョコピョコと振ると、目の前に透明な薄いガラスみたいなものが出現した。何や文字と動画が写し出されている。
(おぉ、近未来の話でよく見るヤツだ)
などと呑気なことを考えていると、画面から理解できる言葉が流れてきた。
[春田メイ様の対戦相手は、第32世界『ラベルテル』という星にある「アトジュニ王国」に住う「アルツア」というモノです]
そう画面が人の様な機械のような声で伝えてくる。
同時に画面には青年の顔面アップが写し出された。画面下にはテロップのように[アルツア]と表示されている。
[対戦日時は現時点から24時間後、場所は「ラベルテル」の「アトジュニ王国」となります。審判はレイドバトル公平委員会に属する全知技協会員が務めます]
ん?場所は相手の星の、相手の国?
開始は24時間後!?
「ちょっと待っ」
[それでは皆様の健闘をお祈り致します]
私の言葉を遮ってそういうと、シュンと画面は消えてしまった。
「ということです、メイ様。初めての対戦ですね!頑張りましょう!」
「いやいやシロマちゃん!質問したいことがいっぱいあるよ!」
普通に「頑張ろう!」と言ってくるシロマちゃんに思わず声を張る。
こうして私のアナザーレイドは、訳が分からないままに始まった。
ようやく本編へ辿り着いたなという感じです。まだ始まってもいませんが…
皆様が読んでくださることが励みです。
今後ともよろしくお願い致します。




